ヒトラー 最期の12日間
そりゃ、楽しい映画じゃないことは覚悟していったけど、やっぱりキツイね。
作品としての出来はとにかく素晴らしい。ヒトラーの人間性を描くことの賛否両論はあるらしいけど、ヒトラーが狂った殺人鬼だったとしても何も解決しないし、ヒトラーに人間性があったとしても、それはヒトラーがやったことの責任を軽くするものでは一切ないし、議論の本質からずれているような気がする。そもそも、ヒトラーという一人の人間の力で、こんなことが出来るのかという疑問もある。赤狩りのシーンも、親衛隊が市民を殺すシーンもある。それは別にヒトラーが引き金を引いてるわけじゃない。
というよりもですよ、私はあまりにもヒトラーとナチスについて何にも知らないですよ。よっぽどギレン・ザビのことのほうがよく知ってるわけですよ(笑)。今となっては、事実は誰かの視点を通してしか知ることが出来ないのだから、こういうものを見る機会があれば見に行くしかないわけです。それはもう、人として。ドイツ人が、身を切る思いをして、こんな見る人を幸せにしないけど必要な映画を作ったんだから、我々日本人はまず、それを見なきゃいけない。私には、この映画を見ておく義務があるし、この映画を見たことによる権利が生まれるとすら思う。要は、まず無知は罪であって、最低限のことを知らない奴に発言の権利はないということです。「歴史は繰り返す」って言葉があるけど、「ああ、いま繰り返してるかも!」と思うためには知らないといけないしね。戦争責任とか、そういう後ろ向きなことは置いておくとして、今につなげないと思うんだよね。たとえば、プロジェクトやっててあんなおっさんいますわ(笑)。そういうときに思うわけですよ。「ここはまるでナチだぜ」。組織というのは、腐るものですから、気がつくことが大事
そう。今を見つめるために知らなきゃいけないんだよ。韓国や中国は、小泉総理が靖国神社に行くと怒る。過去への反省が足りないという。日本が軍国主義になるという。自衛隊は、憲法を変えればすぐにでも他国と戦争が出来るという。それを聞いて、日本人はこう思う。
「でも、この平和にボケきった日本人を見て、戦争なんて出来ると思うの?」
「日本が軍国主義?何を言われても言いなりの国が、侵略戦争?」
しかし、否定する根拠は何だろう。日本人はあの時なんで戦争をしたんだろう。今、実感としてヘソが茶を沸かすぐらいにしか感じられない「日本が軍国主義に走る」という発言は、あの時と今と何が違うから否定できるんだろう。だって、あの時のことを、何にも知らないよな。
まず、やっちまったことを知ることだよね。多分、ドイツ人以外だってヒットラーを産む可能性はあるんだから。私たちの世代は、戦争で被害を受け、今も恨みに凝り固まってる人たちにかける言葉はないわけだけど、だからこそ、過去の過ちとは感情と切り離して向き合うことができるはずだ。我々がやるべきことをやらないと。
繰り返そう。まず、知ることだ。
この映画を人に勧めるのは正直言って、心苦しい。なんで好き好んで映画みて嫌な気持ちにならなきゃいけないんだと(笑)。でも、ほんの少しでも興味があるんなら、映画館で見てほしい。音響的な理由もあるし、大勢のお客さんの中で(渋谷シネマライズは、結構な入りだった。若い女の子も、年配のご夫婦もいた)、やりきれない気持ちを共有したほうがいいと、精神衛生上、思う。一人で部屋で見る自信は正直ないよ、私には。
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