僕たちの好きだった革命
ものすごく久しぶりに鴻上さんの芝居を見てきました。3/3 18:00 シアターアプルの公演です。
ストーリー:
激動の1969年、高校2年生だった山崎義孝(中村雅俊)は、校庭で自分たちの自由な文化祭の開催を宣言していた。ところが、突然機動隊の催涙弾を受けて意識を失い、長い眠りに陥ってしまった。30年もの長い年月を経た1999年、彼は目を覚ました。そして、高校2年への再入学を決意したのだった。 そこで出会ったのは、小野未来(片瀬那奈)や日比野篤志(塩谷瞬)、高島希(森田彩華)といった現代を生きる高校生たちだった。彼らは文化祭に憧れのラッパー(GAKU-MC)をゲストに迎えたいと願っていたが、学校側はそれを禁じていた。なんとか呼びたい・・・そんな思いをこらえてしまうみんなの気持ちを見つめる山崎。やがて・・・。
魅力的なプロットですね。でも、とにかく中村雅俊さんが素敵すぎです。かっこいい~
ここから先は、お芝居の内容に触れます。公演を見に行く人は読まない方がいいです。あ、その前に公演を見に行く女性の方にご忠告。作中で重要な役割を果たしますので「加藤 鷹」とは何者かを事前に調べていくことをオススメします。特定のジャンルによく出演されている男優さんです。男性は誰でも知ってます。あら、アナタは言われなくても知っている?
まあ、えっち♪
それはさておき
鴻上さんのお芝居を観るのは、第三舞台の休止前の最後の公演「ファントム・ペイン」以来になってしまいました。劇場の入り口にたくさんの花が届いていて「おいおいおい、なんだなんだ」と思い、公演前にトイレに行くと売店で公演のパンフレットを売っているのを見て、「うわー、第三舞台もメジャーな劇団だったけど、こんな分厚いパンフはなかっただろ」と思い、少し寂しい気分がしました。でも、入り口でもらったチラシの束の一番上に、見慣れたノートに手書きの「ごあいさつ」を見て、なんだかほっとしました。
席についてみると、舞台の上では数人の役者さん達が座ったり、前説のようなことをしたり(声は私の席までは聞こえてこなかったんですが、どうも1969年ってこんな年・・・というような話をしていたみたいです)しています。学生服姿の役者に交じって、白いトレーナー姿の人が・・・あそこで演出家は何をしているんでしょう?(笑)。今日はロビーにいないと思ったら、鴻上さんは舞台の上にいました。そして、お馴染み「Live is Life」。開幕ベル。
鴻上さんは「トランス」あたりから、自分の脚本を他の人が上演する、特に、学生が上演すること(今回の「ごあいさつ」もその話題がちらっと関係してました)を考慮しているようで、今回の芝居も、衣装はほとんど学生服とジャージとスーツだけで、装置も大がかりなものはほとんどありません。移動式の台をあっちこっちへと引き回すのと、舞台上に何本もカーテンを設置して舞台を奥行き方向へ区切って場面転換したり、巧みだけど凄く練習すれば誰にでもできる装置で構成されていました。特に、「暗転しない」ことは徹底されていて、カーテンが舞台の袖から袖へさーっと移動するとその後ろで場面が変わっているなんてこともしてました。これも、練習すればできると思わせます。巧いなあ・・。
もっとも、教室のシーンになると、学生役の役者は自分の机と椅子を舞台袖から担いで登場して、平然と着席します。よく考えるとおかしいけど、それが(いい演出と上手い役者の元では)成立するのがお芝居の世界。机と椅子のセッティングのためにわざわざ暗転なんて必要としないのです。最初の20分ぐらいはその、ある意味「ちゃちっぽさ」に違和感があるんですけど、見る間に違和感は解消してどんどん芝居の世界に引き込まれます。
「朝日のような夕日をつれて」のDVDの副音声で、ゲーム内の世界で身につけていた金髪ボディコンのかぶりものを次のシーンで勝村さんが脱ぎ捨て、それを隣に立ってる台詞のない大高さんが拾って片付けてる所に対して、
「おお、大高が片付けてるんだ。えらいなあ。役者さんによっては、『なんで私が片付けるんですか?どういう気持ちでやればいいんですか?演劇的な意味は?』とかツッコむ人もいるけど、理由はっていわれても『そこにあったら邪魔だから』なんだよなあ」
というようなことを鴻上さんが言うんですが、何処までをリアリティとして芝居の上に乗っけるかというのはなかなか奥深い問題ですね。
もっとも、中村雅俊さんも実は初めてのストリートプレイということもあって、この芝居は普段、演劇を見慣れていない中村さんのファンも見に来るだろうという配慮か、「今、このシーンは、私がナレーションなの。だって、この場面は私が書いた物語の世界だから」とわざわざ狂言廻し役になってる役者さんに言わせたり、いちいち親切な配慮をしてくれます。第三舞台の芝居だとこれが、「え、今、大高さんは部長なの?ウラヤマなの?どっちでもないの?」となるところです(笑)。
