日本の酔狂を見せ付けるために小林可夢偉に募金した
ブラジルGPでグティエレスのザウバー加入が発表され、小林可夢偉のザウバー離脱が決まりました。残っているシートを考えると、可夢偉が来期、F1シートを得られる可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。
そもそも可夢偉はトヨタのドライバーですから、トヨタのF1撤退に伴って可夢偉のF1ドライブは2戦で終わってしまうはずでした。そのたった2戦のドライブでザウバーに見込まれて3年間F1をドライブし、ついには日本GPで表彰台に上がったということは、可夢偉が実力も幸運も兼ね備えた素晴らしいドライバーであることを示しています。
次のステップはこの3年間の間に資金に余裕のあるトップチームに移籍することでしたが、トップチームのシートはこの3年の間、ほとんど空きませんでした。レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、メルセデスはこの3年間ドライバーの移動はなく、ロータスは資金面でトップといえる状態にありませんでした。今年、ミハエル・シューマッハの引退に伴いシートが開きました。これがほとんど唯一のチャンスでしたが、このシート争いではペレスに敗れてしまいました。たった1年の結果で、しかも印象レースのようなものなので、これがペレスが可夢偉よりよいドライバーであることを示しているものではありませんが、仕方ありません。1年だけの結果を取り出せば、世界最強のドライバーであるアロンソだって新人ドライバー(といっても後のチャンピオンであるハミルトンですが)に負けることもあるし、最速を誇ったライコネンだってマッサに負けることもあるわけです。トップチームのシートに空きができた今年に印象的な成績を上げられなかったのは不運ですが、この世界、F1に乗るレベルのドライバーはみーんな凄いドライバーなわけで、半分は運で半分はお金なわけです。しょうがないです。アロンソだってミナルディで燻っていた可能性もあるし、ベッテルだってトロロッソで優勝した年にDCが引退したからレッドブルに乗っているわけです(もちろん、ベッテルの存在がDCの引退させたとも言えるわけですが)。
そんなわけで、来年の可夢偉は日本で「チャンピオン」一貴くんと戦ってくれればいいかなーと思ってます。F1で走れないからといって駄目ってことはないし、逆に日本がイケイケだった時代にF1に乗ったドライバーがみんな本山、道上、寿一より上だったかといえばそんなわけないですからね。日本のレースはいろいろ問題も含んでいますが、ドライバーの戦いという意味では高レベルかつ公正です。とにかく、来年、「走る場所がない」なんてことがないようにしてほしいです。あわよくば2014年のエンジン改定でホンダあたりがF1に復帰して日本人ドライバーを乗せてほしいですが、それは可夢偉ではないような気がしますしね。個人的には塚越にチャンスをあげたいかなあ。こういうのは巡りあわせなのでしょうがないです。
さて、こんなニュースが入りました。
小林可夢偉、F1活動資金の募金サイト「KAMUI SUPPORT」を開設
遅いよ。これって夏の時点で必要だったんじゃないんですか。もう手遅れでしょう。今から資金を集めても間に合いませんよ。
しかし、来年の可夢偉のシートに結びつくかどうかは別にして、今のF1の状況を考えると、ドライバーを支えるにはこれしか道はありません。前も書きましたが、はっきりいって今のF1にまともな企業がスポンサーにつく意義はありません。会社というのは営利を追求しなければいけませんが、技術系のスポンサードでない限りF1に投資をして意味のある見返りを得ることは不可能です。むしりとられて終わるだけです。文化的な意義としても日本人がF1に金を出す意味なんてないですし、レース界を考えるなら日本のレースに投資する方がだいぶマシです。可夢偉のパーソナルスポンサーになるにしても、「可夢偉のファンだから○○を買う」という行動が成立できるには日本の社会は多様化しすぎました。それでも日本人ドライバーを見たいのであれば、直接ファンが支える形しかありませんし、逆に言えばそれが成立する可能性があるのは日本ぐらいです。
伝説の二流F1ドライバー(もちろん褒めてます)、タキ・イノウエさんがtwitterで言ったようにある意味でこれは詐欺かもしれません。確かにこのサイトに書いてあることは嘘だからです。
この「KAMUI SUPPORT」募金の収益は、すべて小林可夢偉の(シート獲得に向けての)活動費用に充てさせて頂きます。
ただ、チームの情勢などにより2013年のレースシートを確約できるものではございません。それをご承知の上でご協力いただけたらと思います。
いや、そりゃ無理でしょう。たとえばこのサイトが1000万円集めたとして、それが何かの役に立つかといわれれば立たないんですから。最低でも1億ないと。で、駄目だったとしても使っちゃうわけでしょ?もし、これで乗れなかったら赤十字に寄付しますとか、日本のレース界で使いますとかにしても、集める段階でそう言っておかないとまずいです。
しかし、我が家では妻の分も含めて二口寄付しました。なぜか。それは、今こそパフォーマンスの時だからです。すべての行為にその見返りがあるわけではないのは当然です。がんばっても駄目なこともあるのです。それでもいざとなったら日本のモータースポーツファンは一人のF1ドライバーを乗せるためにこれだけの力があるんだぜと形にしてみせるしかない。
一貴、可夢偉の二人のドライバーは残念なことに「日本人ドライバーを乗せても資金的なメリットはまったくない」ということを証明してしまったのです。まあ、トヨタの後ろ盾で乗っていた一貴はたぶんウィリアムズにエンジンフィーの減額というメリットをもたらしていたんじゃないかという気がしますが、可夢偉は何にもありません。そして、その可夢偉があれだけの活躍をし、あれだけの熱狂をさせながら、なーんにも資金的なメリットをザウバーにもたらさなかったというのは、かなりショッキングな出来事のはずです。
「金でシートを得るのがドライバーじゃない」。そういうのは簡単です。しかし、F1はそうではないルールで動いています。それは昨日今日始まったことではなく、ここ20年の間、程度の差はあれ、ずっとそうだったんです。それがいいことだとは思いません。そんなF1に失望している面もあります。F1なんかから日本は手を引いて、国内レースに専念する。それでもいいと思っています。しかし、最後の試みとして、やってみてもいいじゃないですか。
もう一度書きます。この募金をすることは金をドブに捨てることです。だから、自分としては2口が精一杯という気持ちもあります。いくらなんでもあんまりたくさんのお金をドブに捨てるのは、お金に申し訳ない。私だってほしいものもあるし、生活もあります。しかし、今、捨てないでいつ捨てるんだという気持ちが勝ったので、募金しました。震災以降、日本が大変なときにこんなことを言うのは心苦しい。しかし、ここまで書いたことはF1ファンなら同意してもらえるんじゃないですか。
今こそ、ドブめがけてお金を投げ入れる様を見せる時です。
みんなでかっこよくやってみませんか。F1から我々が必要とされる日をもう一度取り戻すために。
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Comments
>最低でも1億ないと
2012年11月30日で1億2700万円を超えました。
Posted by: ひまじん | December 01, 2012 10:03 PM