« March 2018 | Main | May 2018 »

Ready Player One

レディ・プレイヤー1を見てきました。

さて、皆さんご存じの通り、日本では「ゲームウォーズ」というタイトルで発売された小説の映画化でして、「ゲームウォーズ」の発売当時はそのオタク愛の深さと、節操のないオマージュのぶち込み方にかなり話題になりました。もちろんオタクの間では「外人さんがこんなに日本のアニメやゲームを好きでいてくれて嬉しいよな」という好意的評価が多かったし、それをぶち込んでいて、かつVRゲームものという今や「ありがち」と言ってもいいネタにもかかわらず、ディストピア化している現実世界の設定も上手いこともあって、高く評価されていました。

しかし、その当時から本の帯には「スピルバーグが映画化!」って書いてあった(んだっけ?あとがきに書いてあったんだっけ?))ので、みんな「ん?レオパルドンVSガンダムVSメカゴジラVSウルトラマンって、いったいどんだけの権利処理が必要なのよ、これ?」と、先行きに不安を持っていたのも確か。スピルバーグの名声を持ってしても、東宝VSサンライズVS松竹VS円谷はいくら何でもやり過ぎじゃね?(笑)

だがしかーし。私がその不安をブログに書き綴ってから、早3年。ついに公開されました。ウルトラマンは無理でしたねー。今、確か海外の権利で円谷は揉めてるんですよね。まあ、しょうがない。レオパルドンも無理でした。パンフレットには「海外での知名度が低すぎる」って書いてありましたけど、いや、日本でも十分に低いでしょう(笑)。スパロボに出てからおいでと。でも、ガンダムVSメカゴジラはやっちゃったよー。

いやー、なんつーかね。メカゴジラもガンダムも、オアシス(この映画のVR世界の名前ね)の中のメカゴジラとガンダムだったから、戦っててもあんまり違和感なかったですね・・・というか、それぞれに個別に違和感ありました(笑)。メカゴジラはあんまり詳しくないからそうでもないんですけど、ガンダムはねー。RX-78-2は登場していきなりZZっぽい見栄を切ってぴょんぴょん飛び回ってましたけど、RX-78-2はそういう動きはしないんですよ!あとね、SEが違うとだめですね。駆動音とビームライフルの発射音をアレにしてくれないと。でも、あの世界では、ガンダムは(利用時間制限があるスペシャル版とはいえ)あくまでアバターの1つだからオリジナルと違ってていいんですけどね。ガンダムそっくりの着ぐるみみたいなものってことだから。もっとも、サンライズもいろんなガンダムを作ってきましたけど、「俺はガンダムで行く!」と登場人物が言っておもむろにガンダムに変身するってのは初めて見たから、あの変身シーンは震えたわー。

全体的にも凄く迫力あってよかった。最近のハリウッド映画の派手さって、あんまりにもあんまりで「んな、アホな。いくら何でもむちゃくちゃや」というようなもの(特にコミック原作のものとかね)が多くてちょっとなーと思ったりするんですけど、コレの場合はなんせVR空間内の出来事なんで、ムチャクチャな方がリアルっていう(笑)お得な設定。冒頭の「マリオカート2045」(笑)もほんとおバカなんですけど、ティラノサウルスやキングコングがばんばん襲ってくるこれ、ホントにゲームでやりたいなあ。

全体的に原作のぎゅぎゅっとマニアな試練(例えば、映画の一場面を一字一句再現しろみたいなのがある)を見た目に楽しいものに変えているセンスは映像化としてすごく良いと思います。最後はすっごい古いゲームをやるんですが、敵役の兵士たちがそのゲームの前に一列に並んで、失敗したら床が抜けてドボンっていう地味なシーンもすごく面白くなってたし。ここぞっていう格闘シーンで「現実ではまだしも、こっちではボクの方が強いぞ」っていって、波動拳打っちゃうなんてのも楽しい。期待以上のものを見せてもらいました。さっすがスピルバーグ。

ただし、大きな不満点があります。それは、VR世界「オアシス」の扱い。

原作では、オアシスは社会インフラの1つとして成立しています。当初はVRゲームとして作られたんですが、その仕組みを利用して学校もオアシスにあるし、オアシス上で働いている人もいる。MMORPGを体験したことがある人なら、もしMMOをVRで作ることが出来たら、全身のモーショントレースなんて出来なくても日常生活のかなりの部分をそこで出来ることが想像出来ると思います。

俗に「エモ」などというコマンド入力でキャラクターにモーションを取らせる仕組みは、非常に便利です。逆に「エモ」を使いこなしていると、いかに人間が日常的にノンバーバルな意思疎通手段を使っているのかよくわかります。チャットや電話会議などを使っていると、自分が頷いたり、ちょっと眉をしかめてみたり、斜め上に視線をずらしてみたりということで相手に言葉にはならないメッセージを送っていて、それが相手に伝わらないことの不自由さを感じます。実は言葉はもの凄く不便なのです。Slackの絵文字リアクションやLINEのスタンプなどはそれを補うことができるのでユーザーに「それがないと満足にコミュニケーションが取れない」というほどの機能だと感じさせるわけです。

それを踏まえると、VRでのミーティングは非常に可能性を感じます。いや、ミーティングならむしろ自分のアバターも他社のアバターと同時に客観視点で見ている方がやりやすいと感じるかも知れません。学校の授業もそうでしょう。先生が言ったことがわかりにくければ、自分のアバターに「ん?」みたいなモーションを取らせる。それを言葉で「え?」とか「ちょっとわかりにくいです」と言ってしまうと完全に話の腰を折ってしまうわけですが、クラスの数人が同時に「ん?」というようなエモを取った場合、先生はそれをフィードバックとして受け取って何か対応するかどうかを選べるわけです。むしろ、授業はやりやすいかも知れませんね。

