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F1GP#11,12 ドイツGP ハンガリーGP

夏休み前の連戦、ホッケンハイムとハンガロリンク。この2レースはレース結果そのものよりも、起こった事件の方が大きく取り上げられることになりました。

まずはホッケンハイムでのフェラーリチームオーダー事件。何とも後味の悪いレースになってしまいました。

チームオーダーを出すこと自体には私は反対はしません。これまで20年ほどF1を見ていて、チームオーダーを明確に出さなかったことによる敗北や、人間関係の悪化を見てきたからです。もちろん、逆のケースも多くありましたから、これは各チーム、各ドライバーの考え方の問題です。そして、そういう様々な考え方や個性も含めてレースだと私は思っています。

あるいは、レースはファンのもので、レース結果を操作するのは応援するファンに対する冒涜だというような意見もあるようです。しかし、私はスポーツとはすべて第一に選手のものであって、我々はそれを第三者として楽しませてもらっているだけに過ぎないと考えています。オリンピックであろうがワールドカップであろうが、例え選手自身が何と言おうと彼らの勝利は彼らのものであり、決して国のためでも応援してくれるファンのものでもありません。そういう一種のエリート主義的な考えです。

そして、冷静に考えてフェラーリチームがこの時点でチームオーダーを出すことは理解できなくもありません。まず、伝統的にフェラーリにとってレースに勝つとはフェラーリが勝つことであり、フェラーリに乗った誰が勝つことではありません。そして、現状のフェラーリの戦力を考えた場合、トップのレッドブルとのパフォーマンスの差は歴然であり、フェラーリが今年チャンピオンを取る可能性があるとすれば、全てのリソースを1台のマシンに集中させ、レッドブルの2人のドライバーがポイントを分け合っている隙につけ込むしかありません。まさに2007年のライコネンはそういう状況でチャンピオンを取ったわけですし。まさにその為にフェラーリはアロンソを獲得したとも言えます。

問題は、アロンソとマッサがそれに納得しているかということと、なぜフェラーリはあからさまにマッサにポジションを譲らせたのかといういうことです。これもよく言われることですが、チームオーダー禁止ルールに対する反論として、「そうは言っても、チームはいくらでも我々に判らないようにチームオーダーを出すことができる」と言われます。今回のケースでも、ロブ・スメドレーはマッサに対して例えば「原因はわからないが、エンジンのアラートが点いた。ペースダウンしないとフィニッシュ出来ない可能性がある。アロンソを前にだして、ペースダウンせよ」ということは出来ました。みんな「怪しいな」とは思うでしょうが、これを違反に問うことは難しいでしょう。

それをわざわざ問題になることが判っていながら「アロンソの方が速いんだ。どうすればいいか判るな?」というあからさまな無線を送ったのか。そもそもマッサの契約にはナンバー2条項があって、それをはっきり伝えただけなのか、それともスメドレーにも受け入れがたい思いがあって、マッサは実力で負けたのではなく譲ったのだとはっきり判らせたかったのか。真相がどうなのか気になります。

そして、ホッケンハイムでのミハエルの幅寄せ事件。正直言って、これはマジで背筋が寒くなりました。通常のコンクリートウォールならまだしも、ピットウォールにぶつけようとするなんて正気の沙汰とは思えません。バリチェロが冷静に対処したからよかったものの、バリチェロが壁を気にして反射的にステアリングを左に切った状態でタイヤとタイヤが接触していたら、バリチェロは壁にはじき飛ばされてピットウォールの上に打ち上がるか、すごい勢いで壁に当たって跳ね返ってきます。どちらにせよ、ミハエル自身もただじゃ済みません。当たっていないまでも、あの位置へバリチェロを押し出してピットレーンからピットアウトする車がもしあったら大変なことです。

例えば、チャンピオンがかかった一戦、例えば94年のアデレードや97年のヘレスでダーティーなドライビングをするのなら、認められないまでも意図はわかります。しかし、7回のワールドチャンピオンを取り、何不自由のない生活をしているにもかかわらずレーシングの醍醐味を忘れられずに3年のブランクの後に復帰したものの、とても過去の栄光に並ぶ成績は期待できないマシンで10位1点を長年チームメイトだったドライバーと争っている。その状況で、こんなリスクを犯す意味がわからない。彼の中で何かが狂ってしまっているとしか思えないです。CSで川井さんも「退屈しのぎで出てこられてこれじゃ、たまんないよね」と言ってましたが、まったくもってその通りでしょう。

実際にバリチェロが無傷で抜いていったことと、チャンピオンシップに重要な局面ではなかったことから次戦10グリッド降格で済んでいますが、逆に特に無理する必要のない場面での出来事が故に、数戦の出場停止、あるいはこれまでのポイント剥奪などの処分でもよかったのではないでしょうか。

さて、次戦のスパ・フランコルシャンまでF1はしばしの夏休み。この間に勢力図も変わってくるかも知れません。スパもV8エンジンになっちゃってから魅力半減ではありますが、いいレースが見られることを期待します

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