狼と香辛料 XVI/支倉凍砂
もう最終の17巻も出てしまいましたが、本編としての最終巻である16巻の感想を書いてませんでしたので、いまさらながら。
前後編となった15・16巻ですが、前編のラストで「狼と香辛料」には似つかわしくない悲劇的な伏線が張られたんですが、やっぱりコル坊は鳥に荷物を奪われただけでした。いやいや、ちょっと焦りました。
おそらくはかなり以前から暖めていたのだろう最終エピソード。ロレンスが「損得を最優先の価値判断とする商人」としての自分、あるいは「旅と冒険の日々を送る行商人」としての自分に疑問を持ち、自ら結論を出します。これまでのストーリーでも変奏されてきたテーマですが、さすがによくまとまっています。
古き神の圧倒的力の前に無力感をかみしめるロレンス。金で横っ面を叩かれて信条を曲げた昔気質の傭兵団に命を危うくされるロレンス。そんなロレンスにも、ちゃーんと見せ場は用意されてますし、ホロとのいちゃラブにもちゃんと結末が与えられます。せっかくお店が持てそうだったのはご破算になってしまいましたが、まあ、落ち着くところに落ち着くんでしょうね、この二人は(その様子は、17巻でちらっと書かれてます)。
シリーズが始まったときには「剣も魔法も出てこない中世ファンタジー」として珍しがられた本作ですが、ヒットシリーズとして見事に完結し、今ではまるでこれが王道とも思えるようなポジションを築き上げました。まあ、剣も魔法も出たような気がするし、ヘタレ主人公と戦闘美少女だと思って読むこともできるしね!
では、引き続き17巻の感想を書きます。「完結ご苦労様」はそちらで!
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