ウェブ時代をゆく/梅田望夫
この本は「ウェブ進化論」とはかなり趣を異にして、梅田さんの生き方や人生訓のようなものが全面に出てます。今の時代、どう生きていくべきなのか自分の経歴も語りつつ、さらけ出してます。そこがなければ、ともすればタダの説教臭い本か、処世術とライフハック足して3で割ったようなモノになりかねないわけですが。そのへんの「パンツ脱いでる感」が伝わってくるのがいいですね。読むと元気にさせられます。
自分らよりも1.5倍長く生きてるおっちゃんが、これぐらいガンガンに世の中楽しもうとしてるんだとすれば、ヒネてる場合でもないなと。後は、オレらはこういう時代認識で生きてるんだから、昔の常識とか世間体とかで余計なこと言わないでくれと、自分の親の世代にこれを読ませたいかな(笑)。まあ、例によって今さら勉強になる話ではないのは、言うまでもないですけど。
あと、ここはちょっとどきっとさせられたんですが(P.208)
小林秀雄が「作家志願者への助言」(『小林秀雄全作品4』新潮社)という文章のなかでこんなことを書いている。
「文学志願者への忠告文を求められて菊池寛氏がこう書いていた。これから小説でも書こうとする人々は、少なくとも一外国語を習得せよ、と。当時、私はこれを読んで、実に簡明的確な忠告だと感心したのを今でも忘れずにいる。こういう言葉をほんとうの助言というのだ。心掛け次第で明日からでも実行が出来、実行した以上必ず実益がある、そういう言葉を、ほんとうの助言というのである(119頁)
「文学志願者」への「少なくとも一外国語を習得せよ」にあたるアドバイスとして、「十八歳の自分」に向けて私は迷わず「ウェブ・リテラシーを持つ」よう助言するだろう。リアル世界とネット世界の境界領域のフロンティアを生き「新しい職業」につく可能性を広げるためのパスポートだと思うのだ。
ウェブ・リテラシーとは、たとえばこんなことである。
- ネットの世界がどういう仕組みで動いているかの原理は相当詳しく徹底的に理解している。
- ウェブで何かを表現したいと思ったらすぐにそれができるくらいまでのサイト構築能力を身につけている(ブログ・サービスを使って文を書くとかそういうことではなくて)。
- 「ウェブ上の分身に金を稼がせてみよう」(『ウェブ進化論』第一章)みたいな話を聞けば、手をさっさと動かしてそこに新しい技術を入れ込んだりしながらサイトを作って実験ができる。広告収入の正確な流れも含め「バーチャル経済圏」がどういう仕組みで動いているかの深い理解がある。
- ウェブ上に溢れる新しい技術についての解説を読んで独学できるレベルまで、ITやウェブに対する理解とプログラミング能力を持つ
うーん、確かに・・・。しかし、私はこの世界で一応、プロとしてやっているわけです。この世界でプロとしてやっていくに辺り、この「ウェブ・リテラシー」が必ずしも大きなウェイトを占めるスキルではないことも確かなんですが、いやあ、このぐらいは確かに言えなくて何がプロだと思いますね。ちょっと背筋が引き締まると同時に、これがこの世界で当たり前のリテラシーだと思っている人がそれほど多くないことにも、「うーん・・・」と唸ってしまいます。
そうだよなあ・・・仮に勘定系のプロや、COBOLバリバリや、どんなプロジェクトでもばっちりなPMだったとしても、それとは別に、常識としてこれぐらい出来てもいいよな・・・。まして、自分は・・・いやあ、せめてここだけは精進します。うむ。
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 誰が勇者を殺したか 勇者の章/駄犬(2025.06.05)
- 仏教は、いかにして多様化したか/佐々木閑(2025.05.11)
- どこまでやったらクビになるか/大内伸哉(2025.05.10)
- 酒を主食とする人々/高野秀行(2025.04.19)
Comments
どーも、この人すきになれないんだよね。
読まず嫌いかなぁ。
そのウェブリテラシーなんかよりも、小林秀雄を読んだほうが良いと思うんだよね。
Posted by: nac | November 21, 2007 12:14 AM
これ、ガイドラインでみてーな
あたいの場合はなんなんだろう
Posted by: 245 | November 21, 2007 03:31 AM
まあ、総じて梅田望夫さんはギークの評判がよろしくないわけだけど、でも、他に代わる人もいないしねえ。
Posted by: Tambourine | November 21, 2007 11:37 AM