オリエント急行殺人事件
アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」といえば、ミステリー界に燦然と輝く古典であり、名作中の名作であり、読んでない奴は本読みの風上にもおけないのであり、今更、この作品が映画化される意味が、まったくわからない。
ちなみに、私は未読です。いや、ごめんて。
冗談はこれぐらいにして、とはいえ、あまりにも有名な作品だからトリックは聞いたことあるし、なんかわざわざ観に行こうという気はしないじゃないですか。でも、スターウォーズを観に行ったときの予告をみた感触がすごくよかったんですよね。Milueも観たいって言ってるし。というわけで、新年1本目の映画はこれに決めました。
で、感想ですが、前言撤回です。2017年に作る意味あります。
なんせ古典的名作をありったけの映像で後世に残したいという欲求は理解できるじゃないですか。やって下さい。で、蒸気機関車が荒野を走る映像だったり、豪華な客室だったり、凝ったカメラワークだったり、20年前だったらこれを取るのはすごく大変だろうなという映像なんですよ。すっごいゴージャスな感じ。ただ、これからも映像技術は発展するとは思うんですけど、「オリエント急行殺人事件」を映像化するにあたって本質的に変わるようなことはない気がするんですよね。やりたいことは全部できるようになったよ。なら、今じゃない?
と言う意味で、ある種の完成形じゃないかと思いました。そのぐらい映像はよかった。お話は、まあ、変えようもないんだし、原作読んでない立場からしたら演出にも特に違和感ないし。まあ、ポアロさんが論理展開は全然わからないまま、いろんなことをポンポン当てていくのはおかしいんですけど、気にならないっちゃならないです。一種のクローズド・サーキットもので、キャラが魅力的じゃないと全部台無しになりますが、そこはそれ、役者はみんな芸達者揃いでとても素晴らしいしね。
ただ、ストーリーが進行しているときはいいんですけど、列車が走り出すまでのシーケンスはぐっだぐだでした。誰も物語をドライブさせないんですよ。開始直後にポアロがちょっとした事件を解決する下りも、大仰な「解決編」をやっているわりにたいしたこと言ってないし。あんなの公衆の面前でやる意味ないし。ネクタイの曲がりを指摘したり、調色のゆで卵の大きさがそろっていないことを気にしたりというシーンも、「ごらんのとおり、ポアロは○○な人です」の○○に何をいれたらいいのかわからない。完璧主義者?偏屈ってこと?優れた人だって言ってるの?おかしいやつだって言ってるの・・・?他の登場人物も一通り顔見せはあるんですけど、全然伝わらない。
挙げ句の果てには、なんでポアロが列車に乗るのか、それがわからない。ポアロに列車に乗ってどこかに来いという手紙が来て、移動することになったということはわかるんだけど、ポアロが乗りたいと思っているのか、できれば乗りたくないと思っているのか、そこがはっきりしない。なので、物語を誰もドライブさせないままずるずると進行してしまうんです。
そういう意味では、ちょっと映画としては危うい感じがします。事件が起きて、ポアロが説得されて捜査に乗り出したあとは、事件自体がドライブしてくれるんでいいんですが、そこまでがこうぐだぐだなのは、ライムスター宇多丸さんがタマフルで指摘してたとおり、演出力がちょっと足りねぇのかな・・・的な?。でも、いいか。絵はキレイだったし。という、そんな感じです。
だから、これは東川篤哉さんとかの楽しいミステリーで読書に興味が出てきたぐらいの中学生とかに観て欲しいかな。そんな感じです。観て損した感じとかは全然無いので、安心して観に行けると思いますよ。
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