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古語の謎/白石 良夫

「古語の謎」というタイトルですが、テーマは国学です。昨年、松坂にすき焼きを食べに言ったとき、本居宣長が松坂の人だと初めて知りましたが、その本居宣長だけでなく、契沖、荷田春満、賀茂真淵といった人々の話がメインです。

私たちはついつい「古文」というと現代語との対比で考えてしまい、昔の人はみんな古文が読めたような錯覚を覚えてしまいますが、例えば、江戸時代の人はもちろん、平安時代の人からしても万葉集は古文書で普通に読めるものではないわけです。

万葉集はもちろん全部漢字(万葉仮名)で書いてあるわけで、しかも、万葉集以外に同時代の文献はほとんどありません。記紀はちょっと後ですしね。室町時代に万葉集の注釈本が出されて、それがどんどん伝わって何の改訂もされないままだったりします。

で、江戸時代の国学者は、このような後の文献に捕らわれることなく、現代に通じる文献主義と本文批評のやり方で古典解読をしていくのですが、それに関する様々な話題が詰まった本です。まとまりはないのですが、新書というのはそういうモノでいいと思うので、新書らしい新書を読んだなとそんな感じです。

例えば、冒頭の話題は万葉集の柿本人麻呂の

ひんがしの のにかぎろいの たつみえて かえりみすれば つきかたぶきぬ

という歌は本当にこう読まれた歌なのかという話です。なんと、この歌は江戸時代までは

あづまのの けぶりのたてる ところみて かへりみすれば つきかたぶきぬ

と読まれていたんだそうです。平安時代にこう読み仮名を打った本があって、みんなそれに習ったんですね。で、この読みに疑問を表明したのが契沖、「ひんがしの~」に読み替えたのが賀茂真淵だそうです。大胆ですな。

そもそも、柿本人麻呂(か、人麻呂の歌を書き留めた人)はこの歌を

東野炎立所見而反見為者月西渡

と書いただけなわけで、ホントのところはよーわからんわけです。現代にいたるもそうで、「イマイチ釈然とせんところもあるが、こっちの方が正しいとする根拠のある読み方もないので真淵に従うか」ということなんだそうです。

理系出身で古典になんの知識もない私としては「ひんがしの」と「あづまのの」より、「月西渡」を「つきかたぶきぬ」と読んでる方がびっくりなんですが。契沖は「ひんがしの」説を採るときに、句のなかで東と西を対比させてるんだから「ひむがしの」「つきにしわたる」がよいのではといっているそうですが、素人目にはそれが素直で良さそうに見えますよ?

と、そんな話題などいろいろ詰まった本。まあ、すごい面白いわけではないですが、興味深いですよ。

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