マリー・アントワネット
「ロスト・イン・トランスレーション」に描かれた東京は、否応なしに孤独と向き合わせる装置でした。外国人にとっての東京の街は全くの異文化とも言い切れないけど、触れようとする度に噛みあわなさが孤独を呼び覚ます。そのことが、すれ違う夫との関係を毛羽立たせる。そんな女性の心理を、素晴らしい映像と素敵な音楽で描き出す。私にとって、深く心に残る映画です。
ただねえ・・・これを全く評価出来ない人もいると思います。ぶっちゃけ、何も起きません。ビル・マーレーが同じように孤独を抱えた中年俳優として出てきて、コメディパートや、ドラマっぽいことをやってくれるんで、意外に退屈せずに観られます・・・というか、ゲラゲラ笑いながら観られるんですが、見終わった後、
って感想の人もいるでしょう。まあ、しょうがないよね
さて、そんな「ロスト・イン・トランスレーション」で一躍名を馳せたソフィア・コッポラ監督の最新作が、この「マリー・アントワネット」です。
14歳で祖国を離れて入ったベルサイユで、孤独、悦楽、恋愛・・・様々なものと向き合い、触れ、跳ねまわり、成長していく女性の映画です。モチーフはばっちりとフランス貴族の生活なんですけど、キッパリ英語しゃべってるし、音楽もあえて今のものを多く使っているし、ファッションやギャンブルや夜遊びに夢中になるところや、それでいて、誕生日の未明にパーティの余韻を残したまま朝日を見に行くところなんかは、すごくストレートな青春映画になってます。
要するに、「ロスト・イン・トランスレーション」では、東京という都市の魅力とコメディと恋愛の側面をエンターテイメントとして織り交ぜることで、(低予算ながら)映画として成立させていたテーマを、今度は予算もがっぽりなので別の成立のさせ方をしている訳ですね。作家というのは、そうそうまったく違うテーマのものをつくるモンじゃないわけです。結果として、「ロスト・イン・トランスレーション」に比べて、「マリー・アントワネット」は映画としての格が、一回りも二回りも違うものになっていて、おそらく「ロスト・イン・トランスレーション」が好きなファンは大満足出来たんじゃないでしょうか。私も、気に入りました。
とはいえ、「ロスト・イン・トランスレーション」でもタダでさえ薄かったドラマ性は、ティースプーン一杯から茶さじ一杯に後退してしまってます。ぶっちゃけ、眠い気持ちはよくわかる(笑)。「フランス革命前夜を生きた波瀾万丈の女性の物語」などを期待して見に来た人は激怒しかねないような映画です。でも、いつもいつも映画でハラハラドキドキなんてする必要ないと思いません?
ま、さすがにみんなこんな映画になったら、それはかなり困りますけど(笑)
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Comments
ほほぅ。
今度両方観てみよ。
最近映画みとらんなー。
Posted by: タコチン | February 10, 2007 11:31 AM
ティースプーン一杯から茶さじ一杯
どっちが大きいんだ
Posted by: 245 | February 11, 2007 04:11 AM
> ティースプーン一杯から茶さじ一杯
そりゃ、茶さじでしょ。あの、デカイ耳かきのような奴をイメージしてくれい
Posted by: Tambourine | February 12, 2007 05:41 PM