教皇選挙
フランシスコ教皇の死によりいきなりタイムリーな映画になってしまった「教皇選挙」を遅まきながら観てきました。
全世界13億人の信者を抱える宗教のトップですから、新しい教皇が選ばれるのはもちろん歴史的に大きな出来事です。とはいえ、大半の日本人にとって馴染みがないことといえばそうでしょう。なくなったフランシスコ教皇はかなり改革派の教皇だそうですが、それゆえにバチカンの内部では保守派と政治的な対立などもあるんだそうです。ちなみに、この人はアルゼンチンの人で、初めてのイエズス会出身の教皇なんですって。イグナティウス・ロヨラやフランシスコ・ザビエルが作ったあのイエズス会です。まだあるんだね(私のカトリック知識はそのレベルです)
そういうバチカン内部あるいはもっと世界的な保守派とリベラル派の分断を背景にしているこの映画。もちろん、フィクションですがフランシスコ教皇が選出された2013年のコンクラーベ(教皇を選ぶ選挙のこと。この映画の原題もコンクラーベ)が直近ですから、それを取材して作っているのは間違いないですし、フランシスコ教皇に様々な批判があることも踏まえているんでしょうな。
さて、バチカンに政治的な思惑が渦巻きまくっているであろうことは確かですが、それと共に個人的な野心だって渦巻きまくっていることも確かなんでしょうね。劇中の登場人物のセリフで「枢機卿になって、教皇を夢みない奴なんかいない。みんな選出されたら名乗る教皇名を心に決めているものだ」みたいなことをいう奴がいるんですが、そりゃまあ、そうかもですね。枢機卿は100人以上いるので(だって、世界中のあらゆるところにいますからね。フランシスコ教皇はイタリア系のアルゼンチン人ですが、アラブ人だって、インド人だって、アフリカ人だってそりゃいるでしょう。ちなみに、今、日本人の枢機卿は2人います)、みんながみんな教皇になりたいと思ってるわけじゃないと思うんだけどね。
で、コンクラーベってのは、世界の枢機卿が集められて、ただひたすら決められた得票数を取る候補者が現れるまで秘密投票を繰り返すという仕組みになっています。なので、最初は投票結果はかなりバラバラなんですが、それを見込みのある候補者にみんなが絞っていって、最終的に1人を選び出すと、そういうことですな
で、権謀術数や説得や蹴落としが起きます。いや、仮にも聖職者の集まりなんだからこんなにドロドロするかってぐらい、映画ではドロドロします。ここはね、実際のところがどうなのかは知りませんけど、かなりハデにいろんなことが起きます。なので、「なんか映像がキレイな感じの地味なドラマなのかな。眠くなる?」みたいな気持ちで観に行ったんですけど「めちゃめちゃエンタメやん」と思って観てました。ミステリーっぽさもあるんですけど、別にトリックとか謎解きとかはなく、単にドロドロしてます。なので、人間関係を示すために公式サイトにキャラ相関図がありますね。
みんなめっちゃキャラが立ってるので(逆にちょっとカリカチュアしすぎだろとも思います)、別にこれを観ておかないと関係がわからなくなるような映画ではないです。単に「ドロドロしてんねん」という図ですね(笑)
主人公は右上のローレンスという人です。首席なのでコンクラーベを仕切らないといけない人です。世界中からクセツヨ枢機卿が集まってくるし、この人は一応リベラル派なので、リベラルの有力候補のプッシュもしつつ、中立な選挙をやりたいと考えています。でも、「もうはじまるよ。隔離するよ−」って言ってるのに、「教皇がこっそり任じていた誰も知らない追加枢機卿が来てますけど?」とか言われたり「なんかあの人悪い噂があるんですけど、マスコミとかって大丈夫ですか?」って言われたり、次々に面倒が降りかかってきます。
あるシチュエーションで、次から次へと問題が起きるけど、なんとか選挙をやり遂げないと・・・と頑張るローレンス首席枢機卿。構図は、言っちゃえば三谷幸喜みたいです。一切笑いの起きない三谷映画(笑)。有力候補者の身に、次から次へと困ったことが起きる。ローレンスもいろんな人からプレッシャーを受ける。でも、きっと亡き教皇はコンクラーベを自分に仕切って欲しいと思っていたから自分が首席を外れたいと言ったときに慰留したんだろうと信じ、彼の思いに応えて必死に頑張ります。そして、驚きの結末は・・・いや、驚きました。そうくるか。幾重にも仕掛けられた脚本の構造に舌を巻きました。これは一流のエンタメだし、ただエンタメに留まらず、この時期に世界に出す意義があるテーマになってる。なってるけど、やはりなんといっても
エンタメとして面白い
3月から公開してるからもうすぐ終わっちゃうかもだけども、観られるんならすぐ観に行くべき。これは面白いよ
Recent Comments