幻のアフリカ納豆を追え! : そして現れた<サピエンス納豆>/高野秀行
この本は、「謎のアジア納豆」の続編です。が、いきなりこの本を読んでも全然大丈夫です。
物語は、「謎のアジア納豆」を読んだ高野さんの幼なじみの健ちゃんが
「ダワダワの製造農家取材、9月の下旬に行ってきま~す。西アフリカ共通のうま味調味料ということがわかって、前から行こうと思ってたので。確かボコ・ハラムとかの活動エリアに近づくので、3人のAK47を持ったセキュリティーと行きます。場所はKANOというところ。一緒にどう?笑」
というかるーい感じでナイジェリア取材に誘ってくるところからはじまります。
うん。最初からおかしい(笑)。普通はそんな幼なじみはいない。
というわけで、イスラム過激派が跋扈してあっちこっちが危ない西アフリカはナイジェリアへ納豆探しの旅にでます。味の素の現地法人の偉い人と一緒に。この幼なじみの人は味の素の社員で、現地の旨み調味料の調査がお仕事なんですね。世の中にはいろんな人がいる・・・。
というわけで、アフリカで納豆(=納豆菌で豆を発酵させた食品)探し。アフリカには様々な納豆があるようです。面白いのは、納豆を愛する人達がみんな(アジアのいろいろな納豆を作っている人もそうらしいです)納豆は自分のところにしかない変わった食べ物だと思い込んでるところ。「日本にもダワダワ(ナイジェリアの納豆)はありますよ」というと、「えっ?ナイジェリアから輸入しているんですか?」という返事が来るらしい(笑)。あー、でもこれ、日本人もそう言いそう。
そんなこんなで、ナイジェリア、セネガル、さらにはブルキナファソという聞いたことのない(少なくとも私はこの本を読むまで聞いたことありませんでした)アフリカの国と、そして韓国へ高野さんは出かけていきます。韓国にもあるらしいよ、納豆。でも、なんでほとんどの日本人は隣の国にも納豆があることを知らないんだろう・・・という謎を解くために高野さんはゆく。
いやー、面白い。1日で一気に読んじゃいました。単にルポタージュ・・・というか珍道中が面白いというのと同時に、「人類にとって納豆とは何なのか」「どんな人達が納豆を必要としたのか」という問いが各地の取材をするウチに立ち上がってくるのが見事。後は「主にネバネバ状態をご飯の上に載せて食べる」という日本人の納豆の利用方法がけっこう特殊で、海外の納豆を参考にすればまだまだいろんな納豆の食べ方があるというのが新鮮。勉強になるなあ。
ちなみに、最初にでてくる幼なじみの人、「健ちゃん」は同じ調査について別の視点でnoteに書いてて、この本を読んでからそっちを読むとまたなかなか面白い。なんてったって、この取材を通じて調査したダワダワを元に味の素は現地で「ダワダワ版ほんだし」を開発して売っているんだそうです。すごい!
ナイジェリアのうま味の秘密は「豆」にあり!味の素グループの「うま味ハンター」が生み出したものは・・・
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