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何も起きなかったル・マン

今年もル・マン24時間レースが終わって、夏がきました。

ポルシェの圧勝に終わった、今年のル・マン。とにかく、ポルシェは壊れませんでした。こんなに壊れないル・マンを見たのは初めてです。

昔々(といっても、私が知ってるのはポルシェ・メルセデス・トヨタ・日産が激しくGT1カテゴリーで争った90年代ですが)、ル・マンというといかに壊さないように走るかの勝負でした。普通に24時間走らせると壊れてしまうレーシングカーを、壊れないぎりぎりで走るのがドライバーに求められる技術でした。

4大ワークスの激闘が華々しく散った後の2000年代ワークス不在の時代をアウディが支え、昨年までずっと勝ち続けてきました。この時代のアウディ(といっても、チームはポルシェワークスを支えていたチーム・ヨーストなのですが)の戦略は、「壊れてもあっという間に直す」です。

ぶつけても致命的には壊れない構造と、ピットに帰ってきてくれさえすれば、どこが壊れていようがあっという間に直すメカニックたちが連戦連勝を実現し、トム・クリステンセンのル・マン9勝という唖然とするような記録を作り出しました。21世紀になってからアウディはたった2回しか負けてません。

さて、ル・マンのレギュレーションがハイブリッドになり、ハイブリットには一言あるトヨタさんが参戦するものの、速くなかったり、速いけど壊れたりで勝てないまま、ポルシェも去年からやってきて、今年からは日産もやってくるという、20年前のあの激闘再び・・・というのが、ここ数年の流れ。

ポルシェは去年の参戦初年度から結構速かったんですが、いいタマ入れ立ての2年目トヨタには勝てず、アウディは地道アップデートで勝負できず、でも、ル・マンは勝っちゃってトヨタさん涙目。シリーズチャンピオンは取ったものの、今年、忘れ物を取りに行くぞ・・・と意気込みだけはあったんですが。

もともと速かったポルシェが本領を発揮しまくり、 爆速。アウディも大幅にアップデートして速さを増したもののポルシェには一歩及ばず。トヨタは去年、壊れた反省から信頼性重視のアップデートにしたら、他が速すぎて話にならない・・・というのが今年の流れ。ただ、WECのここまでの2戦はアウディが総合力、特に極まったドライバーのワザマエで大健闘です。

さて、この流れで行くと爆速のポルシェがぶっ飛ばすものの、数時間ごとにトラブルがでて、10分止まり、また15分止まり・・・しているうちにアウディといい勝負をする・・・というのが、戦前の予想だったんですが。

まったく壊れませんでした

ポルシェ、アウディ、トヨタのどこも壊れませんでした。

いや、なんだろう。壊れつつ、直しつつ、総合力で戦っていくのが耐久レースなんと違うの?まったく壊れずに50分のスティントを26回やっただけだと、それは単にF1レースを13戦連続で見たようなもので、なんだか期待していたものと違うんですけど・・・。

あ、ニッサンは壊れてました。これでもかと壊れてましたが、そもそもLMP2より遅いので居ても居なくても同じでした。何をしに来た・・・。せめて、壊れるんなら速く走れよ。

しかし、壊れないレースはつまらないですなあ・・・。人もマシンもぎりぎりで頑張る様を見るのが素敵なんだと思うんですけど、どうもね。

マシンが壊れなくなった理由は、もちろん20年前に比べて製造技術が進歩したってこともあるんですけど、経費節減のためにコンポーネントの耐久性を引き上げているからです。昔、レーシングエンジンといえばレースを走りきると同時にブローするのが理想なんていわれたものですが、今のF1では年間19戦を4機のエンジンで戦います。そりゃ、壊れるわけがない(いや、F1はけっこう壊れてますけど・・・)。

もっとも、今年のポルシェが壊れなかったのは、実際、他メーカーと差が付きすぎたので、マージンを取って走っていたからなんでしょうね。限界ぎりぎりまで使って走っていたら、やっぱり何かしらのトラブルは出たはず。トヨタは見込み違いで悔しい思いをしているでしょうな。なんせ、決勝24時間を全部予選タイムで走っても、勝てないんだから。

とはいえ、相変わらず他メーカーはどこも持ってきている3台目を持ってこないトヨタの本気度は疑われてますけど。今年は解説陣も辛辣でしたよ。由良さんはトヨタを「去年の車で勝てるわけないでしょ」、ニッサンを「遅すぎ。他メーカーに失礼だよ」とばっさり。長谷見さんも「来年3台目を持ってこないのなら、出なくていいと思う」。うーん、厳しい。しかし、来年にはWRCもやるわけで、どうなのかなあ、トヨタ。

確かにフロントの造形を見比べると、トヨタTS040とポルシェ919、アウディR18では世代がひとつ違う感じです。フロントのフロア面から面一でボンネットがあるTS040に比べて919やR18はそこにフロントウィングがあり、そこで整流された空気がフロントタイヤ後ろへのトンネルへきっちり導かれてるんですよね。あたかもマクラーレンMP4/6とウィリアムズFW-14を並べたかのような、同時に参戦したマシンだけど世代がくっきり違う感じがあります。うーん、まあ、これじゃ勝てないかな。

もっとも、完勝のポルシェも総合優勝したのはレギュラーじゃない3台目のマシンで、ル・マンを初めて走るニコ・ヒュルケンベルグ(前の週はカナダでF1に乗ってました)が勝っちゃったのは、レギュラーのメンツからしたら面白くないのかも(笑)。

しかしですねー、今年はとにかく日本メーカーが世界のレースで赤っ恥をかき続けてる年でして、トヨタはWECでこてんぱんにやられ、ホンダはF1でビリを走り、インディ500でシボレーに完敗、ニッサンはル・マンで鈍亀・・・といいところなしです。

巡り合わせっていえばそれもあるんでしょうが、どうも日本のメーカー各社のレースへの取り組み方から「本気」を感じないんですよね。何がどうしてでも勝ちたいという狂った感情が読み取れません。あたかも「必要」だからレースをしているような。何が何でもやってやるという気迫を感じません。そう、まるで日本メーカー全部が「中嶋一貴」になったかのような。なんだかなー。いや、一貴はあれが個性だからいいんだけど、チーム全体が「一貴」になっちゃいかんわけですよ。

うーん・・・と、なんだかもやもやした気持ちになったル・マンなのです。何はともあれ、ポルシェの17年ぶりの17回目の優勝については、素直におめでとうです。素晴らしい!

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