風立ちぬ
遅ればせながら、「風立ちぬ」を観てきました。
どんな映画かの説明はいいですよね?感想はネタバレなので、気をつけて下さい。
見終わった感想は、「散漫な映画だな」でした。感動するところも別にないです。最後は、一種の難病ものなのでお涙はちょうだい出来そうな感じですが、まあ、どうでもいいっす。
ちなみに岡田斗司夫さんは今回の登場人物の人物造形をすごく褒めていて、で、私も岡田さんの演出の読みは理解できるし、その通りだと思うんです。二郎は言うに及ばず、菜穂子もまあ、褒められた人じゃないです。そういう演出はきちっとされていて、二人の人物がきっちり描かれていたのは良い所だと思います。
思うんですが、結局、二郎ってこの映画で語られている少年時代から九試単戦の初飛行の間までで特に何の葛藤も成長もしないんです。もちろん、彼なりの挫折はある。七試単戦の飛行試験に失敗して軽井沢にやってくるわけですし。奥さん失うわけですし。でも、失敗したと言っても首になるわけでもなく、軽井沢行きですからね、この人(笑)。
飛行機が好き、鯖が好き、牛が好き、菜穂子が好き。物事に対して、「好き」だとしか言わない。「正しい」とか「役に立つ」とか興味ない。夢と妄想の中に生きていて、そのままラストまで変わらない。そのことによる罰は受けるんだけども、でも、この人、そんなに気にしない(笑)。
相方の本庄君はそういうこと考えるんですな。「俺達の作る飛行機にかかる費用で、全国の子供にシベリアを食わせてやれるんだ」。二郎、ぽかーん。怪しい外人も言います。「大衆の犠牲の上に、美しいピラミッドは建つ。ピラミッドがある世界とない世界、どちらがいい?」。二郎、「ピラミッドは美しいです」ぼよーん。なんだろう。庵野さんの浮世離れした演技はまさにぴったりでした。
菜穂子も結局のところ、自分のことしか考えてません。静養のために来た避暑地で少女の頃の王子様と運命の再会をして、そのまま「王子様」に一直線。王子様はオタクだったのであんまりかまってもらえませんが、その分、落とすのは簡単でした。なんせ不治の病なので、少々の我儘は聞いてもらえます。幸せかと問われればそうだとは言えない儚い人生ですが、精一杯生きてます。
で、この二人の生き様や関わりに何かドラマたりえるものがあるかっていうと・・・、うーん、どうなの?
というわけで、なんとも話をどこに向かわせたいのか要領を得ない映画でした。ドイツ行った話とか、どこへどう繋がるんでしょうか。もっとも、おそらく今回も脚本なし、絵コンテ連載書き送り作画なんでしょうから、綿密なストーリーを最初から期待しちゃいけないんですけどね。宮崎アニメは宮崎さんの頭の中に蠢く妄想のほとばしりこそが見どころで、今回も夢のシーンは文句なく素晴らしくてそこだけずーっと観ていたい感じでした。
というわけで、なんにも盛り上がらない、子供はまったく喜ばない、ただ変な人が兵器を作る話なんですが、なんといいますか、むしろそこに絞っていただけたらモデルグラフィックスの「雑想ノート」のファンとしては全部OKなわけで(笑)、でもそんな映画をジブリが作るのは無理だから、これはこれでいいのかなと、そんなふうに思います。
でも、宮崎さんももう十分に働いたんだから、後は押井さんの「宮本武蔵」とか「ミニパト」とか「女立喰師」みたいなものをちまちま作っては1本1万円とかで配信して暮らしてればいいんじゃないかと思います。思いますが、でも、実は宮崎さんは二郎と違ってそうは出来ないタイプなのかなァ
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