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システム・クラッシュ/マーサ・ウェルズ

"弊機"ちゃんの新作が出たぞー。

おや?

"マーダーボット・ダイアリー"シリーズの感想を書いてない?これはしまった。

シリーズ最初の「マーダーボット・ダイアリー」を読んだのは2021年。たぶん、いわきに旅行している途中に読んでいたはず。もう刊行から数年経っていましたが、徐々にSF読みの中でファンを増やしていた感じでした。ゆうきまさみ先生か、椎名高志先生か、その辺のtwitterで言及されてたのがきっかけだったような。

原書を読んだことがあるわけじゃないのでなんとも言えませんが、日本での人気は中原さんの翻訳、安倍さんのイラストの力も大きいでしょうね。著者が女性なのもあるのかな。この主人公(一人称が「弊機」。企業にお勤め(?)だったんですね。ブラックなので脱走するんですけど)がもうね、可愛い。いじらしい。

いわゆる「自我を持ったコンピューター」系のキャラクターなんですが、クローン生体素材がふんだんに使われているらしいので見た目は人間。生殖機能はもちろんないので、性別もなし。それもあって下ネタが苦手(笑)。自分自身をハックして統制モジュールを取り除いて自由の身になるレベルの電脳戦のプロフェッショナルであり、戦闘能力も人間とは比べものにならない「隣の席の兵器」でありながら、自由を勝ち取ってやっていることが「バレたら面倒だから自我がないフリをして、仕事がないときは人間が作ったドラマをひたすら見てるのが好き」というスーパー内向的なキャラ。誰の制御下にもない危険極まりない警備ユニットである自分を「暴走マーダーボット」と自嘲し、のろまで非合理的な人間のことを見下しているけど、その実、自分の存在意義が「人間を守ること」だと認識していて人間に危険が及ぶとプレッシャーで気分が悪くなる生真面目な性格を持ち、手のかかる護衛対象の人間達への使命感と愛に溢れていて(人間が嫌いならドラマみないんだよね)、でも、人間から道具的扱いを越えて尊重されるとキョドるという、まあ、拗らせまくったキャラ造形がみんなのハートを打ち抜きました。

既刊は、最初の中編集上下巻。次に長編第1作の「ネットワーク・エフェクト」があって、前日譚の「逃亡テレメトリー」まで、で、この新刊の「システム・クラッシュ」は「ネットワーク・エフェクト」の直後からの続き。1巻別の話を挟んじゃっているし、いや、もう「ネットワーク・エフェクト」の話忘れたけど・・・と読み始めたら、冒頭に(たぶん日本語版オリジナルで)8ページにわたるながーい「これまでのあらすじ」がついてて親切・・・。前のも読み直したいなと思いますけど。

というわけで、前作の最後でヤバい植民惑星から脆弱な人間共を救いだして脱出したはずなのに、「別なところにも入植者が残っているかも」という情報を得て奴隷船から彼らを救うためにまたも危ない惑星の上を突き進むことに。前作は「この惑星の秘密」がかなり大きなパートでしたが、今作はその経験を乗り越えたチームの一員として機能し始めている「弊機」が少しずつ人間関係を受けいれ始めているのが読みどころです。途中、自分のチーム内のポジションが脅かされそうになるんだけど、ARTに「警備コンサルタントはお前だ(から、自信持ってやってけ)」と言われて、「えへっ♡」ってなってる弊機ちゃんが可愛すぎる。

ちなみにこの表紙の中性的な"弊機"ちゃんが気に食わないって人もたぶんいると思うんです。いや、警備担当だから見た目で威圧できる必要があると思うし。でも、読んでる時の私のイメージって「人類は衰退しました」の「わたし」みたいな印象なんで、もっと女の子にして欲しいです(笑)。今回の解説は池澤春菜さんで、そこでApple TV+で映像化が進行中だよということが書いてありましたが・・・向こうの映像化の弊機ちゃんは可愛くないんだろうなあ。せめて草薙素子ぐらいじゃないとイメージが合わないのよ。

というわけで、本作がどうってことはあんまりないんだけど、シリーズの続きが読めて幸せ。とりあえず、このシリーズは読んで損はないのでまだの方はぜひぜひ


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