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ドラゴンクエストXIが挑戦しようとしたもの

やっとクリアしました。発売日(7月の末だったな・・・(遠い目))に手に入れてからこっち、相当な時間をスプラトゥーン2に奪い取られながらも、熱中して遊んだといっても嘘ではないぐらいには楽しみました。ちなみに、PS4版と3DS版のセットを買って、私がPS4、Milueが3DSをやりました。

私がこの手のRPGをちゃんとクリアするというのは非常にまれなことで(笑)、それだけでかなり良いゲームだったと思います。まあ、今世紀で2番目に優れたゲームである「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(TBoW)」の直後にやったせいで、すごーく古くさく感じてしまうこともありましたし、操作のダイレクトさに少し欠けるせいで、やり始めた直後はかすかに3D酔いを感じました。そういう意味での「システムの良さ」というものはほとんどないゲームです。

しかし、それは発表の当時からわかっていました。これまでドラゴンクエストは基本的に新作にはかならずゲームシステムの進化が伴っていました。直近でも、8で3D化して、9で携帯機対応、10でMMORPGと、「まず、システムの更新ありき」だったわけです。

ところが、今作はまずPS4版と3DS版を両方用意するという大きな前提がありました。これは、9で獲得した3DSユーザーも欲しいし、「ヒーローズ」や「FFXV」で獲得したリッチなゲームを愛するユーザーももちろん欲しいという、マーケティングの観点から決まったことだと思います。しかし、それを決めるということは「システムの新しさをウリにしない」という意味だったわけです。もちろん、「3DSでもPS4でも同じゲームが!」というのは話題性という意味ではアリでしたが、ほとんどのユーザーがどちらかしか遊ばないことを考えると「ゲームの体験」という意味でのウリにならないことは確かです。つまり、「DQ11のウリはシステムではなく、ゲーム性とストーリーだ」という宣言なのです。

これは何気にすごいことです。ドラゴンクエストシリーズは(例えばファイナルファンタジーシリーズとは違って)一貫して堀井雄二という「優しい独裁者」を中心とした開発体制をとり、それ故に作家性が大きいタイトルではあります。これまでも、ドラクエはストーリー面で多くのユーザーの記憶に残るイベントを作ってきました。ですが、同時に「ゲームといえば、ドラクエしか遊ばない」というユーザーが多数いるほど他のゲームに比べてたくさん売れるゲームであることから、どうしても保守的にならざるを得ない面を持っています。少なくとも「勇者になって、魔王を倒す」という柱に手を入れたり、それをかすませるほどのテーマ性を入れたり(そうしたら、ゲームになれていないユーザーは目的を見失ってしまう・・・)はできないということなのです。

それでいて、「今回はシステムで楽しませるのではなく、ストーリーで楽しませる。そのためのメディアとして違うハードに違うゲームシステムを用意する」と宣言したわけですから、これはシナリオ的にはかなり高いハードルです。ドラゴンクエストとしての親切さ、キュートなポップさを維持したままで、2017年の娯楽として「楽しめるストーリー」を提供できるのか。それが、DQ11の評価の中軸になることは明らかです。

というわけで、まあ、発売からいろいろな感想があるだろうし、批判も多く聞かれましたけど、「システムが古くさい」とか「新鮮味に欠ける」なんてことはもう百も承知でやっているだろうからまったくもって的外れ。いや、感想はいいんですよ。「自分にはあわないなー」とか「あえて私がやるようなものでもないなー」というのはたくさんゲームを遊んでいる人ほどあるだろうと思います。

でもそれは年間100冊レベルのホンスキー星人が本屋大賞受賞作に「このジャンルだったらもっと良い作品がいっぱいあるよ、○○とか」とか「展開に意外性もないし、読みやすくて、まあまあ面白いんだけど、後に残る感動がないよね」とかいっているのと同じで、ドラクエに求めたって仕方が無い、特にDQ11に言ってもしかたがないことなわけです。DQ11が挑戦しようとしていること、達成しようとしていることはそこにはないからです。

じゃあ、それを踏まえてお前はDQ11はどうだったと思うのってことになるんですが、よく出来ていると感じました。特にストーリーに関しては非常に良かった。1つ1つのエピソードはそれほど特筆すべきものでもないんですけど、全体の構成はこれは凄いなと。おそらくこのストーリーの良さは、PS4でも3DSでも十分に味わえるはず。いや、言っても「本屋大賞」レベルですよ。人生を変える1冊とか、感動で読了後に口もきけないとかそんなレベルじゃないです。でも、ちゃんと求められて「本屋大賞」を取るとか、普通できません。「本屋大賞」を取るレベルの作家は、本質的にはあのクオリティの作品をコンスタントにつくることが出来る人ばかりだと思うので、受賞作って極端に凄い本ってわけではないですけど、受賞できる作家って日本でよくて数十人レベルです。そのレベルのストーリーをゲーム、それもドラゴンクエストという制約の中でやってのけたこと、そしてそこには「ゲームならでは」のことをメタレベルできちんと盛り込んでいることは本当に凄いし、堀井雄二さんとシナリオチームは素晴らしい仕事をしたな、期待に応えたなと、賞賛を送りたいです。

と、ここまでがDQ11を遊んでいない人に向けた、「DQ11ってなんなのか」という解説です。昔、ドラクエを遊んだことがあって、でも最近はすっかりゲームは遊んでないけど、「ドラクエなら私にも楽しめるかも」と思っている大人の皆さん。安心して下さい。あなたのためのゲームです。年に何本もゲームを買って、自分の中に「最新のゲーム」に対する羅針盤をお持ちの皆さん。こういう感じなので、「あ、それならいいな」と感じるのであればやらなくていいと思います。

じゃあ、どんなストーリーなのよ・・・というのは書きたくない。いや、書きたいけどやってない人には読んで欲しくない。つまり、ゲーム性に重きを置いていないゲームなので、ネタバレしちゃうとぐっと魅力が落ちるんですよ、DQ11は。というわけで、ネタバレ全開の感想はまた機会を別にして書きたいと思います。とりあえず、言いたかったのはDQ11はかなりの挑戦作で、やつらは成し遂げてるぞってことです、はい。

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