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パニッシュメント/江波 光則

リンク先は小学館のサイトなんですが、30頁ほど試し読みできるようです。お試しでどうぞ

結ばれたいけど結ばれたくない!?怒濤の恋。

高校生、郁には何かの拍子に「誰かを殺しそうな顔」をしてしまう瞬間がある。 それが新興宗教の教祖をしている父親と関連があるのかどうかは分からない…郁は長年、父親とは離れて暮らし、その存在を「ないもの」としているが、幼馴染みの女子高生・常磐の母親がその宗教に傾倒していることに対し、自分がどういう存在であるのかを告げられない。何も知らないで郁に接してくる常磐に複雑な感情を抱いてしまう郁。一方でクラスメイトの謎めいた占い少女・七瀬がなぜか、郁にアプローチをしかけてくるが、実は七瀬は、郁とその父親に関しての秘密を知っているらしく……父親の宗教団体の幹部である教師や、七瀬を敵視するクラスメイトなどが絡み、郁の高校生活は混乱の様相をきたす。
そして…郁にとって最も気になる存在・常磐との関係も泥沼化していき

怒涛の恋?いやー、少なくとも恋愛がテーマではないですわ。

文化系トークラジオLifeの年末恒例企画「文化系大忘年会」では、毎年パーソナリティ陣の今年のお勧めが紹介されて楽しみにしています。去年はなんかそれが外伝(放送終了後にだらだら続く配信専用部分)にまわってしまってなんだかなと思いましたが、今回も参考にさせてもらいました。柳瀬さんご推薦の「ヤノマミ」が素晴らしかった。感想は別に書きます。

で、charlieのお勧めがこの作者のデビュー作の「ストレンジボイス」でした。それを覚えていたので、書店で「パニシュメント」が平積みになっていて、「ああ、2作目もちゃんと出たんだ」と買ってみたのでした。

・・・いやあ、ラノベだけど、ライトじゃないねぇ。

ライトノベルは極端なキャラや極端なシチュエーションからドラマを駆動する形が多いので、その点でも主人公が新興宗教の教祖の息子というのはそれほど跳んだ設定でもないですし。そして、そこからの展開がうまい。上のあらすじを読むと恋愛が機軸なのかと思いますが、恋愛も含んだ「人が何かを信じること」をテーマに広げています。信頼と裏切り。その裏切りもすべてがどうしようもない形で書かれていて(例えば、幼少の主人公が教祖の父にむけた裏切りなんて、意識的ですらなく記憶にすらないわけで・・・)、「信じてはいけない」とも「裏切ってはいけない」とも言えないさまざまな関係が折り重ねられていきます。素晴らしい出来!

話の展開も真っ当で、悪く言えば地味。いっそのこと、このまま文芸誌に載せて芥川賞でもいいです。その書きっぷりもそれだけのものはありますし。ラストがちょっとサービスしすぎなので、そこは芥川賞が欲しければ変えてねって感じがしますけど、そこがあって何とかガガガ文庫なら引っかかっているというか。

こんな本が出てくること、こんな本を書く作家にデビューの場が開かれていることが今のラノベ界のよさだと思います。ただし、ラノベの最前線では行き過ぎた表現が行き詰って瓦解しかけている状況も見えます。ともあれ、なかなか貴重な作家さんではないかと。「ストレンジボイス」も読んでみたいと思います。

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