最近のF1はつまらないのか

個人的には、今年、F1は凄く楽しいです。

というのも、オンライン上でF1について知ったり、語ったりすることがすごく増えたからです。

まず、数少ない全線現地取材をしているジャーナリストの米家さんが主催しているF1 LIFEというサイトの有料会員になりいろいろな現地からの情報をゲットできるようになったこと。さらには、米家さんがF1 LIFEユーザー向けにやっているFacebook上のオンラインサロンでお話しさせてもらう機会が出来たこと。

今年は開幕戦の木曜日朝に、F1の技術部門の責任者でF1ファンに取っては「審判団の大本締め」的な存在だったチャーリー・ホワイティングさんがエコノミー症候群で亡くなるという悲しい出来事がありました。前日のコース下見のときには元気にコースを歩いていたそうで、全F1関係者ならびにコアなF1ファンの間に衝撃が走りましたが、そのコース下見の時に米家さんが動画を撮っていて(去年の暮れ頃にOsmo Pocket買ったんだそうです)歩いているチャーリーさんが映っていました。こんな映像をただのファンがそれもその週末のうちに見ることが出来るなんて、凄いことですよね。駅の公衆電話に100円玉をツッコミながらダイヤルQ2の予選結果を必死にメモしていた高校生の私に、そんな未来が来るって教えてあげたい(笑)。

もうひとつは、port Fのミヤケさんにちょっとtwitterに絡んだことがきっかけでport FのDiscordコミュニティに誘っていただいたこと。

リアルタイムでレース観戦をするときは、チャットでわいのわいの言いながら見るようになってすごく楽しい。これも、それこそ技術的にはインターネットがなかった頃のNiftyserveのRTでも出来たことではあるんですが、今年になって初めて体験するんですよ。いやあ、周りにF1ファンがほとんどいなくなってしまった現在、こうやって顔も知らない(いや、1度オフ会もいったんですが、どの方もハンドルネームと顔は一致してません^^;)方達と、毎戦楽しく盛り上がれるのはすごく楽しいですね。

そんな楽しい2019年シーズンですが、まー、メルセデスとハミルトンが強すぎて、チャンピオン争いは事実上終わってます。もちろんボッタスはまだまだチャンスがあるんですけど、ちょっと逆転するイメージはないですね。そんなわけで、F1が退屈だとみんなぶーぶー文句をいっているわけです。特に今年は、8戦もやってまだ一度もメルセデスが負けてない。これはちょっと強すぎる。まあ、みんなが文句をいう気持ちも、わからなくもない。

わからなくもないんだけども、じゃあ、これが誰かのせいかというとそんなことはないわけです。むしろ、F1の歴史で言えばチーム間の実力が拮抗していることの方が珍しい。今やF1は車体性能のガチの性能勝負をしている数少ないカテゴリーで、他のカテゴリーはワンメイクかBOP(性能調整)があるのが当たり前です。抜きつ抜かれつのレースを楽しみたいのであればそうせざるを得ないというがもはやレース界の常識と言ってもいいでしょう。BOPをしない限り、マシンの性能差によって独走レースになってしまうことは避けられません。それをそのままにしてよいかというともちろんそうは思いませんし、今のF1には正すべき点がたくさんあることは論を俟たないでしょう。しかし、今のF1が過去に比べてめちゃめちゃ良くない状態かと言えば、決してそうは思いません。

しかし、感覚で語っても仕方ない。私が見てきた過去30年近いF1シーズンのうち、チーム間でチャンピオン争いがされたシーズンがいったいどれだけあったのか、書き出してみることにしました。

あれー、自分の感覚より圧勝のシーズンが2010年以降多いですね。そうかー、これだと最近のレースがつまらないと言われてしまうのもわからなくもないですか。ただし、ベッテルとハミルトンの時代が続いてますけど、その間ずっと余裕でチャンピオンを取っているかというと、そうでもなかったということがわかると思います。

そうかー。確かにここ10年は戦力差が固定化される傾向なんですね。しかし、2010年代の前半に最強を誇ったレッドブルも2009年の大きなレギュレーション改定前は優勝が狙えるチームではありませんでしたし、2014年のパワーユニット時代の直前のメルセデスがまだまだチャンピオンになれる状態ではありませんでした。2014年のパワーユニット時代の前半は、決定的な戦力差を生んでしまったパワーユニット自体を開発凍結するという間違った施策がメルセデスの独走を招いてしまいましたが、その影響はもうありません。今のメルセデスの強さの半分ぐらいはハミルトンの強さで、ロズベルグとの対決によりハミルトンが無敵の心の強さとチームとの信頼関係を手に入れてしまったことによるので、技術的なもんだいじゃない気もしますしねー。

というわけで、データに基づいて分析してみたところ、やっぱり最近のF1は(昔に比べて)つまらないという結果になったわけですが、これの解決は難しいです。レギュレーションの安定が接戦を生むというのも正しいんですが、20年以上続いていたマクラーレン・フェラーリ・ウィリアムズ・ルノーという4強時代を終わらせたのは2009年、2014年のレギュレーションの大改定だったことも間違いないわけですし、開発を自由に行う以上、安全性を維持して、かつ、開発対象に社会的意味を持たせるために、レギュレーションは変更し続けなきゃならないのはF1の宿命です。これからも難しい舵取りが必要になるわけですが、心のどこかではいかにメルセデスといえどもいずれは失敗するだろうとも思ってます(笑)。接戦の素晴らしいシーズンも、圧勝のシーズンも、ファンは自ら楽しみを見つけて、F1を見続けていくのだと思ってもいるのです。

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稀勢の里と照ノ富士について思うこと

九州場所、盛り上がりましたね。急成長の貴景勝と、なんとしても初優勝が欲しい高安の終盤の戦いは見物でした。上位力士が負けるとみんなぶーぶー文句を言うんですが、下の力士が頑張ったらそれはそれで盛り上がるんでいいじゃないかと思うんですけどね。

さて、いろいろ考えてしまうのが横綱稀勢の里と、元大関照ノ富士のこと。どちらも今年はボロボロで、稀勢の里は先場所はなんとか10勝して体調を取り戻したかと思いきや、今場所は初日からひとつも勝てないまま、5日目に休場。一方の照ノ富士は、ことしの初場所では幕内力士だったにもかかわらず、十両で負け越し、幕下で全敗。そのまま3場所休場して三段目まで落ちてます。

見た目には照ノ富士のほうがヒドいです。なんせ幕内優勝までした元大関が幕下で全敗するというのはとんでもない不名誉です。そうまでして現役を続けた力士は過去いません。ただ、照ノ富士は若いですし、治せば力士としての競技人生は続きます。横綱に昇進した稀勢の里は一度負け越せば引退しかありません。出直すと言うことができません。スポーツ選手が怪我や力の衰え、モチベーションの低下により一度は引退するものの撤回して復帰し、全盛期とまではいかないもののそれなりの活躍をしてファンを喜ばせるということは往々にしてあることですが、相撲はそれを許さない特殊な競技ですからね。

ただ、今の二人の酷い状況について、いろいろ批判されるのはしょうが無いとも感じるんですが、その際に是非とも思い出して欲しいのは、2017年の三月場所での優勝決定戦でのことなんです。

左胸から腕にかけて、誰が観てもまともに競技できるわけがないとわかる大きな痣を作っているにもかかわらず横綱としての初優勝のために強行出場した稀勢の里。古傷を痛め、それをかばいながら優勝戦線をリードし、千秋楽にボロボロの稀勢の里と2回戦って1つ勝てば優勝が決まる照ノ富士。私はこの日の本割と決定戦の2番に勝った稀勢の里、負けた照ノ富士は、どちらも相撲人生を賭けてしまったんじゃないか。そう感じました。

