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January 18, 2018

コンピュータが人間の直感力を手に入れたから、今のAIはすごい

AlphaGoが囲碁の世界チャンピオンを破って、新世代のAIが世の中を揺るがしてから早2年が過ぎ、一般のレベルまで「今、AIってすごいらしい」ということが浸透しました。

しかし、なんで突然そんな進歩が生まれたのか、何が変わったのかということについて、一般のレベルでの理解は進んでないように思います。ヘタしたら、ウチの業界にいても鈍い奴は何もわかっていないです。そこで、すごーくかみ砕いて何が起きているのかをざっくり説明してみたいと思います。

まず、これまでのコンピュータというのは、「ルールエンジン」として使われてきました。AならばB、CならばDというロジック、あるいはルールを入力すれば、その通りに判断してくれる。人間ではとても覚えられないし、チェックも仕切れないような大量のルールを瞬時に判定してくれるのがコンピュータの利点でした。この能力で私たちの生活は圧倒的に便利になりました。そして、ちょっと前までのAIもまた、基本的にはルールの塊として動いています。基本的に「○○という条件なら、××する」という指示を人間からもらって、何かを判断しているのです。

「コンピューターのように冷淡な判断」とか「機械的に処理できる」などの表現をするときには、背景にコンピュータとはこのような「ルールエンジン」として振る舞うものであるという仮定がありました。

ところが、ルールを渡さなくても判断できるプログラムが登場しました。めちゃめちゃたくさんの猫の画像を渡すと、画像を見て猫かどうかが判断できるようになったのです。これまでなら「猫とは、耳が2つあって、目が2つあって・・・あれ?犬とどう違うんだ?」と「猫の見分け方」を人間が考えて教える必要がありました。ところが、それが不要になったのです。

つまり、これは人間の直感力をコンピュータが備えたことを意味しています。「どうしてかは説明できないけど、経験から言ってこれは猫だと思う」と、コンピュータが判断するということなのです。碁打ちのAIが世界チャンピオンに勝ったとニュースになりましたが、なんで突然、碁が強いAIが出来るようになったかというと、「経験から判断するに、盤面を見る限り、これは先手が勝ちそう」ということをコンピュータが見分けられるようになったからなのです。碁や将棋が得意な人が「先手の味が良い」とか「後手が押してる」などの曖昧な表現で下していた形勢判断を、コンピュータも出来るようになりました。

しかも、コンピュータの「経験」はやろうと思えば24時間いくらでもできるので、人間を遙かに凌ぐレベルになりえます。そして、現実に、凌ぎました。AIが碁で人間に勝つということは、コンピュータの直感力は人間より高いという意味です。ただし、経験に基づく判断は100%正確ではありません。人間と同じです。そりゃそうです。どう考えたって猫にしか見えない犬ってのも存在すると思うので(笑)、間違えることはあります。

そして、「猫だと思った理由」を説明できない以上、間違った理由も説明できませんし、頑張って猫の見分け方を教えたつもりだったのに、どういうわけか「他の犬は大丈夫なのに、チワワだけをことごとく猫だと判定するAI」が爆誕してしまった場合、別のデータで教育し直すしかありません。どういうデータで教育すればちゃんと実用的なAIが生まれるか、どのぐらいの量で十分かというのは人間側にある技術なので、ちゃんとしたAIを作ることはプロが行うべき難しい仕事です。

さて、この直感力を生み出す仕組みについては難しいので割愛しますが、なぜここ数年、突然この技術が世に出てきたのかについては単純で、1つはこれが可能なレベルまでコンピュータの処理能力が上がったこと、もう1つはインターネットを通じて膨大なデータを入手することが可能になったことです。

GoogleがなぜAlphaGoを作ることが出来たかと言えば、ひとつにはGoogleは他の誰も持っていないようなたくさんのコンピューターを同時に動かして、すごくたくさんの計算をすることができるからです。それは、インターネット上からあらゆる情報をくまなく探し出して検索できるようにするために必要だったから作ったんですが、その「巨大計算工場」を使って強いAIを作ったのです。ただし、コンピュータはどんどん性能向上しているので、そのうち誰でもできるようになるかもしれません。

もうひとつ、教育に使うデータですが、これはすぐ想像出来ると思います。例えば、インターネットがない時代に、何百万枚という猫の画像を手に入れることは岩合光昭さんでも不可能なことだからです。そして、猫の画像を集めるには当然、ググるでしょうから、Googleがこの分野に強いのはむべなるかな。

さて、この「コンピュータの直感力」ですが、めちゃめちゃ応用範囲が広いです。画像認識だけでも相当にたくさんの応用が出来そうですが、例えば英文と対訳の日本語の文が大量にあれば、英語の文法も日本語の文法も知らなくても翻訳プログラムが作れます。びっくりですよね。でも、まあ、これは人間でもできることですから、たぶんできます。

また別の例ですが、キーボードをタイピングしている時の音と、それが男女どちらの人の録音かというデータが大量にあれば、キーボードをタイピングするだけで男女を見分けることが出来るかもしれません。え、ホント?

これ、できるかもしれませんし、できないかもしれません。実際にキーボードのタイプ音と性別の間に相関関係があるかどうか、調べてみないとわかりません。世の中にはこのような「あるかどうかもわからない相関関係」がたくさんあって、とんでもないことが出来る可能性があります。しかし、とんでもない間違った相関関係を発見してしまうこともあって、使い方には注意が必要です。

なんせ直感ですから。理屈ないですから。理屈で考えたらおかしいだろうってことを経験次第で疑いもなく判断してくるのが直感です。周りに理屈で考えたらおかしいのに、「オレの経験」からむちゃくちゃなことを言ってくるオッサン、いますよね?自分が育てたAIがそうならないようにしないといけません。直感だけではダメなのです。

というわけで、なかなかに作り方は難しく、大量のデータと速い計算機が必要なのでお金と電気がたくさん必要なために広く普及するには時間がかかるかもしれませんが、いったい全体、何ができるようになるのか、世の中がそれによってどう変わるのか、想像するのも大変だというような技術が生まれてしまったのです。そして、今まさに世界中の人が「それはやべぇ」ということで色めき立っているわけです。

おわかりいただけましたでしょうか。

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