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"葵" ヒカルが地球にいたころ・・・1/野村美月

"文学少女"シリーズの野村美月の新シリーズ。

タイトルをみたときには、「SFなの?」と思いましたが、じぇんじぇんそんなことはありません。やってることはあんまり"文学少女"と変わらないんですが、今回の「ネタ本」は源氏物語です。んあー、源氏物語ねー。林望先生の現代語訳の「源氏物語」も1巻を読んでそのまま放置だなあ。面白いんですか、源氏物語って・・・

さて、本歌取りの名手の野村美月さんですから源氏物語が面白いかどうかとこの本が面白いかの間にはあんまり関係はなく、もちろんこの本は面白いのです。

光源氏になぞられるヒカルは、どんな女の子にもやさしくせずにはいられず、どんな女の子からも好かれ、そして本人も女の子大好きという素敵にビョーキな高校生ですが、物語の冒頭で事故死してしまいます。主人公の女っ気ゼロ、ヤンキー成分含有の是光はいいとこのおぼっちゃま・おじょうちゃまばっかりの高校に入学するやいなや中等部時代からさまざまな女性をたぶらかせまくりのヒカル君に接触され、そして、死んだ後のヒカルに憑りつかれます。そして、幽霊のヒカルと奇妙な友情を育みながら、ヒカルに縁のあった女性たちの力になっていく・・・というストーリーなんですが、どうすか、これ。このプロットはさっぱり面白そうじゃないですよね(笑)。

どうもこの著者は、面白そうな設定を作るのが下手くそです。"文学少女"もプロットは面白くないんですよね。人物設定もキャラ付けもいまいちぱっとしない。今回の是光の「本人はそのつもりがないのに外見が強面なのでヤンキー扱いされている」という設定も、手垢つきすぎてて怖いぐらいですし、この設定を聞いて多くの人がまず早期するだろうのは「とらドラ!」だと思いますが、そもそも「とらドラ!」のこの設定も大してうまく機能したとはいえないしね。竜児は完全にクラスに溶け込んでるね(笑)。

ただ、ここからキャラを追い込んでいって深みを持たせるのが抜群にうまい。なんといいますか、「キャラをキャラのまま動かさない」といいますか、例えば「清楚キャラだからこういうしゃべり方でしょ」とか「ツンデレだからこんなリアクションでしょ」というような不用意なことはせずに、きちんとキャラを飲み込んだ上で、さらになぞらえる文学作品と溶け込ますんですから、たいしたものです。だからこそ、極端な状況("文学少女"は普通に人が死にますからな)になっても、お話が絵空事にならずに済んでます。キャラにのっかって日常の楽しい話ばかりの作品で同じことをやろうとすると、話がシリアスになるにしたがって登場人物の発言がどんどんテンプレまみれで嘘っぽくなってしまいます・・・って、「生徒会の○存」の悪口はそこまでだ!(笑)

あとはなんと言っても、野村美月の書くツンデレはほんとに極上でございまして、"文学少女"のななせもいいが、ほのかちゃんは最高。続巻で是光がモテまくるにつれてどんどん可愛くなっていくので、乞うご期待。


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