バイバイF1、さよならジャパン
ロータス・チーム、グロージャンの来季残留を発表!(FMotorsports F1)
『KAMUI SUPPORT』終了、小林可夢偉F1残留断念へ(FMotorsports F1)
一部報道ではグロージャンに変わって可夢偉が来季のロータスのドライバーに採用されるのではないかと言われていましたが、やはりそんなことはなく、グロージャンの残留と、併せて可夢偉の来季のF1シート喪失が報告されました。
まあ、わかってました。ファンからの募金で2億円近いお金を集めたことは海外でも話題になったようですが、それでもロータスともなれば1億、2億のお金でどうこうなるものでもありません。ケータハムなら乗れたかもしれませんが、乗ったところで評価を下げるだけでしょう。また、考えてみれば3年連続でルノーエンジンがチャンピオンを獲っているのにフランス人ドライバーがいなくなるのは、それはそれでおかしいというものです。ん?シャルル・ピック?まだいるんですか?ケータハム・ルノーに移った?はあ。
というわけで、可夢偉は残念でした。しかし、中堅チームで資金を持ち込まずに3年乗り母国グランプリで表彰台に乗ったことは、これはかなりの達成です。これ以上を目指すにはトップチームへの移籍がどうしても必要ですが、それには単なる実力以上の何かが必要です。
現在、トップ5チームにいる10人がどうやってトップチーム入りしたかといえば・・・
- チームの育成ドライバーとしてジュニアチームで活躍(ベッテル)
- チームが弱小だったころからずっといる(ウェバー)
- マネージャーがチーム代表(アロンソ)
- マネージャーがチーム監督の息子(マッサ)
- スポンサーが世界一の金持ち(ペレス)
- 弱小チームで奇跡のチャンピオン獲得(バトン)
- 子供のころからチームの育成ドライバー(ハミルトン)
- 中堅チームで好成績(ロズベルグ)
- 同郷のチャンピオンの推薦(ライコネン)
- マネージャーがチーム代表(グロージャン)
・・・まあ、そういう世界なんですよ。誤解してほしくないんですが、この10人は全員が全員可夢偉と同じレベルか、可夢偉より優れたドライバーです。それでも、やはりロズベルグがドイツ人でなければメルセデスのドライバーにはならなかったでしょうし、グロージャンがフランス人でなければロータス(元ルノーチーム)のドライバーにはならなかったでしょう。
ですから、ここから先の可夢偉に必要なのはたかだか2億円の募金ではなく、日本全体がF1に強くコミットすることなんです。その昔、何人もの日本人ドライバーが「ホンダのおかげで乗ってる」だの「ジャパンマネーで乗ってる」だの言われましたが、F1の世界では当たり前のことです。むしろ、「なぜトヨタは日本人ドライバーを乗せないのか」と言われてました。「F1速報」誌の総集編で今宮さんは「メキシコのジャーナリストに『マクラーレンに行けたペレスと可夢偉と何が違ったのかと尋ねたら、『国力』という返事が返ってきた」と書いてます(笑)。
ただ、今のF1はあまりにも法外なお金がかかります。また、お金の使われ方がクリアではありません。まともな企業は相手にしなくなっています。F1自体を事業としているトップのコンストラクター以外は誰もハッピーではありません。もちろん、バーニーを除きますが。ルノーもメルセデスも参戦継続に関して社内に議論はあるようです。ルノーはワークス参戦を取りやめてしまいましたし、メルセデスはノルベルト・ハウグを更迭しました。F1のエンジンは事実上、3種類だけになっていますし、2014年からの新レギュレーションで参戦拡大が望めるのかも微妙です。今、F1にお金を出しているのは多くは新興国で、F1に関わることでプレゼンスを得られる人たちです。しかし、日本にはもう「F1に関わって箔をつける」必要がある人たちがいないんですよね。
言ってみれば、日本にとってF1はオワコンなのです。
そして、F1にとっても可夢偉がシートを喪失したことによって日本の存在感は急激に薄くなるでしょう。ホンダと中嶋悟さんが道を切り開き、F1ブームに沸いたあのころからちょうど25年。日本の冠スポンサーも、日本のエンジンも、日本のタイヤもなくなって、ついに日本人ドライバーも絶えました。F1界にとって、日本はただ年に1度グランプリが開かれるだけの場所になったのです。これは日本のモータースポーツ界にとって、ただ可夢偉がシートを失ったというだけに留まらない、非常に大きな出来事です。
時代が変わったといえば、それだけのことかも知れませんが。ただ、この先もF1で日本人が活躍する姿を見たいのであれば、話はグロージャンやペレスと比べて可夢偉のパフォーマンスがどうとか、パーソナルスポンサーがどうとかじゃない、可夢偉がいるレベルはそういうレベルの話ではないということは理解しておくべきことです。
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