悪の教典/貴志祐介
「新世界より」が大変素晴らしかった貴志祐介の新作です。今回はSFではなくサイコホラーです。
有能で魅力的だけどサイコパスな高校教師が主人公です。もう、この主人公があっけらかんとさくさく人を殺します。最初はこのアブないセンセの一人称で進んでいって、この主人公は教室運営も有能でどんどん問題を解決していきます。ただ、人を殺すのをじぇんじぇん悪いことだと思っていないので、それが有効な手段だと判断すればさくっと殺します。あまりにさくさくと殺すので痛快なぐらいです。
しかし、さすがにそんなに人殺しをしていればいろいろと綻びもでます。で、いろいろと進退窮まった挙げ句、このセンセは一つの結論に達します。こんな感じ・・・
「うーん、しょうがない。可愛い女の子ばっかり集めたクラスだったから惜しいけど、全員殺すか」
というわけで、下巻はもう大変。クラス一同、全員が惨殺されてしまうのか。さて、結末やいかに・・・といった話。
あまりにさくさく殺されるので途中で気持ちがげんなりしてきますが(笑)、じわじわと主人公の異常さがあらわになってくる上巻と、ノンストップで殺人劇が展開する下巻の構成も素晴らしく、じっくり上巻を読み終わって下巻に入るともう読むのを止めるのが難しいぐらい。
「新世界より」と比べちゃうと、SF的な世界観の壮大さが今作では無くなっている分、星一つ減という感じなんですが、それはジャンルの違いもありそう。たぶん、SFじゃない分読みやすいって人もいると思いますし。それがない分の何かがあるかというと別にないですが、間違いなく上下巻併せて3600円と読むのにかかった時間に値して、充分におつりがくるだけの面白さです。まあ、読んでない人は「新世界より」を。「新世界より」が面白かったという人には、ぴったりハマルと思います。
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