100000年後の安全
激烈の2011年が終わり、原発についてはみなさんお腹いっぱいかもしれません。しかし、整理しましょう。2011年にみんなが知っているようでよくわかっていなかったことは、原発は止まっていても危ないということでした。
逆に、止めたままの原発は全くもって始末に負えないものです。運転している原発は価値を生み続けますから、それをもって運用を続けて行くことができます。しかし、止めた原発はただの金食い虫です。一度動かした原発はずっと冷却が必要になります。すべての原発を同時に廃炉にすることができない以上、優先順位(当然、古いものから止めて行くんでしょうから)をつけて廃炉にし、それ以外は運転を続けるべきです。
ただし、原発を動かすことにより新たな核廃棄物がうまれてしまう問題はあります。原発の最もマズい点は核廃棄物の最終処分方法が決まっていないことです。この問題を先送りにして原子力発電をやり始めてしまったのは罪以外の何物でもないし、この問題にめどがつかない限り原子力発電に未来はない。もっとも、もう既に大量の核廃棄物があるので、上の「一部を動かしながら、どう脱・原発を実現するか」の方針は変わらないんですけど。だって、価値をまったく生まないものに対して投資もできんわけで。
さて、その大問題であるところの核廃棄物最終処分問題ですが、フィンランドではオンカロというところに10億年ぐらい前の岩盤があって、そこを掘って埋めることにしたそうです。核廃棄物が無害になるまでは10万年ぐらいかかるんですが、なんせ10億年間安定的だった岩盤なので、10万年ぐらいは平気だろうと。たぶんその推測は正しい。しかし、せっかく埋めた核廃棄物を掘り出しちゃう可能性はある。
この「100000年後の安全」は、このオンカロに関するドキュメンタリーです。その主眼はこの施設の安全性。それも、100年先ではなく、1万年、10万年先。ここで議論になるのは、例えば「ここは危ないから掘っちゃ駄目」というメッセージを残すかどうか。ある人は、きちんとメッセージを残して子々孫々語り継ぐべきだと言う。ある人は、そもそも正しく伝わるメッセージを用意できる保証はないんだから、何も残さない方がいいという。一番恐ろしいのは人間の好奇心だと。
やー、確かに古代人の遺跡とか発見しちゃったら、そりゃ掘るわ。「掘っちゃ駄目」って書いてあったら、嬉々として掘るでしょう。
いや、そもそも今から10万年前の人類といえばネアンデルタール人な訳です。コミュニケーション可能どころか、別な種になっちゃってるかもしれない。ネアンデルタール人からのメッセージを読める自信はどう考えてもない。そもそも、気にしなくちゃいけないのは、人類かどうかもわかりません。何か違う種が知性を持っているかもしれません。来週した異星人かもしれません。
このような事柄に関して、フィンランドの有識者たちがどう思っていて何を語るのか。さほど長くない映画で、DVDもそんなに高くないのでぜひ観てください。
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