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今、接触削減を緩めてはいけない理由。日本のCOVID-19対策は何を目指していて、我々は何を成し遂げる必要があるのか

今日も今日とて、いろいろな人がいろいろなことを言っています。COVID-19対策専門家会議は2/25というだいぶ手遅れ感のある時期に結成されたにも関わらず、世界でまれに見るほど素晴らしい働きをしていると私は評価していますし、かなり明確で多様なメッセージを発信しています。とりあえず、私には今何を目的に彼らは動いていて、どういう状況にあるのか、だいたい理解していると思っています。

そして、専門家会議の今の判断は、「感染者の増加は減っているが、期待した効果にはまだ足りていない」です。私たちがやるべき事は、もっと人と人との接触を減らし、新たに感染する人を限りなく0にするように努力することです。そして、そうしなければ我々はヘルスケア的だけでなく、よりもっと大きな経済的ダメージを被ることになります。

あー、そうだねー。もっとがんばるよーという人は、まあそれでいいんですが、「なんで減ってるのにまだダメだって言うの?」「上手くいってるから、もうぼちぼち解除に向かってもいいんじゃ無いの?」「どうせ感染は抑えられないんだからほどほどで付き合えばいいんじゃないの?」と思っている人向けの説明を書きます。いろいろな人に個別に説明するのがめんどくさくなりました。

まず、海外の状況まで考えてもどうせ何もできないので、問題を日本国内のことに限定しましょう。今から、日本は鎖国したと考えて下さい。さらに、最悪のケースとして、このウィルスには人間は免疫を獲得できず(ノロウイルスはそうです)、ワクチンも作れない(HIVはそうです)、特効薬もない(大抵の風邪のウィルスはそうです)と仮定します。まだ、十分に可能性のある仮定です。

日本人が感染していようがいまいが、老いも若きも、男も女も、全員家に引きこもり、一切の外部との接触を断ったとしましょう。この場合、2週間で日本から新型コロナウイルスはいなくなります。ただし、2週間かかるので苛烈な犠牲が伴います。現実的には不可能です。これが最短コースです。このコースの良いところは、感染者がどんなに多かろうが、やれば絶対に完全な効果が出ることです。最悪のケースではこのコースに突入します。

一方、何もしなければコロナウイルスはあっという間に日本人全員に罹患し、感染者の0.6%を殺します。仮に1人の感染者が感染して発病して寝込むまでの5日間に平均で2人に感染させるとすると、患者の増加は5日ごとに倍になります。2の10乗が約1000ですから、50日後に1000人、100日後に100万人、150日後には10億人の患者が出ることになります。もちろん、日本には1億人ちょっとしかいませんし、時期が過ぎれば感染者の周りは感染者ばっかりになりますからペースは鈍ります。しかし、日本人全員が感染するまでせいぜい数ヶ月しかかからないのだということを認識して下さい。そして、全感染者の0.6%が死ぬとすれば、何十万人も死ぬことになります。治った人もまた罹り、これがずっと続いていくことになります。これがロックダウンをする前のイタリアやスペインで起きかけていたことです。地獄コースです。

これを何らかの感染対策によって、感染者1人から1人未満の感染者しか出さない状態になんとか持ち込めたとしましょう。すると、感染者はゆっくりと減っていき、この状態を維持すればいつかは感染者を0に出来ます。ただし、最短コースが2週間ですから、それに比べると何倍もの時間がかかります。また、感染者の総数もかなり大きくなります。しかし、取りうる選択肢です。長期戦コースです。

ちなみに、非常事態宣言前の3密回避+自粛モードではこのレベルに達しませんでした。地獄コースと長期戦コースの中間で、それはつまりゆっくりとした地獄で、かなりの経済的・社会的犠牲を払っているにも関わらず最終的に何十万人が死ぬのでは受け入れがたいというのが日本政府の非常事態宣言の理由です。