横綱は再起に時間のかかる怪我をしてしまってはいけません。過去には横綱旭富士が治癒に時間のかかる病のため9場所という短命で引退をしています。横綱には試合をしながら調子を整えていくことができません。出たらすべて勝つことが要求される。勝てないのならば、休むか引退です。その宿命を背負った稀勢の里はこの勝負をするべきではありませんでした。休場しても誰も批判しなかったでしょう。今から考えると確実にそうなんですが、横綱としての初優勝がどうしても欲しかった。もし、ここで相撲人生が終わってしまっても、それでも欲しい。そう思ってしまうことを誰が責められるでしょうか。甲子園で、ここで故障しては一生の野球人生を棒に振るかもしれないと思いながら投げてしまう高校球児が美しく、そして、それはプロでは許されないことでもある。しかし、プロでも「死んでもいい」と思ってしまうことがある。それを批判することができるでしょうか。

そして、一方の照ノ富士は怪我をしている、負けるはずのない相手に2番続けて負けました。それにより、ほとんど手に入っていた賜杯を失いました。その原因は、やはり照ノ富士の優しさにあるのだと思います。死んでも優勝が欲しいという稀勢の里の気迫を前に、照ノ富士は全力を出すことができなかった。そのことに対して批判もされたでしょうが、やはり自分自身が自分の強さを信じられなくなってしまったのではないでしょうか。もちろん怪我のこともあったんでしょうが、とにかく何かしらの精神的なショックを受けた。力士にとって、それは体の怪我と同じぐらいのダメージでしょう。あの2番の後、稀勢の里の将来も心配になりましたが、同じぐらいに照ノ富士も心配になりました。観ている側が「この後、照ノ富士の心は大丈夫だろうか」と考える。それぐらいにすさまじい取組だったのです。この後、照ノ富士の相撲からは気迫が失われ、ついには急性の糖尿病を発症して体が動かない状態になります。心の失調はそのまま体に影響するものです。照ノ富士もまた、相撲人生がかかった試合で、取り返しのつかない痛手を負ったのです。

稀勢の里、照ノ富士という魅力ある力士の力強い相撲が今現在観られないということは、相撲ファンとして残念なことです。しかし、同時に相撲ファンはあの稀勢の里が2回目の優勝を果たした場所で、二人の優れた力士の相撲人生がかかったすさまじい取組を観たんだということを忘れてはいけません。あの取組は本来はあってはならないものでした。二人の若者の幸せな競技人生のためには、存在してはいけなかった。しかし、それは行われ、我々は幸福なことにそれを目の当たりにし、そして彼らは不幸なことに今、もがき苦しんでいる。

そういうことを理解せずに2人の現状を批判することは、それは相撲ファンとして恥ずかしいことだと、私はそう思うのです。

いやー、どうしたらいいんだろう、2人とも。切ないなあ。そして、今回、優勝を取り逃した高安もショック受けてるでしょうね。来場所以降に影響しないといいけど。と、相撲ファンは早くも初場所に思いを馳せるのです。

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F1.2グランプリ 2018前半戦

今年のF1も前半戦が終わり、シャットダウン・ピリオドに入りました。ご苦労様。バカンスを楽しんでください。でも、たぶんホンダは休んでないんだろうなあ。大変だなあ。

さて、今年は本当に久しぶり(10年ぶりぐらいだよね)にトップチーム間のパフォーマンスの差が小さく、接近した戦いが続いています。皆さんも楽しんでらっしゃることでしょう。

ところが、トップ3チームとそれ以下のチームとの差がとても大きくなっています。まるでF1が2カテゴリーに分かれてしまっているかのよう。そして、このトップチームを除いた7チームの争いもものすごく僅差です。

今回は、この7チームがF1のセカンドカテゴリー、すなわちF1.2というクラスだったと仮定して、その戦いをまとめてみたいと思います。

では、F1.2のポイント争いを観てみましょう。レギュレーションは以下です

  • トップ3チームをレース結果から除いた順位をつけ、その結果に対して10-6-4-3-2-1方式のポイントを与える(これで大体総合順位10位あたりまでが入賞になります)
  • 決勝と同じように3チームを除いた予選結果に対して、1位に1点を与える

こういう結果になりました。本物のランキングの7位以下とは、ちょっと違う並びになるのが興味深い。

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チャンピオン争いはルノーの2人とハースのマグヌッセンの間で繰り広げられています。ヒュルケンベルグは12戦中4戦で優勝をあげる活躍でリード。ほんと、なんでこの人が表彰台未経験なんだろう・・・不思議だ。

一方、マグヌッセンは4回のポールポジションをゲットしながら2勝にとどまっています。サインツは未勝利ながら安定してポイントを稼いで3位。4位はさすがのアロンソ。開幕戦の優勝が光っていますが、しぶとくポイントを稼いでいます。その一方でバンドーンは10位で苦しんでます。バンドーンにも同情の余地がかなりあるんですが、それはそれとしてアロンソはやっぱりすごいですね。

この後は、オコン、ガスリー、ペレス、グロージャンと続き、ここまでが優勝してるドライバー。なんとガスリーは2勝してるんですが、それを含めて入賞が4回と安定感のない成績が心配。1年目のパッケージで2人とも新人ドライバーというところが成績が安定しない理由なんでしょうか。ここに「チーフデザイナー離脱」という要素が加わったトロロッソの今後は決して明るくありません。ただ、後半のレースは経験済みのコースが増えてくるのでそこはいいところかも?

大活躍のルクレールですが、順位的に言えばまだ9位。しかし、まだまだ伸びしろのありそうなザウバーのマシンは、後半戦が楽しみです。個人的にはもう一年ザウバーで、今度はナンバーワン待遇で勉強してみるのがいいんじゃないかと思います。2年目でフェラーリに行っても潰されちゃうんじゃないかと心配です。

というわけで、いかがだったでしょうか。7人のウィナーが出ている接戦です。こちらのカテゴリーも見所いっぱい。後半戦もお楽しみに!

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トヨタのル・マン優勝の意義

ついにトヨタがル・マンの優勝を果たしました。

それも2台出走して1Lap差の1-2での勝利。 3位のレベリオンには30分以上の差をつけていました。 ですから少々のトラブルなら問題ない状態だったものの、 ほぼ一度もガレージへ車を入れることなく走りきりました。 ペナルティはなんかいろいろとありましたけどね。

さて、今回はライバルがいなかったトヨタ。 あんまりモータースポーツに親しんでない方だと 「なんだ、勝って当たり前じゃないか」と言うかもしれません。 しかし、ル・マンをよく知る人なら、全然当たり前じゃないことは 身にしみてわかっているはず。

去年のル・マンの後、私はこんなことをつぶやきました。

それを踏まえて、今年のリベリオンがもし去年走っていたら・・・。 トラブルに泣いたポルシェやトヨタを押さえて優勝していたかもです。 そのぐらいの力はリベリオンにはあったのです。 (むしろ、新車で2戦目の状態でトヨタから10週程度の遅れでゴールさせた レベリオンはすごい。他のLMP1チームはぐだぐだなところも多かったですからね)

速度差のあるマシンが争うル・マンでは 常にクラッシュの危険はありますし、ちょっとしたトラブルでも ガレージに入れれば1時間ぐらいのロスは容易に起こりうる。 ノーミスで24時間走ることは、トヨタにとってもまったく簡単なことではありません。 もちろん、ライバルがいない状態ではギリギリの攻めたマシンは 不要です。安全マージンは大きめにしているでしょう。 そうだとしても、「勝って当たり前」のプレッシャーは大きかったはず。

特に、今回はモナコ+インディ+ル・マンのトリプルクラウンを目論む、 世界最高のドライバー、フェルナンド・アロンソが乗っています。 アロンソの夢をしょうもないマシントラブルで潰してしまったら・・・。 全世界のファンはF1で不遇を託っているアロンソの夢を応援したいと思っていますから、 それも大きなプレッシャーだったことでしょう。

しかし、それ以上に今年のル・マンには「トヨタに勝って欲しい」という 大きな空気があったようです。 勝って当たり前でいいじゃないか。今年はトヨタに獲らせてやろう。 そういう感じです。それがレギュレーションにも現れているし、 国際放送の中継からもそういうメッセージを感じました。

