機動戦士Gundam GQuuuuuuX Begining
「THE FIRST SLAM DUNK」を思い出します。スラムダンクのファンが何も知らないで劇場に行ってアレを見せられる体験を重視して、宣伝としてはマイナスなのを覚悟して事前情報をまったく出さず。実際に鑑賞してそれを感じ取ったファンが自分も一切のネタバレをさせず「とにかく見に行って!」と言いまくる・・・というのが、そのときの現象でした。
アレからおよそ2年
今度はガンダムで同じ事が起きました。GQuuuuuuXですよ。読めないんだよ、そもそも。
新しいガンダムが発表されたことは知っていました。ここのところのガンダムはやりたいことがちゃんと分離されて、整理されて進んでいる気がします。ガンダムに新しい血を入れるための新しいシリーズである「鉄血のオルフェンズ」「水星の魔女」は、「あの花」から続く人脈の流れで手堅く評価される作品を生み出しているし、宇宙世紀に心を囚われたままのオールドファン向けには「UC」から続く流れとして「閃光のハサウェイ」「ククルスドアンの島」が出てる。新しき古典、スタートレックでいうところのTNGとしての「SEED」は念願の続編劇場版が作られました。全方向のガンダムファンに、絶え間なく何かしらが提供されています。運営が立派になりすぎて供給過多で死にそう。
そんな中、発表されたのが新しいテレビシリーズであるGQuuuuuuX。公開されたビジュアルイメージからは、「水星の魔女」に続く「間口を広げる」作品の枠に見えました。絵柄的に最初、「TRIGGERがやるのかな?ガンダム・グレンラガン?」てな感じに受け取って「水星の魔女よりは好みなのかなあ・・・」とぐらいに思ってました。
テレビ放送に先立ち、前半の数話を劇場公開にするという話をチラッと聞きましたが、それも特に気にしていませんでした。最近はそういうお商売が盛んですわね。そしたらtwitter(X?何それ?)でちょっとした騒ぎになっているじゃないですか。曰く、「ガンダムを見に行ったら、ガンダムがはじまって混乱した」と。どゆこと?
公式サイトでアナウンスされているストーリーはこれです。こう紹介されてる映画を見に行った人が「とりあえず、最初の『機動戦士ガンダム』のファンだと思っている人はすべからく観に行った方が良い」と言う。そりゃもう、完全に何か仕掛けられてるってことですよ。
というわけで行ってきました。
やりたい放題
やりやがって・・・
そうきたかー。いや、これは盲点。これだけ「ガンダム」を翻案していろんな作品が作られてきたけど、これは一番ありそうで無かった奴だわ。
というわけで、ネタバレして感想書きますけど、映画はじまって最初のカットから仕掛けがはじまるという映画なんでネタバレなしでは何にも書くことありません。以下は、劇場に行ってからみてください。いつからTVシリーズが放映になるかもわからない生殺し状態になりそうなんで、気になっている人はとっとと行こう!
さて、ネタバレしますよ。
いまや、「エヴァの会社」というより「シン・○○の会社」というノリのスタジオ・カラー。大ヒットしたゴジラと自作自演のエヴァで「シン」ブランドを確立して、ウルトラマンやって、仮面ライダーやって、ヤマトもやる。正直、ウルトラマン以降はそんなに大きな話題にもなってませんし、私も正直、世代じゃないのでピンとこないんですが、エヴァはさておき、彼らは一貫して「大好きだったあの作品の、でも観られなかったアレ」を作ろうとしています。観られなかったのは、当時の技術ではムリだったのか、演出として選ばれない選択肢だったのか、制作者と趣味が合わなかったのか、まあ、いろいろあんだろうと思いますが、そういうことですね。
そういう意味で、今回の作品の前半は「シン・ガンダム」。で、ガンダムでやりたい「観られなかったアレ」っていうのは、えらく細かい歴史のif。パンフによると、元々は、鶴巻さんのところに「ガンダムやりませんかー」という話が来て、「こんなのはどうですか」と返したのが架空戦記ものだそうです。
たぶん、もう今の若い人はわからないと思うんですよね、架空戦記。私が子供の頃はまだけっこう元気だったんですよ、荒巻義雄の「紺碧の艦隊」とかの、太平洋戦争で「もし、○○だったら」って奴。ただ、私ですらそうですが、今の人は太平洋戦争の史実も知らないですから。知らないと架空戦記面白くないから。
