その日彼は死なずにすむか?/ 小木 君人
ガガガ文庫の新人賞の入賞作
設定も展開もありがち。17歳のある日、事故で死んでしまった少年のもとに悪魔が現れ、もう一度10歳から人生をやり直し、あるものを手に入れれば(それが何かは主人公には知らされない)死ななくてすむと言われます。そして、やり直した少年の日々で3人のヒロインと出会い・・・
はい。もう大体ストーリーは判りますね。しかし、この王道のストーリーで退屈せずに読めちゃったので、ストーリーテリングの才能は折り紙付きです。ガガガ文庫の傾向からいうと、想像ですけど投稿作はかなり「一発狙い」のネタが多かったんじゃないかと思います。突拍子もないヒロインとか、はちゃめちゃな主人公とか、そういう感じの。その中で、ガガガ文庫としてこういう新人を前に押し出したということは、意図を感じます。
とにかく、ヒロインのソフィアが可愛いんですよね。このヒロインが良すぎるので残り二人の立場があんまりないし、まあ、ギャルゲじゃないんで3人と同時に付き合うわけにもいかないんでこういう感じなっちゃうのかもしれません。正直、3人のヒロインがいる必要があったのかなと。話が持たないとしても、やはり、それぞれに恋愛を背景に持たせるのは無理があります。例えば、「神のみぞ知るセカイ」なんかはヒロインと恋愛に発展する度に、ヒロインの記憶がリセットされるという無茶な設定になっています。「神セカ」の桂馬は、中学生の性欲を超越した存在なので(笑)問題ありませんが、本当にこの設定だと男の気が狂います。ここまで筆力があると、あえてラノベの枷を付けずに同等と青春小説を書いてよかったんじゃないかと思います。投稿作なのでなんともいえないところもありますから、次回作に期待したいと思います。
ここまでラノベが市民権を得て、ラノベの中でいろんなことが出来、評価もされる世の中になったんですから、普通にラノベのレーベルで青春小説をやっていいと思います。正直、他にできるところも無いわけですから。
ちなみに、もし、私が7年前にもどって、リアル時間に7年間やり直せと言われたら・・・明日死ぬとしてもイヤです。ましてや高校生が10歳に戻されたら・・・そんな拷問あるかしら。退屈して死んじゃいそうです。
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