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スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム

公開と同時に良い評判と、ネタバレ情報が入ってきてしまってたので、慌てて1/14に観てました。感想書いてなかったんで、書いとかないとね。

でも、これもネタバレなしには何も書けないんですよね。まあ、もう公開から1ヶ月ぐらい経ってるし、気にするような人はもう観てて、観てない人は今更文句を言ってもしょうがないでしょう。というわけで、以下、ネタバレアリで書きます。

 

 

 

いいよね?

 

 

さて、この映画がなんなのかというのを理解するには、結構メタ知識が必要になります。ある意味、めっちゃマニアックな映画。うーん、まあ、知っているつもりのことを書くけど、私も別に詳しいわけじゃないんで詳細は各自調べてください。

まずは、スパイダーマンのマルチバースに関する知識ね。2019年に「スパイダーバース」ってアニメ映画がありましたが、それを観たときに学びました。アメコミって結構カオスなんで、いろんな人がいろんなスパイダーマンを書いていたりしますよと。で、成り行きでそうなってるんだけども、それをまとめるためにそれらの世界はすべてパラレルワールドですよとしました。他の作品でも、スピンオフ作品とかを作る時にはよくやりますね。そこまではいいんだけど、じゃあそのいろんなスパイダーマンが一堂に会するとすごくない?っていう危ないことを考える人がいるわけです。で、「スパイダーバース」はそんな作品で、今回の「ノー・ウェイ・ホーム」もそれ。

ただし、じゃあなんで「ノー・ウェイ・ホーム」がマルチバースにならないといけないかなんですが、ここに映画のスパイダーマンのややこしい歴史が関わってくると。まず、マーベルさんは、貧乏だった時代にソニーにスパイダーマンの権利を売ってしまってます。で、ソニーではサム・ライミの「スパイダーマン」と、リブートした「アメイジングスパイダーマン」の2つのシリーズが作られてます。ところが、「アメイジング」が興行的にイマイチだったところにMCUが絶好調のマーベルから、「アベンジャーズにスパイダーマン、貸して?」と言われOKします。ただし、その新しいスパイダーマンで単独作品出すときは、ソニーで配給はするからねという約束です。というわけで、「シビルウォー」にトム・ホランド演じる映画3代目スパイダーマンが登場したと。

そんな感じで、MCUにも出るし、「ホームカミング」という映画も作られて愛された3代目ですが、そもそもがアベンジャーズのメンバーとして準備されたんで、あえてシリーズでスパイダーマンにその死をもってヒーローの覚悟を与えるベンおじさんを設定せず、アイアンマン=トニー・スタークがその役をするという大胆な設定になりました。というわけで、MCUの大きな区切りになった「エンドゲーム」でトニー・スタークは死に、「ファー・フロム・ホーム」では「スーパーヒーローであるアイアンマンの後継者として苦悩する若きヒーローであるスパイダーマン」という姿が作られました。これは、「黒人でありながら、星条旗を背負うキャプテンアメリカの後を継ぐことを求められ苦悩するファルコン」と対になる設定で、なかなか唸らされます。

ところが、ここでソニーからマーベルにストップがかけられて、続きが作れない状況になります。ここからは私の想像になりますけど、「スパイダーマンをアベンジャーズに貸してくれと言われたからOKしたけど、アベンジャーズのリーダーにするとなるとちょっと話は別だぜ」ということになったんじゃないかなと。それはちょっと思ってたんと違うんやけどと。それは「貸して」で済む話かって事になったんじゃないか。スパイダーマンってのは「親愛なる隣人」であって、ご近所ヒーローで、アイアンマンの後を継いじゃいかんだろうと。で、揉めました。

というわけで、当初の構想は修正だ。「ファー・フロム・ホーム」で「私がアイアンマンだ」状態になったのをなんとか巻き戻さなきゃいけない。そのために偉い人達と脚本家達が頭を絞って考えたのが、「そうだ、ドクターストレンジに魔法でなんとかしてもらおう」だと(笑)。この経緯からソニーとMCUの協働案件になっているんで、「ドクターストレンジが状況を戻そうとするんだけど失敗して、ソニーとMCUごちゃまぜ状態の世界崩壊お祭り映画になり、なんとかして元に戻す」という構想が生まれた・・・というのが、私が妄想する、この映画がこういう映画になっている理由です。

その難しい案件を考えると、まあ、この映画の出来は素晴らしい。間違いなく面白いし、その状況を逆手にとってよくこんなに魅力的なシナリオを作ったなと感心せざるを得ません。そして、この新しいMCU版スパイダーマンのシリーズの魅力もしっかりと出ています。ずっとスパイダーマンのシリーズを見てきた人にとって、あるいはMCUと付き合ってきた人にとって、こんな心にしみる映画はありません。

とはいうものの、MCU版スパイダーマンシリーズしか観ていない人、あるいは、この映画だけを観た人にとってはちょっと問題のある作品であることは否めません。

そもそも、ヒロインを演じているゼンデイアが「ピーターとMJの2人がハッピーにならないこのエンディングは気に入らない」って言ってるとおり、後味は良くないですわ。3部作で考えるなら、2作目でピーターとMJの関係に問題が生じて、最終作で解決しないといけないのに逆になっちゃってる。さらに、今回の状況はスパイダーマンがストレンジに任せとけばいいのに自業自得で引き起こしたようにも見える。まあ、それは「スパイダーマンはヒーローとして未熟」ってのがMCUの中でずっと提示されてるし、高校生なんでしょうがないとも思えるんだけど、今回はその結果がかなり悲惨なので観ていて辛いというのがある。そして、スパイダーマンを元に戻すということは、もう一回ベンおじさんが死ななきゃいけない。その結果、人気キャラクターのメイおばさんが死ぬことになっちゃった。これが、どうしても「必要だからこのキャラここで死にます」ってのがみえちゃうんで観客に理不尽な印象を与えちゃう。

というわけで、私はこれは間違いなく「ある種の達成」だと思うし、そんな状況をメタに取り込んだ作品として1つ上のレイヤへの奥行きを感じさせる素晴らしい作品だと思うんですが、それはまあ、バックグラウンドをある程度知っているからであって、庵野秀明と90年代のエヴァを知っていて「シン・エヴァ」を観るかどうか問題なわけです。この作品だけ、あるいはMCUのスパイダーマンだけを観ると、これは作品として成立しているのか・・・と思わなくも、ない。ただ、前作の「ファー・フロム・ホーム」からして「アベンジャーズ/エンドゲーム」を観ていなくて成立しているのかというとそうは思わないし、「アベンジャーズ/エンドゲーム」を観るためには13本ぐらいその前に観ておかなければいけないんで、それは言ってもしょうがないんじゃないのかなと(笑)。そのぐらいが要求されてるんなら、ついでにソニーのスパイダーマンと「スパイダーバース」も観ておいたらいいんじゃないかと。

でも、そんな作品を手放しで「いい映画」って言っていいのかってのは、思いますよね。うん、難しい。でも、見事な技を見せられたんで、私は満足。そんな感じで!

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