でも、ミッドウェー海戦もラバウル航空隊もルンガ沖夜戦も知りませんが、ルウム戦役や第13独立部隊、星一号作戦なら知っているのが我々の世代。これをベースにした架空戦記ものは成立します。いや、そもそも「機動戦士ガンダム」自体が架空戦記ものだと言っていいわけですから、架空の架空なんですけど、それだけにまだやってなかった。「ガンダム」でパラレル展開、例えばテレビ版と劇場版で結末が違うとか、小説版は話がそもそも全然違うとかはありましたけど、「あそこで仮にこうなっていたら、歴史が変わっていた」みたいなものを正面切ってはやってません。そこで、鶴巻さんが「ジオンが勝つ世界線の話」はどうだと提案したと。アバンタイトルでシャアがサイド7でガンダムの強奪に成功するのを描いて、結果、ジオンが勝った世界での物語はどうか。ダメじゃね?って思ってたけど、意外なことにサンライズはOKを出した。
そこに「アバンじゃなくてもっと膨らましたら・・・」ということで庵野秀明登場(笑)。そもそも「赤いガンダムにシャアが乗る戦記物」をやりたいなーと思っていた庵野さんが、あっという間に映画1本分ぐらい、かつ脚本レベルに詳細なプロットを書いて持って来たと(笑)。というわけで、それをがっつり削って、今回の映画の前半部分が出来ました。つまり、前半は「シン・ガンダム」になっちゃってんのよ。
最初のカットから、コロニーのデザインやモビルスーツのデザインは変わっているものの、ナレーションのセリフ、BGM、レイアウトまで全く「機動戦士ガンダム」の冒頭と同じ。「ガンダム大地に立つ」のタイトルテロップとSEまで同じ。ただし、タイトルは「Beginning_。鈴置さんの声が聞こえるのは空耳(笑)。もうね、ここまでで「や、やりやがったーーーー!」ですよ。隣で観ているMilueが「これってアレよね、だよね」という顔でこっちをチラチラ見てくる(笑)。Beginningか。ガンダムでビギニングって言えば、「めぐりあい宇宙」の劇中歌だもんな。「そして時がすこーやかにぃ〜」ですよ。
もうね、ここからは言いたいことだらけ。あのセリフはこっちで言うのかとか、あそこでガンダムにやられちゃうあの人がこっちで生きてるのかとか、ホントに「ビグザムが量産のあかつき」きちゃってんじゃんとか、詰め込みに詰め込まれていて何度見ても楽しい映像。これ、TVでもやってくれるのかなあ・・・。録画して50回ぐらい観たい。
ここまで、「マジで?マジで?」って思いながら楽しんだわけですが、色々あってシャアのガンダム無双によって歴史は変わり、ジオンと連邦は休戦して、本編は0085のサイド6が舞台です。
で、「シン・ガンダム」のところはいいとして、後半のGQuuuuuuXも含めて考えると、これってターンエーっぽくもある。たぶん、わざわざ歴代ガンダムの要素をつっこんでる。冒頭のザクの侵入シーンはガンダム第1話まんまなわけですが、実はΖガンダムの第1話はまさにこのガンダムの第1話のオマージュで、でもガンダムではそこにいなかったシャアがサイド7(グリプス)に潜入するってのをやっているので、シャアがいるガンダムの第1話はΖガンダムの第1話のオマージュでもあり、どっちでもやったモビルスーツに接触したコロニーの一部がデブリになってコロニーから出ていく描写ももちろんやる。隕石落としがオカルトで阻止出来ちゃうのはもちろん「逆シャア」を踏まえているわけだし、0085パートで軍警察のザクが青で塗られていて、エグザベが尋問されて殴られたり、改札を飛び越えたニャアンとマチュが接触してそれを米津さんが主題歌で歌うところまではΖオマージュだし、ジャンク屋が出てきちゃったらΖΖガンダムじゃんだし、サイド6内部にペガサス級が入港しちゃったらそれ0080でしょだし、クランバトルは「頭部を破壊されたら失格となる」ってガンダムファイトじゃん(笑)。まあ、わざとですよね。
これが単なるオマージュとファンサービスなのか、黒歴史をどうにかしようとしてるのか(笑)はわかりませんけど、
> そして、世界は新たな時代を迎えようとした
は、なんか格好いいこと書いてあるだけなのか、マジで新しい時代を迎えちゃうのか。この世界をUCガンダムのラストで亡霊となってゆらゆらしてたアムロとシャアとララの3柱(笑)は、どうしようとしているのか。つか、ハロがいるけどアムロはバンダイのおもちゃ事業部に就職してしまったのか(笑)。鶴巻さんなので、そこらへんはほどほどにちゃんとマチュとニャアンの話を描いてくれるとは思いますけど、それと、Beginnigしちゃったところがどう世界に影響して、それがこの子たちにどう影響を与えていくのか。架空戦記ものだとすると、シャアのひらめきがこんな形で影響しちゃって、世界はこうなっちゃったよというのが、0079に留まっていては面白くないし、全然正史と違っていても面白くないわけですから、どう絡んでくるのか。
やー、どうなっちゃうんでしょうなあ
とりあえず、大仕掛けで大笑いはさせてもらったんで、観に行ってとても満足です
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