2016年の「No Power!!」を知っている。だから、トヨタが勝つにふさわしい マシンを作ることができて、勝つにふさわしいレースができることを知っている。 WECのシリーズチャンピオンも獲っている。勝てない理由はない。 フォルクスワーゲンを襲った燃費スキャンダルのことを思えば、 アウディやポルシェが撤退してしまったことはしょうがないのかもしれない。 ライバルがいないル・マンは価値がないとして、トヨタが撤退してしまっても 誰も攻めることはできない。 「ポルシェに勝った」「アウディに勝った」。そう言えないル・マンに 失望し、多額の予算が必要な活動をやめてしまっても、文句は言えない。

しかし、トヨタは残りました。たとえ、ライバルがいなくてもル・マンに勝ちたいと 表明することは、ル・マンというレースそれ自体に価値をおいているということです。ル・マンの伝統や権威を尊敬しているということです。そりゃ、ル・マンを愛する人たちはうれしいでしょうね。なので、今年ぐらいはトヨタに勝って欲しい。ル・マンウィナーの序列にトヨタを加えてあげたい。ま、来年以降のことは知らんけどな、と思っていても無理はないでしょう。

というわけで、みんながハラハラしながら見つめる中、勝って当然のレースをちゃんと勝った。そして、ポルシェがいなくなった後のル・マンをちゃんと支えて、最初のうちはまったく関わらせてもらえなかった将来のレギュレーションに関する議論にちゃんと加わり、世界有数の自動車メーカーであり、レースを愛する企業であるとちゃんと世界に認めてもらったというのは、日本にとって、ものすごく大きいことです。コンペティションに打ち勝ったという意味での価値は確かに落ちちゃったかもしれないけども、この1勝の持つ価値はもっと大きいものだということを、モータースポーツに詳しくない人にも、知ってもらいたいと思います。

・・・とはいえ、2000年代初頭のアウディみたいにライバル不在でずーっと連勝になっちゃうのも望んでることではないでしょうし、とはいえ、今の恐ろしく素晴らしいエネルギー効率を誇るハイブリッド技術を止めちゃってただの内燃機関のレースにしてしまうことはちょっと残念すぎるし、でもハイブリッドで戦いを挑んできそうなライバルもいないし・・・というわけでなかなか頭が痛いところではありますね。ハイパーカーという新しいレギュレーションの検討は進んでいるようですが、テクノロジーとレーシングの両面で興味深いレギュレーションができることを祈ってます。

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F1GP 2018#1 オーストラリアGP

さて、答え合わせの時間です。

開幕時点でのチーム間序列がはっきりしました。

  1. メルセデス
  2. フェラーリ
  3. レッドブル
  4. ハース
  5. ルノー
  6. マクラーレン
  7. フォースインディア
  8. ウィリアムズ
  9. トロロッソ
  10. ザウバー

このような結果になりました。

メルセデスとフェラーリの間には差があり、レッドブルまでの3強とそれ以下の差はまたかなりある感じです。ここまでは予想通り。で、3強のうちメルセデスと残り2チームの差はどうかというのが1つの注目点でしたが、「絶望的ではないが、明確に差がある」というのが答えでしょうか。フェラーリ、レッドブルのドライバーも超一流ですからいくつかは勝利を奪うでしょうが、基本的にはメルセデスの勝ちですね。あとは、ボッタスとハミルトンで星を分け合ってダントツになるのを避けて欲しいところですが・・・開幕戦を見る限りは、ハミルトン5回目のチャンピオン決定、おめでとう!・・・ですな。

ただし、メルセデスの優位性は確実に減っている感じです。というのも、PUの性能がそれほどずば抜けているわけではなさそうだから。フォースインディアとウィリアムズが下の方にいるのがそれを意味しています。というか、この差がつくということは、やっぱメルセデスの車って速いのねと。すごいなあ。

さて、このGP最大の驚きと言えば、ハースの大躍進。去年のフェラーリのパクリでしょ?っていうのは簡単ですが、じゃあ、パクればいいわけですよ。エンジンとギアボックスがフェラーリですから、マシンのコンセプトを似せてしまった方が得なのは当然。ハースは良い仕事をしました。しかしまあ、2台ともタイヤ交換に失敗してリタイアというのは・・・悲痛ですね。胸が痛い。長くF1を見てるけど、2台とも失敗したってレースは初めてかも知れないです。

次にルノー。エンストンのチームはダテじゃないですね。今年は2台できっちりポイントを取っていけるでしょう。ドライバーも3強を除けば最強の布陣だと思います。ハースの開発の手が止まってくれば、十分に逆転はあるとみた。ベストオブレストの筆頭は、依然としてルノーかな。

マクラーレンは6番目のチームというところ。前に何かないとポイントが取れないというポジションで、まあ、正直言ってこのポジションじゃ満足できないからホンダにスイッチしたわけだから、大きな回り道のあげくに戻ってきましたというところ。とはいえ、マシンコンセプトの変更がありつつもちゃんと速いマシンを作ってきたし、テストで出たクーリングの問題をきっちり解決しているのはさすがです。年間を通じた開発力には定評があるし、ルノーとベストオブレストをがんがん争って欲しいと思います。個人的にはオレンジに変わってマシンデザインは気に入っているので、グッズに期待してます(笑)。

で、まあ、バンドーンの順位がマクラーレンの本来の位置だと思うんですが、なんだかんだで5位をもぎ取って帰ってくるアロンソは凄い。こんないいドライバーがチャンピオン争いを出来ないのは可哀想だと思いますけど、でも、アロンソが中団を走っているからこそ面白いってのも本音で、注目していきたいです。

メルセデスカスタマーの2チームは目立ちませんでした。2チームのポテンシャルの差は、そのままドライバーの差って気もします。ドライバー入れ替えたら多分順位が逆になるよね、ここは。まあ、でも、しょうがない。ウィリアムズの2人の成長と、フォースインディアにマシン改良の費用が残っていることを祈ります。

ドライバーの差といえば、トロロッソも厳しいです。チームのドライバー2人ともがメルボルンが初めてってのはかなりのハンデのはず。やはりシーズン後半の2人が走ったことのあるコースに行くまでは厳しい戦いが続くはずです。ホンダは・・・まあ、気楽に走らせたり壊したりできるようになったんだから、ばんばん壊してばんばんアップデートすると良いと思います・・・とかいってる端からMGU-Hが1つ壊れてますが(笑)。

さて、ザウバー。ここはお金さえあれば必ず上がってくるはず。今年はしょうがないけど、いつまでもグズグズの状態をマルキオンネ会長が許すはずもないですから、いつまでもテールエンダーのままではないはずです。それはともかくとして、もっと赤く塗ろう!。フェラーリを黄色くしてでも、こっちをばーんと赤にしましょうよ<無理です。

というわけで、この序列がどうなっていくのか。どこが美味しいアイテムを見つけてこの順列を壊していくのか。長い一年、楽しみですね。

最後に、ベッテルの優勝およびアロンソの躍進の原因になったVSCですが、今回のようなアドバンテージを取れるのは本質的にルールの欠陥だと思います。隊列が安定するまではピットクローズにしないとダメだと思うよ。

それ以外の演出の変更などはばんばんやってもらってOK。やってだめなら戻せばいいんだし。リバティメディアの方向性は非常に評価してます。

あ、もうひとつ。今回、DAZNのF1ゾーンというフォーマットで観戦したんですが、メイン・オンオード・タイミング・スタッツの4分割画面での視聴はとてもよかった。今年はずっとこれで観ます。さらばフジテレビ。GPニュースは見るけどね!

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今年もF1が始まります!

