F1GP 2016#21 アブダビGP
ついに2016年のチャンピオンが決定しました。ニコ・ロズベルグ、おめでとう!
とはいえ、やはりハミルトンは凄いなと印象づけられる終盤戦でした。マレーシアGPで絶望的なエンジンブローがあって、ハミルトンはいったんはチャンピオンシップを失うことを受け入れたんだと思います。しかし、その状態から「それでもできることはすべてやるんだ」と思いを新たにして最後の4戦。すべて勝つ以外にチャンスはない状況でほんとにすべて勝つというのは並大抵のことではありません。やはり、この人は凄い。
そしてそれができてしまうチームメイトに対して、「すべて2位ならチャンピオン」という条件を成し遂げるロズベルグの精神力も十分にチャンピオンに値します。ハミルトンとロズベルグではやはりハミルトンの方が抜きん出た力を持っていることはもう証明されたことです。しかし、純粋な能力で劣るからといってチャンピオンになってはいけないわけではありません。むしろ、能力で劣るにも関わらず、訪れた千載一遇のチャンスを逃さずに栄冠を勝ち取ったなら、そんなに素敵なドラマはでしょう?もちろん、年間21戦も戦っているのだから、1度や2度の幸運ではダメなわけです。フロックでのチャンピオンはありえない。ロズベルグはF1で歴代2位の優勝回数を誇るグレートドライバーとまったく同じクルマに乗って、3回に1回はチャンピオンになれるほど凄いドライバーです。これは皮肉でもなんでもなく。
そして、この最終戦の終盤に2位でついてくるロズベルグの順位を下げるべく故意のペースダウンをするハミルトンの走りを見て、「ああ、やはり、チャンピオンになるドライバーは違うなあ」と思いました。自分が勝つためならばたとえチームからの信頼を失おうとも、子供の頃からの友情を失おうとも何とも思わない。勝つことが人生の目的になっているんです。アイルトン・セナもミハエル・シューマッハもそうでした。そう思っているからこそ、すべてを捧げて非人間的なまでの努力もでき、無類の強さを身につけることが出来たわけですから。
そもそも、全く同じ状況で後ろを走っているのがロズベルグではなく、セナやシューマッハ、ハミルトン自身だったらどうなっていたか。簡単です。このような戦いを仕掛けられたらすぐに頭のモードが切り替わり、もっともスローなコーナーでまったく曲がれない速度で強引にインに飛び込み、もろともリタイアしてチャンピオンを決めていたでしょう。そんなシーンを何度も見ました!だから、ハミルトンのスローダウン戦略はロズベルグ相手だから成立しているだけで、本来はあり得ない戦い方なのです。
ロズベルグのチャンピオンは、そんなことをしないまともな男がまともじゃない男から奪ったという意味で価値があります。デイビット・クルサードやマーク・ウェバー、ルーベンス・バリチェロやジャン・アレジといった複数回優勝するだけの力があり評価も得ていながらチャンピオンになれなかった偉大なドライバーたちは、みんな真っ当な人間でした。F1のファンは伝説のチャンピオンたちももちろん好きですが、速く勇気があり素敵な1流ドライバーたちももちろん尊敬しています。その中の一人が、いろいろありましたが現役でありながらすでに伝説のドライバーとなった男を同じマシンで破ったんだから、こんなに痛快なことはないのです。
よくやったぞ、ロズベルグ。あなたは偉大なドライバーの中でも、最速の男の一人であり、最高にナイスガイだ。賞賛に値する。おめでとう!
そして、ハミルトン。あなたは本当に伝説のチャンピオンに相応しいドライバーへと成長した。現役最強ドライバーは、アロンソでも無くベッテルでも無く、ルイス・ハミルトン。この男、おそるべし。
さて、来年は長かった09規定マシンががらっと姿を変えます。あんまりレースが面白くなる方向だとも思えないんですが、変わることは間違いない。さて、どこのチームが真っ先に新しい環境の正解の位置を突き止めるのか。2009年のホンダ/ブラウンGPのような番狂わせはあり得るのか。エイドリアン・ニューウェイはいまだに魔法使いなのか。お家騒動のマクラーレンにホンダを満足させる車は作れるのか。フェラーリはまたお家騒動なのか。長かったエクレストン時代はいよいよ終わりを告げるのか。
2月のテスト開始まで、短いシーズンオフですが、皆様、お疲れ様でした。
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