シン・ゴジラを観てきました(ネタバレなし)
観てきました
FFXVの映画を観たときの予告で、下町の風景から見上げるとゴジラの尻尾がぶわっと上を横切るカットが出まして。それを見た瞬間、「ああ、庵野さんは、やっぱりすごい」と思いました。そのカットの見せ方だけで全然違う。
いやまあ、私はゴジラ映画を最初から最後まで通して一度もちゃんと見たことないんですけどね。でも、ちゃんと見たことがない理由って、どうしても途中で「なんでやねん」と思ってしまうからなんですよ。
で、すれっからしのオタクは「だが、それがいい」になってしまうか、「俺が作ったらゴジラはちゃんとしてやる。少なくともスーパーXはありえん」と妄想を積み上げまくるか、どちらかになります。もちろん、この映画は完全に後者であり、SF大会とかで夜な夜な「だから、ホントにゴジラが現れたらさあ、自衛隊は災害派遣になるんだから、そう簡単に撃てるわけないわけで・・・」と話している奴が、完璧な形で映画になってます。
なっていて、もちろん私はまったく怪獣映画の素養がないですけど、そういう先輩オタクの妄想激論を「うひひひ」と楽しく聞いているような奴なわけで、この映画はたまんないです。最高です。最後まで「ふぉぉぉ」と雄叫びを(心の中で)上げながら観ていたんですが、でも、普通の人がコレを観て面白いのか、ゴジラファンがコレをみて面白いのかはよくわかりません。
よく言われますよね。最初のゴジラは例えば伊勢湾台風のような巨大災害や、原爆などの大量破壊兵器の圧倒的な暴力と、それに立ち向かう人類の話だったと。でも、ゴジラが人気キャラクターになってしまってからは、多くの人はゴジラに感情移入をして映画を観ていたんだと思うのです。ゴジラがそのすさまじい力でいろんなものをぶっ壊す。そこで何百人、何千人が死んでるだろうということは、まあ、映画なんだからさておいて、その圧倒的な力に対するあこがれのようなもの、あるいは、日常を破壊してくれる爽快感のようなものを求めていて、だからこそ、往時、ゴジラは大ヒットしたんだと思うんですね。
そういう非日常感や爽快感はこの映画には全くありません。あくまでゴジラは「大災害」として完全に21世紀の日本の現実として描かれますから、想起されるのは東日本大震災で津波に押し流される人々であり、福島第二原子力発電所の事故による汚染で住むところを失う人々であり、都市機能の麻痺した東京であたりまえの日常が失われれば自分は家に帰ることすら出来ないんだということを思い知った人々の姿です。いや、なんせご存じの通り、ゴジラさんてば原子力駆動なんで、やっつけると後は除染がいるんですよ。マジデ。なんかですね、画面から受ける気持ちが、あのとき、津波の映像を見ていたときと変わらないんですよね。こう、呆然として、辛くて、そして、やっぱ現実だとは思えなくて。
というかですね、むしろそこがこの映画の貴重なところかもしれなくて、日本人はいくら戦争映画を作っても始終、どこかと戦争しているアメリカさんや、国民のほとんどが一度は銃を持つ韓国さんにかなわないわけですよ、たぶん。しかし、今回、災害映画を作らせたら圧倒的なリアリティが出せると言うことがわかりました。これ、外人がみたらそのリアリティにびっくりするか、逆にリアリティが持てなくて避難のバスが高速道路を埋め尽くす絵で笑っちゃうか、どちらかなんじゃないかな。日本人はまったく笑い事じゃないことをかなり現実的にわかっているわけですけど。
と、いうわけで、今回のゴジラには、基本的に全く超法規的な手続きは起こりませんし、全く超兵器は出てきません。そして、事態は国際問題化し(そりゃそうだわ。いままでのゴジラシリーズでたぶんそんな展開ないと思いますけど、そりゃそうです)、日本は破滅の一歩手前まで追い詰められます。絶体絶命です。そこで、役人も軍人も、にぎりめし食って机に突っ伏して寝て(これも外人にはまったく理解できないでしょうな・・・)、起死回生の手を生み出し、実行します。うん、考えるだけじゃなくて、どうやれば出来るかを考えるのが政治だからね。
まあ、凄い映画です。良くも悪くも、「日本」が「ゴジラ」と戦う映画です。映画の前半はとにかく会議ばっかりしてます。出現した巨大生物に対してのエラい人の対策指示も、「えっと、今の、どこの役所への指示です?」と受ける側も呆然ですが、粛々と手続きはしなければならないので、会議、議論、お仕事、会議、議論、お仕事の連続です。でも、それがまさに戦いなワケです。いや、自衛隊はホントに火気を使って戦いますけど。そんな感じで、かなり怪獣映画という趣は薄いですが、面白い映画であることは間違いないので皆様にもおすすめします。うむー。
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