狼と香辛料VIII/支倉凍砂
前作で、これまでの「ホロの故郷を探す」という旅の目的を一時、棚上げして、新たな旅の仲間と新しい旅の目的を手に入れたホロとロレンス。それは、作者からの「この二人の話をもっと続けるよ!」というメッセージを含んだ開幕ベルでした。そして、いよいよ躊躇無く新しい物語がスタート。そして、いきなり前後編(笑)
そんなわけで、相変わらずホロとロレンスはラブラブで、ロレンスはヘタレ。それは変わらないんですが、本格的な陰謀話が動いてきました。 悪役として、前々巻から登場の没落貴族女商人エーブが バリバリ活躍してます。おそらく登場させた時はここまで大きなキャラクターにするつもりはなかったんだとおもいますが、なかなかどうして、りっぱなものです。
そんなエーブにロレンスは、裏切られて、殺されかけて、利用しかけて 脅されて、誘惑しようとして、ほだされかけてます。まるで敵う様子はありません。ある街の長年の対立構造に巻き込まれ、一方の手先であるエーブと、他方はローエン商業組合の商館の主。二人から「お前はこっちの味方だよな?違うって言ったらヒドいぞー」と脅されて自分の命の軽さを思い知りまくり、ビビリまくり。さあ、ここからロレンスの逆転の一手は・・・というところで、それは後編のお楽しみ。
ついに、作者がある程度の長編になることの覚悟を決めて始めた新展開。話の着地点を迷っているようなこれまでの展開とは違ってぐっと走り出した筆の勢いは素晴らしく、これまで以上に魅力的な話になってきました。支倉さんが力一杯取り組んでいることがよくわかって、嬉しくなるような一冊。後編が楽しみです。これでハルヒみたいに後編がずっとでなかったら、グレますぜ!(笑)
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