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February 05, 2017

Nintendo Switchとは何なのか

F1も開幕前のマシン発表時期が1年で一番楽しみだったりしますが、任天堂の新しいハードが発表になりました。発売が3月3日ということで、これから1ヶ月の間、あーでもない、こーでもないと妄想する楽しい時期です。

さて、1/13の発表会に関する情報は皆様ご存じの上ということで話しますが、私はNintendo Switchは、Wii Uでやろうとしたこと、できなかったことをちゃんと分析した上でその問題を解決しようとしたハードウェアとして、非常に「理にかなった」マシンになっていると感じました。

Switchの名称が公開になったビデオが公開されたタイミングではWiiのモーションコントローラーを大胆に使った遊びやWii Uの2画面を使った遊びなどの「新しい遊びの提案」が無かったように感じられてがっかりしていたのですが、1/13の発表会ではそれはJoy-Conに詰め込まれていることがわかり、コンセプトがはっきりしたようです。

Nintendo Switchは、実はWiiからのキープコンセプトであり、「あるべきだったWii U」と言って良いでしょう。ではまず、Wii Uとは何だったのかからまとめましょう。

WiiとDSが大ヒットしている状況において、任天堂は据え置き機としてのWiiに特に問題を感じていなかったんだと思います。ただ、コンピューターですから処理能力の相対的な低下はもちろんありますし、地デジ化によるテレビの大型化・高解像度化の流れへの対応も必要でした。この時点で任天堂が改善しようと思っていたことは主に2つだと考えられます。

  • 据え置き機を(モニター規格のひとつの到達点である)1080pに対応すること
  • DSを「みんなで遊べる」ものにすること

2つめの点ですが、任天堂がゲームを「みんなで遊べるものにする」「お母さんに嫌われないものにする」ことに大きな情熱を持っていることは皆さんご存じの通りです。この点がソニーとはまったく違う点です。

子供がゲームを遊ぶために家族のためのものであるリビングのテレビを占領してしまうのは良くない。しかし、子供がリビングで携帯ゲーム機をやっていて何をやっているのかお母さんがわからないのも良くない。

そう考えると、Wii U GamePadは当時としてはまっすぐに到達する解だったことがわかります。DSを屋外に持ち出さないかわりに、CPU/GPUを外部化し、画面を大型化したものだと考えると、奇をてらわない素直なハードウェアだと思います。

実際、ドラクエ10をやるためには非常にいいハードでした。日課の討伐をこなしたり、1人でふらふら探索したりはテレビを観ながらや、寝っ転がりながらGamePadで遊び、シナリオやボス戦になったら大きな画面に映して楽しむ。Wii Uがやりたかったのはコレでしょう。

それ以外の点は、Wiiのコンセプトをそのまま継続するつもりでした。したがって、Wiiのモーションコントローラーを使った遊びは継続的に遊べるようにしました。モーションプラスは新しいバージョンのWiiリモコンに内蔵されるようになり、引き続きWiiリモコンはWii Uの標準のコントローラーとなりました。

しかしながら、ここに誤算がありました。Wii UにWiiリモコンが標準でついてこなかったことで、Wii UではWiiリモコンを前提とした遊びがそれほど進化しなかったことです。特にサードパーティは、標準でついてこないコントローラーを前提にしたソフトを作るのは二の足を踏みます。

でも、任天堂がWii UにWiiリモコンを付けなかった理由もよくわかります。なにせ、Wiiは史上最も売れたハードウェアです。Wii Uを買ってくれるお客さんの家のほとんどにはWiiリモコンがあるはずです。であれば、そのコストを省いて新しい部分、つまりGamePadをリッチにする方に力を入れよう。あの時点では正しい判断だったんじゃないでしょうか。実際、Wiiリモコンがついてきたら、私は文句を言っていたような気がします。

しかし、そもそもWiiリモコンがWii Uの標準コントローラーであるという認識はあまり広まりませんでした。やはりGamePadの印象が強いですし(そりゃ、プッシュもしたでしょうし)。でも、GamePadの役割は「持ち出せないかわりにテレビにも映せるDS」だったのですから、ユーザーの目にそれほど新しく映らないのもやむを得ません。

さらに、当時のハードウェアの限界で1台のWii Uに2台以上のGamePadを付けることも難しいことでした。2台までなら・・・という話題も出ていましたが、実際にはそのトライはされませんでした。

手元のディスプレイとテレビとの2画面を使った遊びにはいろいろ可能性があったと思います。しかし、やはりGamePadを持つプレイヤーとWiiリモコンを持つプレイヤーの非対称な遊びに限られるというのはちょっと残念な点でもありました。もっといろいろやれることはあったんじゃないかとは思いますが、あまりトライされなかったのは残念です。

