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ファースト・マン

ちょっと前になりますけど、「ファースト・マン」を観てきました。いちおー、SF者としては観ておかないといかん気がしたんで。

実は、チャゼル監督の作品を観るのは初めてです。「セッション」も「ラ・ラ・ランド」も、なんだかあんまり好きになれそうにないタイプの人間が描かれているような気がしたんですね。で、「ファースト・マン」も聞くに「非常にチャゼルらしい」ってことらしいです。観終わった感想としては、「はー、これがチャゼルかー」ってちょっと思ったんですけど、1作だけ観てそういうこといっちゃダメですな。

えっと、映像作品として、というかドラマとしてはものすごくレベル高いと思います。まとわりつく孤独と死のイメージを、淡々としたタッチで積み上げていって、ラストシーンのガラス越しの夫婦の再会なんて「はー、2時間かけてここにたどり着くのか−。すげーなー」と思いながら観てました。こないだ観た「七つの会議」が、まあ、登場人物たちがべらべらべらべらお気持ちを吐露しまくる典型的な日本映画だったのに対して、こんな寡黙な男を主人公にこんだけ饒舌なシーンを作るんだと感心せざるを得ません。

えませんけど、書かれてるモチーフに興味があるかどうかは別問題なんですよね(笑)。

「常に自分が死ぬかもしれないことには感覚が麻痺しているけど、周囲の親しい人が死ぬことには耐えられない男」と「夫がいつ死ぬかもわからないこと、そして夫自身がそのことから目をそらし続けていることにいらだつ女」の夫婦関係って、興味あります?。私は正直あんまりないです。ただ、人類による初めての月面着陸という出来事をそういう側面で切り取ることの面白さというのはわかりますし、ホントに死亡率の高かった初期の宇宙飛行士とその家族にまともに焦点をあてた物語を作ることも意義深いと思います。

SF的な見所も多く、X-15やジェミニのトラブル、有名なアポロの死亡事故、月着陸船の訓練機など有名な逸話を徹底的なリサーチのもとに作った映像として見られるのは素晴らしいです。もっとも、この映画はアームストロングという人間を描くためにコックピットの絵は沢山あるんですが、アームストロングが乗っている機体を外から撮った絵というのがほぼありません。X-15が飛んでるシーンはないし、ジェミニ8号がどういう状態になっているのか外から撮った絵はないし(現実には撮影不可能な絵なんだからそれがあると興ざめするということはあるにしても、不親切であることには違いない)、月着陸船も降りて外から見るまでどんなものかわかりません(みんな知ってるけどさ)。この辺りは徹底していて、正しいんだけど、ちょっと残念な部分ではありますね。

というわけで、諸手を挙げて「おもしろーい」とは言いがたい映画なんですけど、映像でドラマを作る手腕はすっごいぞチャゼルというのはよく伝わるし、興味のある題材を撮ってくれたら途端にファンになるかもしれないなという気がしました。あ、いやー、アポロでダメなら他じゃ無理かなという気もするなあ(笑)。

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