さて、長期戦コースと最短コースの間のどこかにしか我々の目指すべきポイントはありません。しかし、完全な2週間の籠城戦と3密避けましょうモードの中間のどこに目標をセットすれば良いのでしょうか。ここで登場するのが8割おじさんこと、北大の西浦先生です。西浦先生は理論上のモデルを元に計算し、通常の8割の接触回避で1ヶ月我慢すれば最短コースと同じ、少なくとも、個別撃破が可能なレベルまでの効果を得られると結論づけました。これ、正しいのか。誰も知りません。今まさに、社会実験中と言えるかも知れません。しかし、誰も観たことのないウィルスと戦っているんですから、それはそういうものです。オルタナティブを提示出来る人は誰もおらず、西浦先生は多くの専門家が認める適任者です。我々に異を唱える資格はありません。これが今、我々が乗っている8割削減コースです。1ヶ月は苦しいですが、長期戦コースは下手すれば数年かかるし、ゆっくりとした地獄コースは永遠に自粛が終わらず、それを日常にするという選択肢です。それは多分耐えられません。しかし、なんとか1ヶ月の8割減を耐えられるのではないか。そういう厳しいながらも最も可能性のある道を、今、日本人は歩いているわけです。少なくとも、政府と専門家会議はそう考えています。

しかし、非常事態宣言から2週間、この計算モデル上に我々は乗っていないことが判明しました。感染者は減っているのですが、8割削減1ヶ月コースには乗っていない。このままではこの辛い状況がずるずると続き、耐えられなくなった人々が地獄コースへ踏み込んで行ってしまう。西浦先生の「これでは足りません」はそういう焦り、危機感から出ている言葉なのです。なぜモデル通りでは無いのか。削減が8割に達していないのか。モデルが正しくないのか。それはわかりません。きっと面白い研究テーマだと思いますが、それを追求している場合では無い。観測によってコースを逸れていることがわかったのならば、我々は軌道を修正しなければならない。しかし、この舵は切ってから2週間経たないと軌道が変わらない難儀な舵ですから、おそらく非常事態宣言の解除は予定の1ヶ月では出来ないでしょう。想定より長期戦コースに寄った側を走っていたということです。しかし、やるしかありません。想定通りにならなかったからといって、誰を責めることもできません。とにかく、やるしかないのです。

さて、最初に仮定を置きました。この仮定が覆った場合、新たなコースが生まれ得ます。免疫が獲得できるということがわかった場合は、制御しつつも地獄コースを行き、集団免疫を獲得するという道があります。ワクチンが開発される見込みが生まれたら、それが使える時期までどうやって耐えれば良いのかというプランを考えられます。特効薬ができて、死亡リスクが1/10にできたら(それでも季節性インフルより1桁高い死亡リスクなわけですけど・・・)、もうこの病気と共存して生きていくというのもあり得るかも知れません。致死率0.6%は、ちょっと受け入れがたいですが、1万人に1人ぐらいなら諦められるかもしれない(疫病に対して祈るしか無い昔の人はそういう状況で暮らしていたわけです)。これらの新たなコースが生まれることはあり得ます。

しかし、それはまだ今の時点ではわかりません。作れるかどうかわからないワクチンに依存したプランや、獲得できるかわからない集団免疫に依存したプランを望む声も聞かれますが、今の時点ではそれはないものとしてプランするのが正しい選択です。なので、基本的に地獄コースへ行くことはダメ。とにかく社会的・経済的に厳しくとも封じ込めに向かうしかないのです。仮にそうしなかった場合、ワクチンや集団免疫への期待が崩れた場合にはもっと酷いダメージを負うことになるからです。

というわけで、とにかく誰が持っているかわからないウィルスを誰にも渡さない。つまり、誰とも接触をしない。あるいは、接触する人を増やさない。これが今必要なことの全てなのです。目指すべきは、新規感染者が限りなく0を2週間維持(8割削減1ヶ月コースではそれが途中に現れ出すはずです)。戦いはまだ続いているのです。

 

 

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