人類は衰退しました(2)/田中ロミオ
うーむ・・・SFだ
正直、1巻目を読んだ感想は「妖精さん、ほえほえ~」以上のものはなかったんですが、案の定、それだけでは終わらないようです。なんだ、この急なSFっぷりは。
いや、前作と作風が大きく変わったということもないんです。前作の時から裏に妖精さんの設定がどかーんとありそうな気配がありました。というか、ないと不思議な妖精さんの行動に一貫性を持たせられないから、当然、作者は考えてるハズです。だって、素でこれを書いてたら頭がいい感じ過ぎます(笑)。
設定をぶちまければいいってもんじゃないんですけどあまりにも出さなさすぎなので、「うーむ・・・」な感じだったんですが、2巻目ではそのあたりにはあまり触れず、もっと外枠を攻めてきました。
今回は、短編2本の構成です。
1本目は「私」が妖精さんになってしまう話。おいおい。妖精さんって、なれちゃうんですか。この話を通じて妖精さんという存在が人間とどう関係しているのがわかる・・・ような、余計わかんなくなったような・・・???
少なくとも、妖精さんは妖精さんなりに何かすごくがんばっているけど、本能的にああなっちゃうんですね。人間を妖精化してしまう何かが起きて、そこから人類の衰退が始まったということなんでしょうか。深読みしたければいくらでも深掘りできてしまうこの設定。あああ、気になる。
そして、2本目はまさかのタイムパラドックスもの・・・というか、時間ループもの。またか!(笑)。いや、たまたま時間ループものばっかり立て続けに読んでるだけなんですが、しかし、こちらの時間ループは作られた動機がショボく、仕組みが格好良く、そして、解釈が難しい。いきなり、本格SFしないでください!でも、これは時間ループものの中でもかなりイカす類で、時間ループにより起こる物語がテーマのカギとなるのではなく、時間ループ自体が事件の中核を成してるという意味で、抜群にSF短編。
いやあ、作品全体としてどこへ着地させるかさっぱりわからなくなりましたけど、ロミオがただ者じゃないことだけは断然はっきりしてしまいました。引っ張ってもいいから、むずがゆいのでちゃんと着地はさせて頂戴ね。ガガガ文庫期待の星だから、簡単には終わらせられないかもしれないけどさ(笑)
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