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ドリーム(Hidden Figures)

パンフレットを読んだんですが、脚本の方のお婆様が実際にNASAで働いていたそうなんですが、当時のことを聞いても「私の頃には、もうこんな差別はなくなっていたから、わからない」と仰ったそうです。そんな昔の話です。

道徳の授業でアパルトヘイトについて習ったり、英語の授業でキング牧師の有名な演説を覚えさせられたりしたのも、はるか30年近く前のこと。なので、バスの席が決まっていたり、白人と有色人種でトイレが違ったりという話で驚きはしないものの、ちょっとクラクラする感覚はあります。

こんな差別がまかり通っていた時代があったとは、もう信じられないぐらいの気持ちです。米国に黒人のスーパースターはあらゆる分野にいて、単純に黒人に憧れを抱いている白人のアメリカ人はたくさんいるでしょうし、素直な感覚として黒人差別というものを実感できないアメリカ人は多数いると思います。

じゃあ、問題は解決したのか。もうなくなっちゃったのかというと、いやー、どうなんだろう。ほんと、どうなんだろう。何がどうなっちゃったんだろう。誰が誰を差別しているんだろう。劇中で主人公のうちの一人の管理職昇進の願いを「規則だから」とまったく受け入れない白人の女性管理職が「誤解しないでね。私に偏見はないわ」と言い、主人公が「あなたがそう思いこんでいることは知っています」と応える。 この台詞は重いです。

というようなことを考えさせられますが、まあ、この主人公の女性3人組はいろいろ辛いこともあるけどそれに立ち向かいながら、そして明るく生きていってます。差別という理不尽なものと戦っている辛さはありますけども、私たちも大概理不尽なものと戦ったり、戦わずに回避したり、愚痴ったり、ブチ切れたりしながら生きているわけで、普通に共感できるし、勇気づけられるし、楽しい気持ちになれるお仕事映画です。普通におすすめです。

さて、私としてはもうひとつの注目点はなんといってもIBMでございまして。

NASAのマーキュリー計画を支えた人々とIBMメインフレーム

それまでたくさんの女性を雇って行っていた計算を、代わりにやってくれる文明の利器。IBM 7090 DPS。劇中では、現代(?)でコピー機を「ゼロックス」、ポータブルオーディオを「ウォークマン」と呼ぶように、コンピュータを指して「IBM」と呼ばれます。マシンルームの扉より筐体がデカくて扉ぶち壊したり、「動くまで金払わねえからな」と言われていたり、「昨日と計算結果が違うじゃねえか」と言われていたりと大活躍です。

7090というと、今も売り続けられているIBMメインフレームの直接のご先祖様、System/360の直前の世代の機械で、LISPでおなじみのcar, cdrの由来であるアーキテクチャを持つIBM 704の後継(704→709→7090らしい)です。1959年の発売で、S/360が出るのが64年です。360はお仕事に使えるのがウリみたいなところがあったらしいので、こっちはおそらくは純粋に科学技術計算が求められているマシンですね。

ディスプレイなんてもちろん無くて、パンチカードで入力して、結果はプリンターから出てくる。今考えるとなんじゃいというような機械ですが、これが現場をガンガン変えていく様子がちらっと見られるのがマニア的には楽しい映画です。まあ、映画のクライマックスでは「金属の塊より、人間を信じるよ」ってdisられちゃうんですけどね(笑)。

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