どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?/梅田望夫
相変わらずさっぱり将棋のことは判らないんですが、梅田望夫さんの将棋観戦記はとても面白いです。これは完全に才能ですね。でも、梅田さんが本業でどれぐらい素晴らしいコンサルタントなのかは知りませんが、絶対にこっちの方が向いています。どー考えても、将棋業界が梅田さんを専属にして満足に食べさせるだけの余裕があるとも思えませんが(笑)、梅田さんにはとっととシリコンバレーから足を洗っていただいて、ずっと将棋の観戦記を書いて欲しいです。
この面白さがどこから来るのか不思議なのですが、ひとつにはまず将棋自体の面白さをそのまま伝えようとしていないことがあります。将棋そのものには、私のようにコマの動かし方を知っている程度の人間には判りようもない面白さがあるのだと思います。なので、それが判る人には「この局面で、○○ではなく○○という一手を選んだ。これが敗着」というような一文で伝わるんでしょうが、私にはなんのこっちゃ判らない。そこを梅田さんは、将棋というもののそれまでの経緯と、棋士達のキャラクターに落とし込んで説明してくれます。そこが面白い。
だいたい、スポーツでもその1試合を取り出して面白いというだけではなく、ファンはそれまでの経緯を含めて楽しんでます。「あのピッチャーは前の試合、あの選手にストレートをホームランされているから、ストレートは投げにくい。そこを逆手にとって・・・」であるとか、「このマシンはシルバーストーンの高速区間でバランスが悪かった。そこで、同じキャラクターの鈴鹿では・・・」とか。
F1を長年観ていて、この面白さを他の人にも伝えたいと思ったとしても、つい「このマシンを作ったニューウェイという人は、レイトンハウスというチームで・・・」と20年前のことから説明してしまったり、「デラロサになんでNIPPONICHIという横断幕が出てるかというと、それはむかしフォーミュラニッポンで・・・」と格下レースでの逸話から話してしまったりするものです。そういう年季の入ったファンならではの楽しみの上澄みを、巧みな文章力で提示してくれるからこそのこの面白さなのでしょう。
で、梅田さんの将棋の本の感想を前に書いたときにも同じことを書いた気がするんですが、だれか私に判りやすく「急戦矢倉」とか「居飛車党」とかいう言葉の意味を教えてくだはい(笑)
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