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フォース・ウィング 第四騎竜団の戦姫/レベッカ・ヤロス

いやぁ、力入ってますねー、早川さん。SFファンなのでハヤカワのnoteとか時々見ているんですが、発売のかなり前から猛プッシュしてます。

・・・ずっと引きこもっていて街にも出ていないので、世間的に話題なのはどうかわかりませんけど。どうなのかなあ。世界的なベストセラーだし、日本人好みな感じがしますけど、こればっかりはどうかわかりません。でも、たぶん、流行るんじゃないかな。

というわけで、さっそく買って読みましたよ、「フォース・ウィング」。売り文句ではこの本がきっかけでロマンスとファンタジーをあわせた「ロマトロジー」という新しい言葉が生まれた画期的な作品・・・って感じなんですが、えっと、そんな特別な感じはしません。竜騎士のモチーフも別に珍しくないし、士官養成学校ものというのも珍しくない。文系の主人公が家族への恨みでこちらを殺そうとしているイケメンムキムキエリートパイセンと恋に落ちるのも珍しくないです。ヤングアダルトにわりとありがち。

そういう意味で、読みにくさも皆無です。骨太な世界観や、セックス&バイオレンスな学園生活は「異世界転生」を中心とするファンタジーに慣れてしまった若い日本人読者の目にはむしろ奇異に映るかもしれないですけど、読みにくさは皆無。登場人物のキャラも立ってるし、訳語もこなれてます(この辺は本邦のファンタジー文化の積み重ねあってのことですね)。上下巻合わせて800ページのボリュームですが、スルスル読めます。いや、むしろグイグイと読まされます。

お話としてはですねー、ひとことで言って「毎日、新入生が何人か死ぬ過酷なハリー・ボッター」って感じです(笑)。物語のしょっぱなから数十人規模で死にます。竜も超怖いです。人間のことなんてなんとも思ってないので、ちょっと気に食わなかったら一瞬で灰も残らずに焼き殺します。主人公達は、そんな竜に見込まれて(竜側が人間を選ぶんですな。麒麟と同じかな)、グリフォンに乗った敵国の兵と戦うために志願してくるわけですが、主人公のヴァイオレットちゃんは図書館員志望の文系少女だったのに軍の司令官の母に強制的に竜騎士に志願させられてしまう。はたして、ヴィーちゃんは生き残ることができるのか・・・

もちろん、主人公なんでめきめき成長するし、脳筋達の中で一番頭がいい竜騎士として頭角を現していくし、絶対に私を殺そうと思ってるはずのムキムキお色気ムンムンイケメンパイセンも陰に日向にヴィーちゃんを助けてくれて、ぶっちゃけはじめて出会った日から頭ではビビりながらもムキムキの腹筋に主に下半身がメロメロなので、2人はどんどん接近していきます。「ロマンスとファンタジーでロマンタジー」だからね。その辺はもう心配しないで著者の筆に身を任せていて何の問題も無い。最高です。

あとは、やっぱ世界観がすごいし、当然、主人公はこの後、「この世界の秘密」に触れていくんですが、そこはもうちょっと明かされたところで「つづく」になっちゃうんだよねー。巻末のおなじみサンポさんこと堺三保さんの解説によると、なんとこれは全5部作の1巻目になる計画だと著者のヤロスから明かされているそうで、まだまだ先は長いです。まあ、ハヤカワが頑張ってちゃんとこれを売ってくれるとは思いますけど、売れなくて全部の翻訳が出なくなったりしたらオオゴトなので、ぜひ皆様買って読んでくださいまし。こういう世界的ベストセラーのビッグウェイブに乗るってのもそう滅多にあることじゃないんで、発売日ごとにすぐ読んで感想を語り合うお祭りにゼヒゼヒ参加して欲しいと思います。

さて、あとはネタバレ感想を書いておきますか

 

 

 

 

 

いいかな?

何が驚いたって、最初から学園ものテイスト(課題でしょっちゅう生徒が死んじゃうけど^^)で始まるんで、最初の巻は主人公達が新入生。次巻からは先輩になった主人公達が騎士団をまとめていく・・・という学園ものフォーマットをたどるんだと思ってたんですけど、後半、どんどんヴィーちゃんとゼイデン先輩はイチャイチャしちゃって、なんならイく度に部屋が爆発する(だから、ヤってるのが学園中にバレバレというw)ぐらいの激しいセックスをしまくる上に、テレパシーで会話できるようになっちゃって、「ちょっとお話しのテンポが速すぎない?」と。いや、せっかくの設定なんだからツンデレな先輩とイイチャモダな付かず離れずをしないと、お話が終わっちゃうじゃないかと。敵の設定が明かされてきた辺りから、「これはこの上下巻ではすっきり全部は片付かないな」て思ってきたんで、その世界の秘密の開示ペースと彼氏とのくっつくのくっつかないのが並行して進んでいくんだと思ったんですね。でも、テレパシーで会話が出来ちゃったらもう、くっつくのくっつかないのやってられないじゃないですか。常時接続じゃ恋の駆け引きは成立しない。どうすんの・・・と思ってたら、これ、学園編はもう終わり???このラストだと、もう主人公達はバスギアス大学に戻れないですよね。あれー、リーやリドック(彼、いいキャラですね)たちはどうすんのかしらん。

まあ、ばんばんキャラを使い捨ててるんで、いいのかな・・・。これからグリフォン隊の皆さんとも仲良くしていかなきゃいけないわけだし。それにしても、栞代わりに挟んである登場人物リストの上巻の方の1年生9名。何人生き残りましたっけ?えーっと、最初の3人だけ?(笑)。じゃあ、いいか。使い捨てていこう!

キャラ的には、近所の甘ちゃんお兄ちゃんキャラで大人の階段をスキップで上がっていくヴィーから置いてけぼりを食らうデインくんが、最後の最後で陰謀の片棒を担いでたことが発覚する辺りがよかったですね。実はただのいい人では無かったと。上手いなー。さて、この陰謀。メルグレン総司令、エートス大佐、ソレンゲイル司令官の3者の関係はどうなっているのかも気になるところ。ソレンゲイル・ママがホントのトコロで何を考えてヴィーを騎士にしたのか、その本意は何なのか。どうもリオーソン・パパとも明かされてない因縁があるみたいだし。最後の最後で出てきたブレナン兄ちゃんは誰の思惑の下にいるのか。

いやー、楽しみ。続編は来年ですって。

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