校門でビラを配るシーンでは、この説明をギャグへ取り込んでます。こんな説明をピンスポが当たった役者がします。
「このシーンでは、同じ俳優さんが何度も何度も登校します。このシーンをホントにやろうとすると役者さんがいっぱい必要だからです。これまでも、別の役を同じ役者さんがやっていることがありました。それには、意味がある場合もありますし、ない場合もあります。」
さて、意味があるのはどの人の場合でしょう。見た人のお楽しみですね。続きます。
「このシーンでは、役者は別のひとになるために髪型を変えたり」
すると、舞台袖で役者がかつらを交換します。
「眼鏡を変えたり」
眼鏡を交換します
「歩き方を変えたりします」
バク転しながら後ろを男子学生二人組が通ります。おいおい(笑)
「それでも、足りないときには、役者は内面を変えます。怒りんぼさんが」
不良っぽく役者が歩いてきますが・・・
「泣き虫さんになったり」
めそめそしだします。
「皆さんも、暖かく見てくださいね」
なんて親切な芝居なんだ!(笑)
ストーリーについては、上のあらすじ以上のことは触れるつもりはないです。今からチケットを手に入れて見に行くのも難しいと思うので、DVDが出たら是非見てください。また、DVDがでたら、エントリを書きます。後は、気になったこと。細かいこと。
この芝居の大きなポイントは、GAKU-MC。文化祭に呼ばれるインディーズの人気ラッパーという役どころなんですが、その中で強いメッセージを持つ歌としてGAKU-MC自身の曲である「挙手」が使われてます。GAKU-MCは、「EAST END + YURI」の印象が強くてこんなにいい歌を歌ってるアーティストだという認識はなかったです。でも、この曲はわりと最近のアルバムに入っているのに、もう廃盤でAmazonでも新品が手に入りません(今なら買えるみたい)。この芝居をきっかけに再販・・・という訳にはいかないのかな。もう一回、じっくりと聞きたいです。
そして、そのラップに答えるように中村雅俊さんが歌うのが、岡林信康の「私たちの望むものは」。フォークの名曲中の名曲。丸々一曲、ギターで弾き語りしてくれます。若い観客はたぶん岡林信康なんて知らないと思いますけど(いや、もちろん私もオンタイムでは知らないんですけど)、でも、この歌の持っている力は伝わったんじゃないでしょうか。観客席は完全に魅了されてました。ま、意外と平均年齢が高い客席だったしね(笑)。
ギャグも楽しかったなー。ムダに熱い山崎(中村雅俊)が、クラスメイトにうっとおしがられる場面のやりとりで
「うざいんだよ」
「うざい?」
「むかつくんだよ」
「胃でも悪いのか?」
「超むかつくんだよ!」
「腸か!」
ここまでは、ま、なんかよくあるんだけど、そこで山崎が「大正漢方胃腸薬」をそっと差し出して大爆笑。そのオチか!
後は、長野里美さんのかぶり物芸もちょびっと。頭にヘリコプターをかぶって、中継ヘリのアナウンサー。そこからくるくるーっと回転しながら、抜けると現場のリポーターに早変わり。そう、これが演劇的ということです。えっと、なんかだんだん違う気もしてきます。
「現場の滝川さん?・・・・(くるくる)はぁい、こちら現場のクリステルでぇす」
似てないっ!(笑)
ラストシーン間際。山崎と、かつて共闘した同志で、今は学校の教頭となり戦う相手になっている兵頭(大高洋夫)の二人の白熱する芝居は痺れます。
「兵頭さん!!兵頭さんは今、何と戦っているんですかっ!」
世代的にピッタリの人は、胸を締め付けられるような気持ちになるんじゃないでしょうか。今の時代、何で人は正しく戦ってないんでしょう。正しく戦わないと、正しく負けることも出来ないのに。ラストシーン、山崎はヘルメットに「未来」と書いて戦っています。「全共闘」と書こうとして思いとどまって、みんなに言います。「自分の信じるものを書こう」
そして、ヒロインの名は「未来(みく)」。ヒロインの母は同志であり、兵頭の恋人であり、最も戦いで傷ついた女性です。彼女は兵頭と別れ、戦わなかった男と結婚し、生まれた子供に「未来」という名をつけた・・・。重いシーンになります。
ラストシーンが終わり、カーテンコール。拍手は鳴りやみません。鳴りやまない拍手に3度目のカーテンコールに出てきた役者を代表して、中村雅俊さんがシュプレヒコール!
「早く帰れー!」
会場、爆笑。そうですね。今日は2回廻しの日ですから、役者さんもさぞかしお疲れでしょう(笑)。すいませんでした。
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