地上波での放送がなくなり、フジテレビが日本GPのスポンサーを降り、日本では人気急落中のF1であります。

しかしながら、ちょっと状況は変わってきそうかも。というのも、DAZNの日本でのプレゼンスがぐっと高まってきたからです。

というのも、今年からDAZNで日本のプロ野球がほぼすべて観られるようになったからです。「ほぼ」なのは、巨人だけ例外だから。まあ、そこは置いときましょう。どーでもいいし。

これまでのDAZNは、F1にしろ海外サッカーにしろ「ちょっとマニアックなスポーツファン」が契約するものって感じでした。しかし、J1, J2全試合とプロ野球のほぼすべてが観られるようになったことで、ぐっと身近になった感じがします。Jリーグとプロ野球もそれぞれが一般人のものから、コアなファンのものになりつつあるんですが、コアなファンの量がF1とは全然違います。ケータイのデータ容量をいろいろ気にしなきゃいけなくなるんでお財布的な負担はそれなりにありますけども、特に通勤時間が長い人なんか帰りの電車の中で野球を観ながら帰れたら幸せって人、多いですよね、たぶん。そういう人は月2000円弱なんて喜んで払うんじゃないですか?野球は試合時間が長いですからね。電車の中でも、リビングのテレビでも、布団に潜り込んでからでも同じように試合が観られるというのは、かなりのUXです。良い時代だ。

で、いったん契約してしまえば、Jリーグや他のスポーツもちょっと観てみようかなって気になりますもんね。今後はこういうルートでF1を見る人も増えるんじゃないでしょうか。私もせっかくなんで今年は家の近くに関連施設があって馴染みあるFC東京を応援してみようかなと思ってます。でも、第3節まででまだ勝ち点1でちょっとしょんぼり。

さて、毎年この時期は、各チームの新車を眺めてあーでもないこーでもないと妄想するのが楽しい時期。1年でもっとも楽しい時期といっても過言ではありません。さて、各車を観て、あーでもこーでも言ってみましょうか。新車の画像は、古くからのおなじみ、Niftyserveのモータースポーツフォーラムの成れの果て、http://www.fmotor.net/ から、リンクをたどって観てください。いやしかし、2018年にこのデザインのサイトがまだ現役で使われているというのがすごい(笑)

このサイトの上から観ていきます。おそらくは発表順に並んでいるはず。ということで、まずはハースから。

すご~くオーソドックスです。逆に、今年のマシンの傾向を説明しやすくていいかも。

まずは、Halo。コックピットの上に乗ってる、下駄の鼻緒みたいなヤツのことです。今年から導入されました。コレ自体は指定パーツなので全チームで同じカタチです。

かっこいいかかっこ悪いかでいえばかっこ悪いんですが、コレたぶん、あっという間に見慣れます。夏頃には文句言っている人だれもいないと思います。これまでもいろいろマシン形状の変化はありました。ヘッドプロテクター、ナロータイヤ、溝つきタイヤ、フロントウイング中央の凹み、Xウィングにバイキングウィング、細くて高いリアウィング・・・などなど。でも、どれもこれもあっという間に見慣れました。来年にはついてない車を見ると不安になると思います。そんなものです。

もう2つのトレンドは、ロールフープ付近のインダクションポッドの大型化と、サイドポッドの後退かつ縮小です。去年からロールフープの大型化傾向が強くなってます。ハースもA型のロールフープの両脇に追加のインレットがありますし、インダクションポッドも後ろめに見えます。

インダクションポッドの大型化は、ちょっと考えると不思議です。これまではアソコからエンジンへの吸気を取ってました。そして、冷却用の吸気はサイドから取ってました。高い位置のインダクションポッドは正面から強い風を取り込めます。ラム圧というのですが、これが自然吸気エンジンに取っては大事です。しかし、今はターボエンジンなのでラム圧は不要のハズ。現に、スーパーフォーミュラのマシンではあの位置に吸気はありません。

このように、後ろは筒抜け。あれはマシンがひっくり返しになったときに、ドライバーの頭を守るためにあります。

あそこに大きなものがあれば、もちろん空気抵抗になるし、重心は高くなるし、リアウィングにきれいな風は当たらなくなるし、いいことはあんまりないはず。ところが、どのチームも大きくなっています。センタークーリングコンセプトなんて言葉も使われているようですが、おそらくあれは冷却用で、ラジエターやインタークラー以外の冷却用のしくみがあって、大量の風を必要としていると。で、それをサイドポットを大型化して取るよりも、インダクションポッドを大きくして取るほうがメリットが大きいってことなんでしょうな。よくわかりませんけど。

そして、インダクションポッドの後退は去年のフェラーリがやったやつです。シートの横の位置には衝撃吸収用の翼のような構造が必要で、通常はこれをサイドポンツーンの構造に収めるんですが、それを上手く工夫して実質的にサイドポッドの開始位置を後退させたのです。ちなみに、フォーミュラEの初年度の車はこれがむき出しでした。こんな感じです。空力的にはたぶんイイことはなにもない。フォーミュラEは空力適当なので(速度が遅いからね)これでもいいわけです。

さて、次。ウィリアムズ。

なんかniftyのリンクぶっこわれてますけど^^;;、気にせずに。Haloは白く塗られて、きれいですね。ここもインダクションポッドとサイドポンツーンの処理はトレンド通りなんですが、サイドポンツーン前になんだかながーい斜めの構造があります。これ、なんでしょう・・・でも、気になるのはそれぐらい。お金がないのであんまり攻めたマシンじゃないですね。

お次は、レッドブルです。

インダクションポッドでかい、サイドポンツーンちいさいはトレンドですが、それにしてもレッドブルは小さいです。そしてその前に翼のような構造が・・・フェラーリ風の構造は結局の所これで良いということなのか・・・それも微妙な3次曲面になっていて、末端にはウィングレットっぽいものもあったり・・・。どう働くんでしょうか。あの位置だと完全にリアタイヤへの当たる空気の整形か、渦を作ってどこかに導くのか・・・。面白いですねぇ。

次は、ルノーです

インダクションポッドは横長になりました。そして、この写真で見る限り、やはりリアウィングには悪影響がありそうなんですが・・・だいぶ隠れてます。ポッドの高さは基本的に決まっているはずなので、横長にしたというのは、高い位置から空気を取りたいってことなんですけど・・・どうなんでしょうか。このあたりはその前にHaloがついたことも影響しているかもしれません。この写真でみると、やっぱHaroもリアウィングには影響しそうです。その影響を軽減するためにサイドエアを重視する・・・??

サイドポンツーンまわりはすっきりしてますね。オーソドックスです。

次は、かなりの個性派、ザウバーです。

6分割されたインダクションポッドもかなりのなんじゃこりゃ感がありますし、サイドポッドも上下2段に分かれていて相当おかしな感じです。ザウバーは設備はしっかりしているんですがお金がなくて開発できないという状況が続いていたんですが、アルファロメオ・・・を売りたいフィアット(=フェラーリチーム)から財政支援を得て余裕がでたため、鬱憤を晴らすような頑張りです。穴開きのノーズ先端といい、かなり変わってていいですね。私は好きです。

ただ、インレットを分割するのってどういう意味があるんでしょうね?別に内部で分けておけばいいわけで、最初から分けておくことないと思うんですけど・・・まあ、面白いからいいか。

次は、今年も大本命のメルセデスです。

インダクションポッド、複雑ですねぇ。入り口で4分割です。ただ、この分割線はロールフープを兼ねているのでしょうから、奥までこの分割が続いているかはわかりません。今年、唯一の親指ノーズ不採用マシン。去年、マクラーレンがやり始めたウイングの吊り下げをバージボード風にしてノーズ下を整流する考え方が流行しているなか、ノーズ下の処理はかなり独特です。ひっくり返してみたい(笑)

サイドポンツーン前まわりもものすごく凝った処理が入ってますが、フェラーリ風ではないですね。しかし、メルセデスチームのマシンの空力が良かったのかどうなのかって、なにげによくわかりません。悪くはもちろんないんでしょうけど、エンジンばっかり語られてますからね・・・。どうなんでしょう。コンセプトとしては、独自、あるいはもはや古い、と言われても仕方ない感じはありますが・・・。

次は空力的には今、トレンドセッターと言ってもいい、フェラーリです。

帰ってきたロリー・バーンが手がけたなんてまことしやかに言われてますけど、そんなことを言われるぐらいに攻めた感じになってます。

というか、サイドポンツーンの前のところは・・・これはどうなっているんですか?昨年のマシーン、SF70Hからしてよくわからなかったんですが、これは・・・あの長方形の部分だけがインレットだとすると、あまりにも小さすぎませんか・・・。ちなみに、昨年のマシンの名前は「スクーデリア・フェラーリ 70周年 ハイブリッド」だったんですが、今年はSF71H。70周年記念のネーミングだったんとちがうんかーいとツッコみましたが、フェラーリはマシンの命名ルールを変えた年はだいたい駄目という傾向があるので、今年は期待できます。

