ヤノマミ/国分 拓
文化系トークラジオLifeの年末恒例企画「文化系大忘年会」の中で柳瀬さんが紹介していたのがこの「ヤノマミ」。NHKのディレクターとカメラマンが、アマゾンの奥地で1万年前から変わらない狩猟生活を送る部族に、のべ150日にわたる取材を行ったドキュメンタリーです。文化的に素晴らしい成果であり、こういうものを作ってくれるNHKにせっせこ受信料を収めていることを誇りに思えるレベル。民法では間違いなくできないし、柳瀬さん曰く、今後はもうNHKでもこんな大変な取材を行うだけの体力はテレビには無くなってしまうだろうとのこと。大変に貴重な記録です。
NHKスペシャルとして放送され、劇場公開もされました。そのDVD版と、取材を行った国分ディレクターの書いた書籍と、両方が発売されています。これは、ぜひ両方に触れて下さい。
書籍は素晴らしい出来ですが、いかんせん読者である我々の想像力に限界があります。実際にワトリキがどんな風景なのか、森の中はどうなっているのか、ヤノマミ達がどんな風に語り、どんな声で笑うのか、シャボリ・バタはどのように闇に語るのか、産まれたばかりの子供を精霊のまま森に返すとはどういう光景なのか。映像の助けなしにはわかりません。
映像もこれまた素晴らしい出来ですが、いかんせんそこにはワトリキのヤノマミしか移っていません。全てのヤノマミ達が文明化されていないのか、ヤノマミはナプ(ヤノマミ以外の人間。時に侮蔑的な意味を含む語)と文明をどう思っているのか、この先、ヤノマミはどうなっていくのか。そして、この取材を通じて、取材する側は何を言い、何を言われ、何を感じ、何をしたのか。書籍の助けなしにはわかりません。
そして、視て、読んだ後、そこにあるのは圧倒的な存在感だけで、「面白かった」とも「勉強になった」とも「考え方が変わった」とも違う、なんとも表現しようのない感情だけだあります。しかし、間違いなく触れてよかったと思える。ずっしりとくるドキュメンタリーでした。残酷なシーンがないわけではないですが、入り込んでしまうので淡々と視られてしまいます。だから全ての人にお勧めしたいです。
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