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アルテミス/アンディ・ウィアー

処女作「火星の人」でスマッシュヒットを飛ばしたアンディ・ウィアー待望の2作目。待ってました!

「火星の人」はものすごく面白くて、大好きで、何度も読み返した小説です。特に好きなのが、NASA側のチームが、ワトニーがパスファインダーを回収に向かっていると気付くシーン。他にも好きなシーンはたくさんあるけど、パスファインダーがあること自体はフィクションじゃなくて事実だからあれはこの小説のための仕掛けじゃないですよね。それをあのように上手く使うというのは凄いなと、すごく感心しました。

一方の今作「アルテミス」は、ちょっと未来に月面に建設された都市アルテミスが舞台。となると、その架空の都市自体はすべて著者が考えることになります。主人公は様々な問題を月面都市という舞台を活かして立ち向かっていくことになりますが、そこで「そうか、そうくるのか!」と思わせるためには、そこまで舞台をちゃんと説明しておかなければなりません。いろいろな施設、制度、生活習慣、キャラクターなど、基本的に物語で使うものだけを事前に登場させておくことになりますから、そのあたりはとても大変。

で、その大変な世界設定はすごく魅力的。この月面都市がどうやって成立しているのか。なぜナイロビ時間なのか。なぜ通貨単位が重さなのか。ワクワクします。そして、それらがすべてちゃんとストーリーに結びついてます。さすが宇宙オタクなウィアー。素晴らしい。まあ、ただそれゆえの多少の飲み込みづらさはあって、昨今のラノベなどはそれを避けるために異世界に飛ばされても女の子がセーラー服を着ているような世界を平気で作っちゃうわけですけども、いいじゃないですか。こういう迎合しないきちんとした地球外技術も異世界文明もない世界設定。むしろ、嬉しい。異世界も好きだけどね。

一方、キャラクターの方では難しさがあって、今作の主人公は不良の女の子(といっても26歳。アラサー?)。前作では主人公のワトニーを始め、登場人物のほとんどはNASA職員なのでエリートだったわけですが、今作ではアルテミスがちゃんとした政府の管理をされていない西部劇みたいな世界ってこともあって、わりとみんなならずもので開拓者精神に溢れてます。そんななかで主人公のジャスミンちゃんは、敬虔なイスラム教徒のお父さんに反発して家出中(といっても26歳)の貞操観念緩めな元非行少女で、今はポーター兼密輸業。仁義に固いところと、技術者として頭が切れるところは周囲から認められてますが、いつも「くたばれ」を連発して周囲の大人の眉をひそめさせてます。

前作のファンにはどうもこのキャラのウケがよくなかったようですが、まあ、感情移入しにくいですよね、そりゃ。このジャズちゃんが大金持ちにたぶらかされて、犯罪に手を染める辺りまでは確かに読みづらいです。

ところが、その犯罪行為が思わぬことに・・・と、ここからの展開がまあ、面白い。最後はもうえらいことになります。えらいことになるんですが、そんなえらいことになってもあんまり気にしないアルテミスの人々もなんだか可笑しい。最後の200ページは一気に読み切りました。堪能した!

というわけで、前作が好きな方には文句なくオススメ。可愛い女の子が大活躍するライトノベル好きにだって楽しく読めちゃう・・・と思うよ、たぶん!


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