ホンダF1第4期が掴み取るのは何か
ホンダが正式にF1復帰、いやF1参戦を発表しました。第3期は休止ではなく、撤退だったので、復帰ではなく参戦ということばを使っているそうです。
全世界に何億人といるF1ファンの一人として、あるいは、モータースポーツファンの日本人として、素直にうれしいことです。私は、もはやF1は真っ当な日本企業が参加するにはやくざ過ぎて意味もないと思っていますが、ホンダはある意味でフェラーリと同じ「レースをするために車を売って金を稼ぐ」ようなやくざなDNAの会社ですから問題ありません(笑)。
ただ、第2期の活動休止から第3期の撤退、そして日本全体がF1から撤退した2013年シーズンまでを見てきた私としては、第4期の活動がこんなに早く始まることに複雑な思いがあります。
それはつまり、第3期の「失敗」とはなんだったのかということです。
第3期のホンダF1の活動は非常に不明瞭なものでした。端的に言ってしまえば、原因はリーダーシップの欠如です。結局、第3期を通じてのホンダの顔が見えないままでした。後にフェラーリに行く後藤さんなど、第2期のホンダは顔が見えました。ホンダ本体が活動を休止している期間の無限の坂井リーダーや、トヨタの木下代表など、日本の組織でも顔が見えるチームが数多くあります。
しかし、第3期のホンダは、顔が見えません。結果、何がしたいのか最初から最後までわからないままでした。和田さんの時代に一瞬よくなりましたが、それを除けばロス・ブラウンが来るまで、ホンダはずっと迷走していました。その間、大きな口は叩くが実現能力のない調子のいい外人(F1の世界には、こういう輩がいっぱいいます)に、だまされ続けただけでした。
現場の人の能力や頑張りを疑うものではありません。ホンダは今でもすぐに世界と戦えるだけの能力を持っていると信じていますし、それはある意味でブラウンGPが証明しました。しかし、逆に言えば、開幕前テストを1日やっただけで「開幕戦はブラウンが勝つわ」とわかるだけの車を持っていたのにF1から撤退する判断をするなんて、もう何かが間違っているとしか思えません。
ホンダの技術は車体技術も含めて第3期で証明されたといっていいと思います。しかし一方では、オールホンダでの参戦から、一転してエンジンサプライヤーに変わってしまった活動再開時の混乱、主体性のないチーム運営となし崩しのオールホンダ体制への移行、スポンサー活動を放棄した意味不明なアースカラーのマシン、圧勝できる車を手放しての突然の撤退まで、ホンダのマネージメントは最低だということを8年かかって証明しつづけたのも第3期でした。そして、それはそのまま輝きを失って燻っていく日本の姿そのものだったとも言えるでしょう。
ホンダは確かに私たちの期待を裏切りました。本田宗一郎を失ってしばらくの間のホンダは「こんなときオヤジさんならどうするか」とつぶやくだけで乗り切ってこれたのでしょうが、21世紀のホンダは誰がものを決めているのかわからないサラリーマン組織で、司令官を欠いた実戦に適さないものでした。それはそのまま、毎年総理大臣を変えて状況に流されているだけの日本の姿であり、ホンダに対する苛立ちは、ただ自分たちへの苛立ちでした。
第4期は最初からマクラーレンとのジョイントとなります。マクラーレンの思惑ははっきりしています。エンジンメーカーがたったの3社(コスワースは入れなくていいよね^^;)だけになったF1でメルセデスのワークスエンジンを失ったマクラーレンにとって、新たにワークスエンジンの獲得するには他に選択肢がありません。多分に消極的な選択です。一方でホンダから見れば今のマクラーレンは知将マーティン・ウィットマーシュの元で健全な運営がされているまともなチームです。ホンダが組むには最適と言えます。
しかし、参戦が表明されても、指揮官の発表がありません。驚いたのは、参戦記者会見にマーティン・ウィットマーシュが来ていたことでしたが、あれではまるでホンダはウィットマーシュの指揮で動くみたいです。ホンダが全力でウィットマーシュの希望を叶える、それはそれでなんかうまくいきそうな気もしますが(笑)、第3期の忘れ物を取り返しにいくのであれば、それではダメです。本当の忘れ物はコース上の勝利ではなくて、「チームホンダ」としての活躍ストーリーだからです。
俺たちは新しいレギュレーションに対して、こういう思想で挑むんだ、こんな技術で勝つんだという構えが見たい。もちろん、最初から勝てなんていいません。むしろ、それでは面白くない。面白い技術を持ち込んで、バカにされて、磨き練り上げて、そして圧倒する。ホンダが見せるものはそうでなくてならない。
それを見せ付けたら、ホンダはF1をこう変えていきたいんだ、もっと素敵なF1はこうだ。ホンダが、鈴鹿が、日本が見たい、コミットしたいF1はこうなんだというものを発信して欲しい。バーニー・エクレストンだってあと10年生きるかどうかわかりません。エクレストン亡き後、ショーとしてのF1をどう運営していくかを決める場があれば、フェラーリの席の隣は当然、ホンダだろう。そう言われるだけの発言力とポジションを得ること。それが、世界一のエンジンを作り、世界一のシャシーを作りながら腐らせたホンダが次に成し遂げるべきことであり、ホンダがもっとも苦手な、まさにチャレンジといっていいだけの目標なのです。
すごい回生技術ですか?そんなの片手間でしょう?なんかもう秘密兵器もあるんでしょう?(笑)
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