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番狂わせ 警視庁警備部特殊車輌二課/押井守

この小説が出ると聞いたときは、なんでいまさら押井守がパトレイバーの外伝の小説を書くんだと思ったんですが、読んでみて納得。単に押井さんはサッカーの話が作りたかっただけですね(笑)

でも、そんなサッカー蘊蓄アニメを作らせてくれるところはない(そんなものは宮本武蔵ひとつで十分です)し、小説で書くにしても普通じゃ企画が通らない。天下の押井守ですらそうでしょうし、あの押井守ですからなおさらそうでしょう(爆)。で、パトレイバーの外伝として書くのなら企画が通ったんですね、たぶん。まあ、こんな企画をわざわざ押井さんのところに持ってくる人もいないと思うので、そういうことなんだと思います。パトレイバーの外伝小説が出したかったとしても、普通は伊藤さんとか横手さんのところへいきますわ。

しかし、特車二課第二小隊のあのメンツをだそうとしたら2000年前後の話にする必要があります。しかし、押井さんが蘊蓄垂れ流したいのは最近のサッカー話。特に南アワールドカップを見据えたというあたりをネタにしたいらしい。となると、二課のメンツもあれから10年。いい加減、野明も遊馬も中年ですし、そもそもP2で二課のメンバーは入れ替わっています。しかし、まったく新しいキャラで書くんなら、パトレイバーである必要はない。どうしましょう。

しかし、押井さんはそんなこと気にもとめず、あっさりと禁じ手を返します。「あの第二小隊のあのキャラ達を彷彿とさせる3代目の隊員を出す」。さすがです。

で、Amazonのレビューを見たら怒ってる人も結構いるわけです。まあ、そりゃあパトレイバーに愛着がある人が、自分が好きなパトレイバーをおちょくられた、コケにされたと思ったとしても判らなくもないです。パトレイバーは初期OVAと映画版は押井作品ですが、TV版が好きだという人もいる(というか、それしか見てない人も多いだろうなあ)だろうし、ゆうきまさみさんのファンでマンガのパトレイバーが大好きでそのアニメ版としてTV版や劇場版を捉えている人も多いと思います。パトレイバーが好きな人が誰しも押井守が好きではない。そりゃそうだし、パトレイバーは誰のものかといえば、すくなくとも押井さんだけのものではない。ヘッドギア名義ですしね。怒る気持ちはわかります。

しかしまあ、押井さんが自分の名義の小説でこれをやるのに異議を唱えてもしょうがないし、押井守にその資格がないわきゃない。押井さんも文句を言う人がいるのはわかってるでしょうが、そんなこと気にするわけもない。諦めましょう。

そして、ながーい前置きをおいてここからが本題なんですが、この小説は間違いなく押井ファンには面白いし、なにより充分にパトレイバーなんですよ。パトレイバーの世界観を壊すようなことはしていない(2010年にあの世界でレイバーがどういう扱いになっているか、ちゃんと書いている)し、なによりキャラの動きがパトレイバーです。わざとカリカチュアライズ(キャラをカリカチュアライズするってのも変だけど)されてますが、後藤は後藤らしく、遊馬は遊馬らしく、太田も香貫花もバカバカしく動きます。

そして、なんと大サービス。レイバーも動きます(笑)。TV版の上海亭出前事件(第29話「特車二課、壊滅す」)などが押井さんのパトレイバーを象徴していますが、その押井さんがやる以上、レイバーなんてキャリアに載っかってればいい方で動くかどうかなんて全然期待してませんもの(爆)

というわけで、あのP1の雰囲気で弱体しきった特車二課を用いて暗躍する後藤隊長と振り回される遊馬(遊馬はラグビー部だったって設定なので、サッカーやってもあんまり違和感がないんだよね)が、最後に危機一髪でテロを阻止する話です。パトファンなら読む価値あり。押井ファンなら必見という奴です。心広めに読みましょうね!

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