カメラを止めるな!
6月だか7月だかからやってる映画ですよ。下手すれば話題になったってことでは「万引き家族」を超えるかもしれない1本ですよ。まあ、みんな観てますよね。
すいません、やっと観ました。
いや、話題になっているのは知ってたんですけど、私、ゾンビ映画が嫌いなんですよね。というか、ゾンビものを面白いと思ったことがないです。バンパイアものはわりと好きです。端的に言って、「登場人物が自我を失ってしまう」ということが鍵になるドラマ、面白くないと思うんですよ。それって、一時期ちょっと流行った「犯人が異常者」っていうミステリーと同じで、敵とか驚異とかってバカより賢い方が面白いと思うんですけど。
しかし、ここまで話題になっていて、かつ、ネタバレ厳禁のギミックにあふれた映画っていう評判を聞いちゃうと、観とかないとなー。というわけで、観に行きました。
というわけで、公開からもう何ヶ月も経っているのでネタバレもくそもないですけど、一応ここより下はネタバレするんで、映画を観てから読んでください。来月には配信も始まるらしいですよ。
おっけーかな?
さて、感想です。なるほど、面白い。これは、あれですね。三谷幸喜さんお得意の奴ですね。「ラヂオの時間」じゃん。パンフを観ると、やっぱり東京サンシャインボーイズのお芝居は意識されてたみたいですね。「ショウ・マスト・ゴー・オン」も最高に面白いもん。この作品の元のアイデアは演劇だったらしいので、それならなおさらでしょうな。
すごく画期的なギミックというようなことを言われたりしてますが、「ラヂオの時間」はヒットした映画だし、言っちゃえば三谷さんはこんなのばっかりやっているようなものだし、あるいはかの有名な「涼宮ハルヒの憂鬱」のTV放映第1話の「朝比奈ミクルの冒険 Episode:00」は、この映画の冒頭30分だけをテレビシリーズの第1話として流しちゃったというようなものだし、さほど目新しいものではありません。
でも、すっごい上手くできてる。劇中劇のすごく印象的なカット、違和感のあるカット、そのすべてに裏側の姿があって、ゲラゲラ笑えます。すごく時間をかけて脚本を練り上げてるんだなというのがよくわかります。すごく丁寧。
それ故に、三谷作品のような「え?どうするの、こんなの。え?それ、解決になってる?ええ?えええええええ?」というような力業の展開にはなっていないので、さすがに物語のテンションのうねりという点ではちょっと劣るんですが、しかし、この「カメラを止めるな!」には、先行作品にはなかった美点があります。
それは、劇中劇、つまり劇中で作られるゾンビ映画が、ちゃんと面白いってこと。とにかく芝居/放送を止めてはいけない、撮影を続けなければいけないという制限を逆手にとったこのスタイルは、作るものがとんでもないことになればなるほど裏側のドラマが面白いはずです。上手くいっちゃったらやりづらい。「ラヂオの時間」のドラマはくっちゃくちゃになってしまいますし、「ショー・マスト・ゴー・オン」のマクベスはしっちゃかめっちゃかになります。「朝比奈ミクル」もヒドい映像に仕上がっているからこそ、裏を知っていると面白い。
ところが、「カメラを止めるな!」では、「生放送・ワンカット撮影のゾンビドラマ」という、そんな無茶苦茶なという制限を設定として持ち込みながら、そんな無茶苦茶が行われていて裏側では大変なことになってるんですよーというドラマのキーポイントを隠したまま劇中劇をみせて、「確かになんかビンボーだし、ちょっと変なところもあるけど、それでもスリルと迫力のあるいいゾンビものじゃん」と最初に観客に思わせてしまうところがニクい。というか、それだけのものになっているからこそ、最初に「できあがり」をみせて、メイキングに遡るという手法が通用しているんです。これは、ちょっと難易度上がってますよ。だって、実際にワンカットのゾンビ映画を撮らなきゃいけないんだから。
というわけで、基本的なアイデアはそれほど奇抜ではないけどもみんな大好きな鉄板のネタで、しかしながら、そこに新しい挑戦が入っていて、かつ、きっちりと勝ちきっているという、これは賞賛してしかるべき映画です。これを300万円で撮ってるんだから、いや、感服です。すごい。
で、楽しかったねーと帰ってきた後で、Milueが観たことないっていうんで、Amazonでレンタルして「ラヂオの時間」も観て、もっとみたくなっちゃったんで「ショウ・マスト・ゴー・オン」のDVDも買って観てしまいました。いやあ、やっぱこっちも名作だなあ。ヒロインの女の子の「よろしくでーす」は「ショウ・マスト・ゴー・オン」の「いまやるとこですー」のオマージュなんだろうね。くっくっくっ。
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