仕事に限らず、食事だって例えば、参加者全員に同じものを出前できるならばオンライン上で「オンライン試食会」みたいなことは可能なわけです。それはたぶん会食の機能のかなりの部分を実現できてしまう。それを考えると、オアシスのようなVR世界が現在のスマホのように「好き嫌いに依らず、持っていないと生活が成り立たないもの」になる可能性は非常に高いわけです。むしろ、仕事はVRヘットセッドをするけど、オフの時はしないなんてことが普通になることはあり得ます。今でも、PCで趣味の世界を広げている人がたくさんいる一方で、仕事以外ではPCになんて触りたくもないという人も大勢居るように。「ゲームウォーズ」の世界のディストピアは、そのようにデマンドがオンライン世界に行ってしまったが故に現実世界のプライオリティが下がった結果の社会として書かれていました。

ところが、映画のオアシスはあくまでエンターテインメント世界。世界がディストピア化したがために、みんながオアシスに「逃避している」というように描かれていました。いや、そんな簡単な話じゃないし、だからこそ敵役の企業がオアシスの覇権を握ろうと、それこそ人殺しも厭わない活動をするんだし、オアシスの創始者であるハリデーが「オアシスがただのゲームだったころは良かった」というようなことを言うんだし。バーチャル世界では全ては得られず、現実世界も大事なんだよってことは間違いないんだけど、この映画の最後でオアシスの管理者権限を得たウェイドが「火曜と木曜はオアシスをお休みにします」っていうのは完全におかしいんです。だって、「火曜と木曜はスマホを起動しなくします。めざせリア充(はあと)」ってアップルやグーグルが言ったらどうなると思います?そんなお休みにできるような世界だったら、IOIは人殺しまでしてオアシスを手に入れようなんてしませんて。

その辺りの、「あくまでオアシスはゲームです」っぽい解釈を映画で取ったのは何でなのかはよくわからないんですが、それ故に原作が評価されたポイントである「ディストピア化している現実世界」の魅力をスポイルしてしまったのは残念なところです。ラストのラストがそんな違和感で終わったのは残念だったかなー。

でも、全体としてはオタクのバカ話だし、そこがこの作品の良いところです。その点ではスピルバーグが思いっきりバカ話を膨らましてくれているので、満足度は高かった。オタク的な教養の高さによってどのぐらい楽しめるかは変わると思いますけど、全体としてはよく出来てるお話なのでオススメです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

アルテミス/アンディ・ウィアー

処女作「火星の人」でスマッシュヒットを飛ばしたアンディ・ウィアー待望の2作目。待ってました!

「火星の人」はものすごく面白くて、大好きで、何度も読み返した小説です。特に好きなのが、NASA側のチームが、ワトニーがパスファインダーを回収に向かっていると気付くシーン。他にも好きなシーンはたくさんあるけど、パスファインダーがあること自体はフィクションじゃなくて事実だからあれはこの小説のための仕掛けじゃないですよね。それをあのように上手く使うというのは凄いなと、すごく感心しました。

一方の今作「アルテミス」は、ちょっと未来に月面に建設された都市アルテミスが舞台。となると、その架空の都市自体はすべて著者が考えることになります。主人公は様々な問題を月面都市という舞台を活かして立ち向かっていくことになりますが、そこで「そうか、そうくるのか!」と思わせるためには、そこまで舞台をちゃんと説明しておかなければなりません。いろいろな施設、制度、生活習慣、キャラクターなど、基本的に物語で使うものだけを事前に登場させておくことになりますから、そのあたりはとても大変。

で、その大変な世界設定はすごく魅力的。この月面都市がどうやって成立しているのか。なぜナイロビ時間なのか。なぜ通貨単位が重さなのか。ワクワクします。そして、それらがすべてちゃんとストーリーに結びついてます。さすが宇宙オタクなウィアー。素晴らしい。まあ、ただそれゆえの多少の飲み込みづらさはあって、昨今のラノベなどはそれを避けるために異世界に飛ばされても女の子がセーラー服を着ているような世界を平気で作っちゃうわけですけども、いいじゃないですか。こういう迎合しないきちんとした地球外技術も異世界文明もない世界設定。むしろ、嬉しい。異世界も好きだけどね。

一方、キャラクターの方では難しさがあって、今作の主人公は不良の女の子(といっても26歳。アラサー?)。前作では主人公のワトニーを始め、登場人物のほとんどはNASA職員なのでエリートだったわけですが、今作ではアルテミスがちゃんとした政府の管理をされていない西部劇みたいな世界ってこともあって、わりとみんなならずもので開拓者精神に溢れてます。そんななかで主人公のジャスミンちゃんは、敬虔なイスラム教徒のお父さんに反発して家出中(といっても26歳)の貞操観念緩めな元非行少女で、今はポーター兼密輸業。仁義に固いところと、技術者として頭が切れるところは周囲から認められてますが、いつも「くたばれ」を連発して周囲の大人の眉をひそめさせてます。

前作のファンにはどうもこのキャラのウケがよくなかったようですが、まあ、感情移入しにくいですよね、そりゃ。このジャズちゃんが大金持ちにたぶらかされて、犯罪に手を染める辺りまでは確かに読みづらいです。

ところが、その犯罪行為が思わぬことに・・・と、ここからの展開がまあ、面白い。最後はもうえらいことになります。えらいことになるんですが、そんなえらいことになってもあんまり気にしないアルテミスの人々もなんだか可笑しい。最後の200ページは一気に読み切りました。堪能した!

というわけで、前作が好きな方には文句なくオススメ。可愛い女の子が大活躍するライトノベル好きにだって楽しく読めちゃう・・・と思うよ、たぶん!


| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

« March 2018 | Main | May 2018 »