おりしも、タミヤからSF70Hの1/20キッドが発売になりました。みなさん、買って構造を確かめましょう。

次は、やっと全体がオレンジになったマクラーレンです。

いやー、これですよ。これでいいんですよ。メルセデスと別れてからこの色になるまで何年かかったことか・・・。イイですね。

で、ここまでの話の流れから行くと気になるのが、完全に今年のトレンドに背を向けているところです。インダクションポッドは小さいままだし、サイドポンツーンもコンサバ。上の整流板も前からずっとやってますが、トレンドとは違います。インダクションポッドが大きいことはいいことではないので冷えるんならこれでいいと思うんですが・・・なんかテストでカウルが焦げてるとか言われてます(笑)。大丈夫なんかいな。もしかしてなんかやっちゃったのか、冷却計算やカウル内部の取り回しでホンダ→ルノーの変更でしくじった面があるのかもしれません。まあ、マクラーレンの開発力があればそのあたりはいくらでも取り戻せると思うので、スペインGPあたりにはガラッと格好が変わってるかもしれません。

ちなみに、フロアの端っこが簀子になっちゃってますけど、これはなかなかおもしろい処理ですね。もしかしたらフロア下の空気を上手く横ににげないようにできるのかもしれません。だとしたら効果バツグンのハズですが、どうなんでしょうか。

さて、お次は今年のホンダのお相手。トロ・ロッソです。

インダクションポッドは大きめ、サイドポンツーンはコンサバ。まあ、トロ・ロッソにとってエンジン変更はかなりの大事だったはずなのである程度余裕もみてるでしょうし、こんなもんでしょう。このチームの場合、ホンダと組んだ効果がまともに働き出すのは来年かなと。ただ、ミナルディ時代を含めて「ワークスエンジン」がこのチームのマシンに載ったことは初めてだそうで、チームの士気は高いそうです。

ワークス・・・まあ、そうね。他のエンジンはワークスの地位を得られる可能性はないですからね。マクラーレンはメルセデスのワークス・チームが出てきて凋落してるわけだし、レッドブルもそうならない保証はないし。マクラーレンとしては、それだからこその「ギャンブル」をしてのホンダ獲得だったわけですが・・・。結局、そのカードはレッドブルへ移ったことになるわけですから、なんだかなという感じです。

まあ、なんせ長く参戦してますが、たった1度しか勝ったことがない(その1度がセバスチャン・ベッテルによるもの。ベッテルはやっぱすごい)チームなんで、多くは期待できません。生ぬるく見守りましょう。とりあえず、ホンダの本気が感じられるといいんだけども。少しずつ変わっている雰囲気は感じます。インディ、国内レース、WTCCでも少しずつ・・・ね。

最後は、フォース・インディアですが・・・niftyに写真がないぞ。まあ、去年と変わってません!(笑)。まあ、去年の出来は悪くなかったし、Haloをつけるだけで大仕事なので、それに集中して開発資産を残しておき、トレンドを見定めて来年の車も見定めつつ開発というのは悪くない戦略です。もともとお金がないチームなので、それはそれで見識かなと。

というわけで、たらたら書きました。ともかくオーストラリアがすっごく楽しみです。

さて、最後にもう1つ。昨年、インディ500を制した佐藤琢磨。やはりアンドレッティ・オートスポーツのようなトップチームは違うなあ、これで琢磨の今後も期待できるなあと思っていたのですが、アンドレッティがシボレーにスイッチするかもしれないという状況になり(結局、しませんでした)、古巣のレイホールの2台目としてエントリーすることになりました。ちょっと残念だったなあと思っていたのですが、なんとなんと、シーズン前テストではグレアム・レイホールと琢磨がトップタイムを独占するなど、かなり期待が持てる様子。もう次はシリーズチャンピオンしかないですから、期待しましょう!

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Amazonのマクラーレン・ホンダのドキュメンタリー

ストフェルの少年時代のお話や、シーズン前トレーニングの様子。新車発表会の舞台裏。大忙しの製造部門の様子など、興味深い映像はたくさんです。そもそも、ウォーキングの中にこんなにカメラを入れたこと自体がロン・デニス時代には考えられないことだと思うのです。

それはそれとして。

全体の話の流れが

  • 2017年はきっと素晴らしい車を作れるはず。だって俺たちすごいから。
  • 新車発表会やシーズン前テストまで車が組み上がるかわからない。作業は着々と遅れてる
  • 特にアンダートレイが遅れてる。だって、今回のアンダートレイはすごく難しい形だから
  • なんとかギリギリ間に合った。ホンダも新型エンジンを持ってきてくれた。繋げるのに苦労したけど、ちゃんと動いたよ!
  • シーズン前テストに行ったら、ホンダエンジンは全然ダメダメ。今年はもうだめだー

と、こんな感じ。

いやいやいや。

  • そもそも、ホンダエンジンが目標性能に達してないことを、現場に行くまで知らなかったわけないよね?知らなかったとしたら、致命的なコミュニケーションの問題でしょ。
  • トレイをつくるのが大変?シェイクダウン延期?マクラーレンともあろうチームが、開発の遅れはあっても製造に問題抱えるとか、ないっしょ?トレイなんて新しいバージョンを毎戦3つずつ持ってきたって不思議じゃないでしょ。
  • エンジンがダメダメだったとしても、車体性能が目標に達したかどうかは測れるでしょ。そもそも、R&Dがまったく存在しないかのような映像、おかしいでしょ。
  • あのカラーリングに議論がなかったわけないよね。ホントに株主は何も言わなかったの?

というわけで、全体としては「マクラーレンはまったくの日和見経営で、ロクな管理がされていないようだ」というようにしか見えないです。世界のあちこちのカテゴリーで負けまくっているホンダも似たように感じるけど、「戦い」の臭いがしないんだよ。少なくともロン・デニスはワイン飲みながらエグゼクティブなミーティングしないと思うよ。

というわけで、まあ、今のマクラーレンにはまったく期待できないってことがよく伝わってきました。エンストンのチームもだいぶひどいことになったけど、あそこも根っこのレーシングマインドはしっかりしたものなわけで、この3年間、プアなエンジンを積んでたせいで車体でガチガチに競ってこなかったマクラーレンがルノーワークスに勝てるかどうかは微妙なところなんじゃないですかねぇ・・・間違いなくレッドブルには勝てないと思いますけど。

などと言っている間に、明日はもうウィリアムズの新車発表ですって。季節の移ろいは早いものですなあ。

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トヨタの必死さと、それでも届かないル・マンのトロフィー

2012年から復帰したトヨタのル・マン挑戦。早くも6年目。しかし、年に一度しかないル・マン24時間レースですから、当然6回目。

その6回のうち、マシンのアドバンテージがあった年もあり、まったく叶わない年もあり。それは莫大な費用をかけて毎年、毎戦新しいマシンを持ち込むF1とは違い、ニューマシンをいれるタイミングがそれぞれなので当然起こりえることです。逆に言えば、F1並みの資金を思い切りつぎ込んでしまえば、有利になれる世界で、それはトヨタほどの大企業なら不可能ではありません。しかし、世界的な大企業であるということは、それだけの資金をつぎ込んでしまったら経営的に明確なリターンを求められてしまうという意味でもあります。それは、メルセデス、フェラーリ、ポルシェなどの「ブランドイメージこそが命であり、経営の資産」であるスポーツカーブランドにはない、トヨタの枷でもあります。

その枷をトヨタチームは言い訳にはしませんでしたが、確実に存在するようでした。マシンの開発費もライバルに比べ決して十分ではないという話は良く聞きましたし、ライバルが3台のマシンを持ち込む中、2台しかマシンを持ち込まず、ライバルが2台のマシンをトラブルで失いながらも3台目で優勝するのを横目に見ながら、手痛い敗退を繰り返してきました。

