とらドラ! (10) /竹宮ゆゆこ
だいだーんえん。「とらドラ!」見事に最終巻です
「とらドラ!」の主人公とヒロインは、出会ったときにお互いの親友に恋してるというちょっと変わった二人です。その二人の関係がお互いを支えあっていく中で変わっていくのがストーリーの中心です。読者にとってもその結末は見えているわけで、ストーリーはあらかじめ決められた運命に沿って、作者に巧みに操られながら進んでいきます。
その主軸も十分に魅力的なのですが、「とらドラ!」を非凡な作品にしているのは櫛枝実乃梨と川嶋亜美の存在感です。二人ともがそれぞれ自分の世界を持ち、その世界に踏みいられることを嫌い、そして、同じ一人の男の子に恋をする。が、それぞれの考えもやり方も全く別。二人ともが相手にも、自分自身の気持ちにも素直になれずに、報われない恋を持て余してイライラする。
ああ、なんてかあいらしい
と、30もとっくに過ぎたおっさんは身もだえしてしまうわけです。最終的にはみのりんとあーみんの二人は「ラブコメ」って範疇からすかっと放り出されちゃいます。それでも彼女らなりに少しだけ変わって大人になっていくわけですが、不憫でのぉ~
それにしても、この対照的な二人をこういう人物配置に置くってのは凄いなあと思っちゃいます・・・まあ、物語上の必然はわかるんだけどね。主人公とヒロインが知り合うきっかけを作るみのりんのポジションのキャラは当然必要だし、あーみんはいわゆる「予言者」の役割ですから。この作者はオーソドックスなストーリーの上に自分の技量を載せて書いていくタイプの人ですから、プロットを書いている段階でそういうキャラが要るなーというのは多分作者として何の違和感もなかったと思うんですよね。その必然で配置したキャラにこれだけの存在感を持つような造形をしていくことが非凡ってことなのかもしれません。
で、あたしゃ、とにかく報われない女の子に弱いのよ(笑)
アニメの方も今週最終回ですね。文庫とアニメのラストを揃えて出したのも立派(メディアミックスといってもそんな美しくはいかないものですわ)だし、アニメ版は安定した出来でした。特筆すべきはどーかんがえても難しいキャラである実乃梨を、竜児が惚れてもおかしくないほど可愛く、視聴者を困惑させるほどヘンテコなキャラにきちんと演じた堀江由衣さんですね。デビューの頃は「アイドル声優」で、人気はありつつもあまりに悪い意味でアイドルっぽすぎて実力が評価されて来なかった感がありますが(というか、私はそういう印象でしたが)、「とらドラ」の実乃梨はベテラン声優らしい仕事だったと思います。りっぱである!。まあ、30過ぎてあのOPのPVは・・・大変だなって感じだけど、そこも立派だと思いますよ(笑)
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