モータースポーツファンにはその辛さはよくわかったし、見ていられないものでした。レースは勝たなくては意味が無いのです。全て勝つ必要はないけど、勝ちたい、勝つんだという思いがあり、それを実現しなければならない。負け続けるトヨタに、生放送の実況中にコメンテイターから「3台目を出さないってことは、勝つ気がないということだ。勝つ気がないなら出ない方が良い」とまで言われました。しかし、それだけの予算は得られなかったのでしょう。

2015年に「マシン開発目標を低く見積過ぎる」という大失敗をして惨敗し、2016年を戦うには飛躍的なマシンの向上が必要でした。しかし、それだけのリソースはない。そんな状況の昨年のトヨタチームは、マシンの洗練を行うと同時に2016年の目標を「ル・マンを勝つ」だけに絞り込みます。WECのシリーズ戦を捨て、ル・マンという年1回の特殊なサーキットで勝つことだけに絞り込む。第1戦、第2戦、そして第3戦ル・マンの予選。トヨタはぱっとしない成績に留まります。

しかし、決勝では安定したスピードと、他チームより少しだけよいタイヤ特性と燃費で僅差のリードを維持することに成功。こんな勝ち方もある。2014年、圧倒的な速さを見せながら勝てなかったときにもアウディが見せたような戦いで、初挑戦から30年近く経ってはじめて見せるトヨタの「強い」レースでした。日本を代表する自動車会社が、自国内の研究施設で開発した技術を用い、自国出身のF1ドライバーがステアリングを操るマシンに、トップチェッカーを受けさせる。限られたリソースでやってきたトヨタチームのこれまでの努力がついに報われるんだ。バブルの頃のような、なりふり構わないやり方ではなく、今の日本のやり方でもちゃんとやれるんだ。みんながそう感じて、胸が祝福と誇りに充たされていました。

あの瞬間までは。あまりに残酷な、あの悪夢の瞬間がやってくるまでは。

2017年のトヨタは、その枷を緩めることにしました。衝撃の敗戦から速やかに2017年の参戦継続を発表し、3台にマシンで挑むことを決めました。今までのやり方をかなぐり捨てて、2017年にまず1つ勝つんだ。ル・マンの優勝者リストに、まずトヨタの名前を刻むことが必要なんだ。そう叫んでいるようでした。

折しも、2016年の秋に衝撃のニュースが発せられます。アウディが急遽撤退することとなったのです。もちろんフォルクスワーゲン(VW)の燃費不正問題で、大きなダメージを負っていたことは知っていました。VWグループとして、2社をWECに参戦させている今の状況が厳しいだろうことも想像に難くないし、実際、WRCではVWが撤退することはすでに発表済みでした。

しかし、2017年マシンの開発をしているという噂でしたし、何より、21世紀のル・マン24時間レースは常にアウディという存在がありきでしたから、アウディがル・マンからいなくなるということを想像出来なくなっていましたし、フォルクスワーゲンもそれはしないんじゃないかと思い込んでいました。まさに、衝撃でした。しかも、ポルシェも2017年は2台での参戦になるといいます。

ライバルの撤退は参戦の意義に関わることであり、トヨタにとっても喜ばしいことではありません。しかし、極短期的に考えれば2017年は大きなチャンスです。総合優勝のチャンスがあるマシンは、LMP1-Hというカテゴリーの車に限られ、2017年はそこにポルシェとトヨタの計5台しか出ないんですから。確率的に考えて、トヨタの勝つ確率は60%です。やったね。

さらに、2017年はマシン開発も力をいれました。トヨタがいかに予算を増額したからといって、いきなりマシンが速くなるというものでもありません。使えるお金は増えたんでしょうが、その分、現場の負担は増えたかもしれません。村田さんが「若い奴には恨まれているだろうと思う」とコメントしていましたが、苛烈な開発だったことが伺えます。

努力は実り、2017年のWECは第1戦、第2戦とトヨタが連勝。第3戦ル・マンの予選でも小林可夢偉が驚異のラップを刻み、ポルシェを圧倒します。速さはもう、申し分ない。トヨタは広報にも力を入れ、J-SPORTSの中継のスポンサー額も増やしたんでしょう。ついに24時間フル中継が実現し、さらにはトヨタのサイトからそのJ-SPORTSの中継がタダで見られてしまう太っ腹。豊田章男社長ことモリゾウ選手(逆だろ)も現地入り。準備は万端整った。今年はいただきだ・・・とは思うんですが、なんせル・マン24時間はまずは走りきらないとどうにもならないわけで、こればっかりは壊れなかったとしてもぶつけられたりとか、いろんなことが起こりますから。表彰台独占の可能性すらあり得ると思っていますが、とにかく、1台生き残ってくれれば。せっかく、どの1台が優勝しても日本人の優勝になるように3人のドライバーを割り振ってるんですから。一貴でも可夢偉でも国本でも、どのドライバーでもいいじゃないですか。3台出したんだから、1台生き残ってくれれば。

残念です・・・。私たちの考えるようなことは全てやった上でのこの結果なんでしょうから、仕方ないんですけど、落ち込むなあ。

結局、5台のLMP1-Hマシンは全台にトラブルがでて、3台がリタイア。1台は1時間以下の修復時間で済んだのでなんとかLMP2マシンに総合優勝を奪われるようなことは防ぎましたが、もう1台は2時間以上の修復時間が必要で総合9位(後に失格マシンがでて8位に繰り上げ)。この2台のどちらがポルシェでどちらがトヨタでもあり得たとは思うんですが、結果としては、トヨタは総合順位の表彰台に上がることすら出来ないという結果に終わりました。がっかりです。

考えてみればですね。

いやあ、アウディが出てたらアウディが勝ってましたわ。アウディは偉大だな・・・

しかし、まあ、LMP1-Hマシンで挑戦し始めてまだたったの6回じゃないですか。18年の長きにわたってライバルがいないときもル・マンのグリッドをきっちりと占めて、ル・マン24時間レースのプレゼンス維持に貢献していたからこそアウディは尊敬を集めたし、ライバル不在だったときのアウディの総合優勝の価値を毀損する声も上がらないわけです。

今年は確かに千載一遇のチャンスでした。来年以降も今年と同じような体制をつくることは難しいと思います。でも、続けて欲しい。幸いにして強敵ポルシェはまだいてくれます。ハイブリッドを運用するのは難しいかもしれないですが車体だけでも提供して、チーム郷のようにLMP1のカスタマーチームを作っても良いかもしれない。また、GTEクラスへ参加できるだけの車はあるわけですから、ニュルのようにGTマシンでもポルシェと争えばいい。平川のようにLMP2クラスにもっとトヨタのドライバーが参加するのもいい。

とにかく、ル・マンでトヨタが見せたパフォーマンスは着実に世界のモータースポーツファンの心に残っていますから、ヨーロッパでのトヨタのプレゼンス、モータスポーツ界でのトヨタのプレゼンスを高めるために、「トヨタがいないとル・マンが成立しないよ」と言われるぐらい、ル・マンを愛し続け、ル・マンに愛されて欲しいなと思います。ル・マンに愛されたとき、トヨタの栄冠は訪れることでしょう。

いやー、それにしても悔しいなあ。可夢偉とロッテラーがコース上でマシンを止める光景を見るとはなあ・・・

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佐藤琢磨が第101回インディ500マイルレースを制覇!

やってくれちゃったよ・・・凄いよ、琢磨。

こんなことが起きるんですね。日本人がインディ500に勝つなんて。私が死ぬまでに実現するかどうかもわからないと思ってました。もう、最後の10周は絶叫しながら見てました。

今年はフェルナンド・アロンソがF1モナコGPを休んで出場するということで、アメリカだけじゃなくヨーロッパでも注目を集めた1戦。折しも、去年まで苦戦続きだったホンダエンジンも今年はコンペティティブ。昨年、(元F1ドライバーとはいえ)ルーキーのアレキサンダー・ロッシを驚きのストラテジーで優勝に導いているアンドレッティ・オートスポートの6台目としての参戦であれば、優勝争いも目じゃない。チームメイトには経験豊富なドライバーがそろっているし、今年は琢磨もアンドレッティに移籍して、F1ドライバーがインディのオーバルレースに挑戦するときのアドバイスをたっぷりとしてくれるはず。どんな走りを見せてくれるのか、大注目でした。

しかし、インディカーでのオーバルのレースは、過去に多くのF1ドライバーの競技人生を危機に陥れてもいるのです。両足を切断し、後にパラリンピックで金メダリストとなるアレッサンドロ・ザナルディのことはみんな覚えているでしょうし、ネルソン・ピケも大クラッシュで大けがを負っています。インディはF1に比べても死亡事故は多いです。おととしのジャスティン・ウィルソンの事故や、少し前になりますがダン・ウェルドンの事故など、レースファンは悲しい記憶を忘れることはありません。今年もインディ500の予選でF1でも活躍したセバスチャン・ブルデーが複数箇所を骨折する大クラッシュに見舞われています。

期待もあり、心配もありの予選。なんとファスト9に入って予選5番手。ホントにアロンソは凄い。

さて、その隣のグリッド。相手があのフェルナンド・アロンソとはいえ、ルーキーには違いありません。ルーキーに負けていられませんよね、我らが琢磨さん。予選4位通過。いまだかつてこんなに前からインディ500に望む日本人を見たことがあるか。期待に胸膨らみます・・・が、そうは言っても当日に速さがあれば、予選最下位からでも勝てるのがインディ500。逆に言えば、運悪く他と違うタイミングでアンダーグリーンのピットをすれば、トップを走っていてもあっという間に周回遅れになりかねないのがインディ500。「うん、琢磨とアンドレッティチームは調子がいいぞ」ということは間違いないんだけど、予選順位はそれほど大事ではありません。でも、調子悪ければ4位にはなれないしね。期待していいんだよね?ね?

というわけで、モナコGPが終わってすぐに寝て、朝5時に起床。家を出るまでの3時間でなんとか見ました。いやー、毎年のことだけどもインディ500の中継はスタートするまでが長い。1周40秒のコースを200周するので、それだけで2時間強。事故でフルコースコーションになれば速度はぐっと落ちるのでだいたい3時間のレースが行われます。それでも十分に長いけど、中継は0時から6時までの6時間(笑)。ライブでは見てられないわー。

セレモニーは飛ばし飛ばし、コーション中も飛ばし、赤旗中断中も飛ばし・・・と家を出るまでの時間と逆算しながら見るわけですが、ポールポジションのスコット・ディクソンは華麗に空を舞うし(死んでてもおかしくなかった・・・)、車列のどこでもバトルしてるし、リードチェンジも多いし、アロンソはいきなりトップ周回を経験して、しかも、レース中の初めてのリスタートがトップからになったにもかかわらず無難にこなしたし、いや、なかなか飛ばすところなくて。

アロンソはホントに素晴らしい走行で、解説の松浦孝亮選手も「僕らの見てなかったときに、もう2回ぐらいインディ500を勝ってるんじゃないの?」と冗談で言うほど。さすがだなー。ところが、レースの中盤からホンダエンジンの何台かが煙をぼふーっと吐いて壊れてしまう症状が。F1から気分を変えにきているインディでもエンジントラブルになったら可哀想だなあと思っていたら、あえなく3台目のエンジントラブルとして、アロンソのエンジンからぼふー・・・。なんなんでしょう。そういう星のもとなんでしょうか。

さて、200周も走っていればピットタイミングもばらばらになって、最後のピットストップをどのタイミングでやったかとコーションのタイミングだけで優勝の権利が決まってしまうというのがインディ500あるある。インディは運ゲーです。しかし、今年はどういうわけかほとんどの(といっても半分ぐらいリタイアしたんだけど)ドライバーのタイミングがそろって盛り上がる展開に。

全員の最後のピットストップが終わった残り20周の段階で、タイミングよくリードしていたのがマックス・チルトン。そして、すぐ後を琢磨が追いかける。この時点でトップ5ぐらいにいれば優勝はぐっと近づきます。おいおいおい、これは久しぶりに琢磨にもチャンスがきたんじゃないの?マシンで大きく劣っていないことは確かだし、琢磨ならやってくれる。

しかし、なかなか簡単には行かず・・・順位を各所で入れ替えつつ、最終的に上がってきたのは、あのエリオ・カストロネベス。そして、琢磨が挑む。最後はこの2人の行き詰まる一騎打ちになりました。最終盤は琢磨がリーダー、後ろにエリオ。しかし、ドラフティングがよく効くオーバルコースのレースでは、基本的に真後ろに入られたら追い抜きを防ぐ手段はありません。最後の最後、一番良いタイミングでトップの真後ろに付けるのが最も有利。この時点では、エリオがベストのポジションにいるようにみえました。さすがです。

そして、ラスト3周でエリオが琢磨に並びかけ、サイド・バイ・サイド。しかし、ここで守る琢磨。もうすぐホワイトフラッグという裏ストレートで、琢磨とエリオの差は1車身半。解説の松田さん、松浦さんが「いける、これならいける!」と叫ぶ。あとは琢磨のエンジンがあと1分だけ持ってくれれば、あの2012年。ファイナルラップでトップのダリオ・フランキッティのインに飛び込んでバランスを崩し、壁にクラッシュしたときに置いてきた忘れ物を取り返すことが出来ます。あとは、ただ、「いけーっ」と叫ぶのみ。

チェッカーを受けたあと、テレビの中継では無線で歓喜に絶叫する琢磨の声が流れました。そして、たぶんスポッターのロジャーさんだと思いますが、「おめでとう」という日本語の声。じーんときました。

パレードラップ。ビクトリーレーン。頭からミルクを浴びる琢磨の顔。琢磨よりずっと長い期間この瞬間に立ち会うために毎週全米を旅しているジャーナリスト、天野さんの顔。松本カメラマンの顔。マイケル・アンドレッティの顔。ホンダのスタッフ達の顔。日の丸を持ってマイケルとオープンカーでパレード。チーム全員でブリックヤードにキス。

いやー、良いもの見せてもらいました。うれしいなあ。ホントにうれしいなあ。日本人にとっては忘れられない第101回大会になりました。

これでもう、来月、一貴か可夢偉がルマンで勝っちゃったりしたら、もう2017年は大変な年なんだけど、そうそう甘くはないかな(笑)。でも、十分に期待できますからね。うわー、楽しみだなあ。

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マクラーレン・ホンダに未来はあるか

今週、いよいよ2017年のF1シーズンが始まります。

今年はマシンの大幅なレギュレーション変更がありました。マシンの空力に大きく変更を与える変更としては、ルールの隙間を突いたダブルディフューザーでブラウンGPが見事チャンピオンを取った2009年以来の大きな変更です。あのときのような大番狂わせがあるかもしれないと期待をされていましたが、テストを見る限りはそれはなさそうです。というよりは、未だ勢力図は混沌としているというの状態です。

そんな混沌状態から悪い意味で抜け出してしまっているのが、我らがマクラーレン・ホンダ。2年前を彷彿とさせる(とは言ってもだいぶあのときよりはマシだと思いますけど)トラブル続きで、テストの走破距離は完全に低迷。信頼性がないのも痛いですが、パフォーマンスもからっきしということで早くも両者は「別れる/別れない」なんて騒がれてしまっています。

F1だけでなく、日本のSuperFormulaとSuperGT、はてはWTCCでもインディカーでもライバルにすっかりやられちゃっているホンダは本当に残念な感じです。ただまあ、ホンダの場合、何が何でも勝ちたいのかよくわからないところもあります。いや、やっている人たちが勝ちたいと思っていることは間違いないんですけど、それが「何が何でも」なのかというと疑問です。例えば、メルセデスのエンジン部門から人を引き抜くとか、レギュレーションのギリギリを突いた隠し球をぶち込んでくるとか、そういう感じはしません。「面白い問題があるから、解いてみる」という感じに近いんじゃないかなと。

確かに今のエンジンのレギュレーションは、ターボと熱回生、リーンバーン、モーター回生と電池、それらを制御するソフトウェアなどなど次世代に向けて自動車メーカーが本気で考えなければならないテーマの宝庫です。これに正面から取り組むにはF1は格好のテーマでしょう。だからこそ、復帰を決めたわけですし。

それにホンダも今やF1で勝てばドンドコ車が売れるなんて企業ではありません。逆に今のようなていたらくを晒していたとしても、販売にたいした影響もないのかもしれません。ルノー、ダイムラー、フィアットに比べてしまえばそれほどお金があるようにも思えませんし、実際のところ、こんなもんかもしれません。

というわけで、ホンダは非常に危機的だと言われ、まあ、それはそうかなという気もしますが、冷静に考えてみるとホンダにはあんまり失うモノは無いワケです。別に勝っても負けても使うお金に変わりがあるわけでもなし、業績に影響するわけでもなし。であれば、出せるだけのお金で(といっても年間100億円ぐらいは余裕で使っているんでしょうけど)、出せるだけの成果を出せばいい。今回の参戦は長期であると明言してしまっていますから、短期的な勝利を目指して大金をつぎ込んでもいないでしょうし、(できるかといえば、できないでしょうけど)ボロ勝ちしてもだめなわけですし。

今や評判はダダ下りですが、それが気にならないんならあんまり実のところは困ってないかもしれないホンダとは裏腹に、いよいよ困っているのがマクラーレンです。一部の報道では、マクラーレンがメルセデスに乗り換えようとしているなんて報道されていますが、そもそもなんでマクラーレンがメルセデスから海のものとも山のものともつかぬホンダエンジンにスイッチしたのかという理由を考えれば、それは完全に後退を意味する選択肢です。

マクラーレンがチャンピオン奪還を目標に置くのであれば、メルセデスエンジンを積んでは無理です。メルセデスワークスチームが存在する限り。それがマクラーレンがメルセデスと決別した理由です。カスタマーエンジンでワークスを倒すことは出来ない。なぜならば、いざとなればメルセデスはカスタマーエンジンとワークスエンジンの間に差を付けることが出来てしまうからです。マクラーレン・メルセデスとフェラーリあるいはレッドブルがチャンピオンを争っているならばいざ知らず、メルセデスワークスチームとチャンピオンを争っているならば、メルセデスは躊躇なくマクラーレンのエンジンパワーを絞るでしょう。それはそういうものです。

メルセデスワークスがチャンピオンを争える車である限り、メルセデスエンジンを積んでいてはチャンピオンにはなれない。フェラーリエンジンでも同じこと。ルノーワークスはまだまだチャンピオンを争える状態ではないのでルノーエンジンを積んでチャンピオンを目指すことは出来るかもしれませんが、今のマクラーレンがレッドブルよりも良い車を作れるとは思えません。

というわけで、マクラーレンとしてはどうしても「第4のエンジン」が必要で、ホンダはぴったりの選択肢だったというわけ。だから、今からホンダと手を切るということは、さらに別のエンジンを見つけてくるか、「ウィリアムズとコンストラクター選手権4位を争うぞ」に方針転換するかということを意味しています。その選択肢は本当にあり得るのでしょうか。いや、2013年のマクラーレンにとっては、それは「このままいくとなってしまいそうな未来」だったので、それを拒否してホンダと組んだんですが、その選択の結果である現状がそれより悪いわけですから、それを取り返しに行こうとするのはあり得ますけども。

そして、車を何百万台と売ったお金で未来への技術投資をしているホンダと違って、マクラーレンチームはスポンサーからもらったお金で運営しています。ところが、マクラーレンときたら、ここのところのチーム運営はガタガタといっても良い状態です。

メルセデスがブラウンGPを手に入れてワークスチームとして参戦し始めたのが2010年から。マクラーレンはワークスのポジションを失ってからただひたすらに凋落してきました。かつて、ウィリアムズがBMWのワークスエンジンを失ったのと同じ状態です。ウィリアムズの前例を見るまでもなく、ワークスエンジンなしでトップチームのポジションを維持することは大変に難しい。成績の低迷はある意味仕方がないことではあります。

ところが、マクラーレンは自分たちがトップチームであることに頑なにこだわりました。メルセデスワークスを失ったにもかかわらずマシンのカラーリングはシルバーを維持し、なんとホンダエンジンに変わってからもしばらくはそれを維持し続けました。まるで「シルバーは自分たちのカラーだ」と言わんばかりです。そこに、マルボロのスポンサーを失った後、Westのスポンサーカラーをあえてシルバーとして身に纏ったしたたかなマクラーレンの姿はありませんでした。

メルセデスワークスを失ってからというもの、サンタンデールを失った後のメインスポンサーを未だに得られていません。その間にもジョニーウォーカーを失い、タグホイヤーを失い、モービルを失って来ました。少々の間ならメインスポンサーなしでも平気だよ、マクラーレンにはそれに相応しいビッグなメインスポンサーが必要なんだと大口を叩いていましたが、おそらくは大きな割合でホンダに支えられているのだろうというのがもっぱらの噂です。どこのチームも苦労はしていますし、ウィリアムズが纏っているマルティニもさほどの大きな額を持ち込んでいないらしいですが、数年にわたってメインスポンサーが不在というのは酷い有様です。まさか、名乗り出るスポンサーが全くいなかったわけではないと思いますが、何か内部の運営が上手く行っていないのでしょう。ロン・デニスがスポンサー探しを期待してザク・ブラウンを連れてきたことが、何よりの証拠です。

その間、アロンソとバトンのヘルメットのバイザー上のリングは真っ白、レーシングスーツの背中も真っ白。マシンは真っ黒。チームユニフォームも真っ黒。マクラーレン・ホンダを応援する身としては、マシンが速くないならせめて格好良くあって欲しい。チームグッズなどを買って応援したいと思っていても、全く食指の動かないものばかりです。チームカラーとしてマクラーレンと言えばオレンジが知られているんだから、せめてオレンジのカラーリングにすれば少しは格好いいのに。

・・・と思いきや、今年のカラーリングはさらにがっかり。なんで黒を諦められないんですか。黒とオレンジの間に白のラインが入る今年のカラーリングはとてもかっこわるい。オレンジに白抜きのロゴはスポンサーロゴも目立たなく、魅力に欠けます。あれならせめてホンダのロゴの中だけでも赤に塗れば差し色として見た目が派手になると思うのですが・・・。マクラーレンにはコマーシャル部門にデザイナーはいないんでしょうか。

スポンサーがつかない、イメージ戦略が立てられない・・・というチーム運営が欠如した状態で、良いマシンが作れるはずもありません。ホンダが復帰し、マクラーレンと組むと決めたときはマーティン・ウィットマーシュがマクラーレンをリードしていて、「ウィットマーシュに任せておいて、ホンダはエンジンのことだけ考えいれば安心」と感じましたが、そのウィットマーシュがいなくなり、ロン・デニスがいなくなり、ヨースト・カピートは何もしないままいなくなり・・・と人事が安定しないこと甚だしく、人材の流出も止まらないようです。2013年にタッグを組むと決めたときとはチームはすっかり変わってしまったといってもいいでしょう。そんなマクラーレンを事実上引っ張っているのが、エリック・ブーリエですが・・・この人がルノー/ロータスに何をもたらしたかを考えれば、私にはとても期待が持てません。

とりあえず、マクラーレンからリーダーシップが失われた状態にある以上、ホンダから見ればマクラーレンと組んでいるメリットはほとんどないように思います。このまま強引に乗っ取ってしまうのならばそれも良いですが、さすがにマクラーレンはその対象としてはビッグネームすぎるでしょう。ここはペーター・ザウバーの手を離れたザウバーチームあたりをざくっと買い取って、誰か良い外人に運営を任せて(ウィットマーシュ呼び戻せば良いw)、のびのびとF1に長期スパンで取り組んでいけば良いんじゃないかと思いますね。

というわけで、「マクラーレン・ホンダに未来はあるか」というタイトルを付けましたが、今のままでは「ない」が結論となります。そして、それはホンダにも大いに原因はありますが、マクラーレンというチームの寿命が尽きたということでもあるんじゃないでしょうか。正直言って、ロン・デニスがいなくなった後のマクラーレンを継ぐ可能性があったのはウィットマーシュだけだったんでしょう。ロン・デニスがウィットマーシュと仲違いした瞬間に、この未来は決まっていたのかもしれません。

ホンダ、早く手を切った方が良いよ。

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