さらに、どうやらWii Uには部品供給に問題があったという噂があります。非常に重要なパーツの供給に問題が出てしまい、生産数がそのパーツの在庫限りになってしまったというのです。期待より売れていないのに供給不足になったり、スプラトゥーンのヒット中にセットを企画出来なかったり、ついにはSwitchの発売を待たずに生産終了してしまったり・・・という動きを見る限り、うなずける噂です。

任天堂自体は十分な資金を持った企業ですし、そもそもIPも開発力も会社の規模を考えると非常に強力ですから、特に新世代機を焦る必要はないと思いますが、売るものがないとなると話は別。任天堂ならばWii Uのコンセプトを煮詰め直したり、新しいインターフェースの提案をすることでさらに遊びの提案をしていくことは出来たでしょう。

実際に、Wii Uのローンチタイトルを作ったメンバーがその経験を活かして作った「スプラトゥーン」は待望のヒット作となります。その発売が2015年5月。この2015年の年末がWii Uのひとつのピークになり、ハードの売り上げは急激に改善します。しかし、Wii Uの販売台数の推移を見ると、2016年2月から急激にWii Uの販売台数が落ち込み、しかも、市場では品薄感が出ていました。Wii Uはもっと売れるポテンシャルはあったのに、売ることが出来なかった。Wii Uが短命ハードになることはもっと早くわかっていたのでしょうが、スプラトゥーンのヒット以来、NX改めSwitchの開発が非常に焦って行われたことは確かでしょう。

さて、そんな状況を背負って生まれたNintendo Switchですが、基本的にはキープコンセプト。ここまでで述べたWii Uの問題点を解決するものであるはずです。その問題点とは、

  • Wiiリモコンが標準でついてこない
  • 複数のGamePadを持ち寄った遊びが提案できない

というものでした。

よくWii Uの失敗点として、「Wii U独自の新しい遊びの提案がなかった」と言われましたが、私はそんなことはないと思います。WiiのときとWii Uのとき、どちらも任天堂の姿勢にそんなに変わりはありません・・・というか、基本的にずっと任天堂は変わってません。問題は単純に「当たったか、当たらなかったか」に過ぎません。マリオをやるユーザー、ゼルダをやるユーザーはそのブランドが維持されている限り出来がどうでもやるものですから、ゲーム機のヒットに影響しません。もちろん、ダメなゲームを連発しているとブランドの力が落ちてきてしまいますが、ブランドが維持されている限りダメなゲームでもその時は売れるからです(問題はその次作です)。

サードパーティのゲームが少なかったとも言われましたが・・・Wiiにヒットしたサードパーティのゲームなんてありましたっけ?良くも悪くも任天堂のソフトウェアだけで成立してしまっているのが、任天堂のハードです。なので、巷で言われるWii Uの失敗の原因なんて大抵的外れです。というか、問題は「何でWiiは当たったか」なのです。後からはなんとでも言えますが、基本的には「何が当たるかなんてわからない」わけで、良いゲーム、新しいゲームを作ってそれを売る。大抵ははずれて儲からない。いくつかはヒットしてちょっと儲かる。時々、大当たりして儲けることもある。おもちゃの会社である任天堂の商売は、基本的にはそんな感じなわけです。

そのあたりもプラットフォーマーであるPlaystationとソニーとは違うところで、さらに言えば、PS4は性能差が開きすぎていてもう勝負にもなりません。狙っているプレイヤー層もかなり違ってきているのではないでしょうか。ゲームファンはどちらも買うからどうでもいいのですが、自分のお金が自由にならない子供達や、ゲームをがっつりやる習慣の無い人たちにどのぐらい買ってもらえるのかが、任天堂ハードが毎回取り組んでいるところだからです。

というわけで、近所の子供達がすべからく持っていて、夕方誰かの家に集まってお母さんに「ご飯よー。お家に帰りなさい」と言われるまで打ち興じる。そんなハードであるためにWii Uに足りなかったものは、実は「みんなで遊びづらい」という当初のコンセプトとは反した結果でした。当時を振り返ると仕方ないことがいろいろありましたが、ボタン掛け違っちゃいました。

というわけで、Joy-Conと名前を変えたWiiリモコンが2つ標準でついてきて、ハードを所有している友達が3人集まれば、Wii Uでは不可能だったTV+GamePad2台で遊ぶことが可能となるNintendo Switchは、間違いなくWii Uの欠点を解消したハードであり、大ヒットゲーム機Wiiの遺伝子を継ぐ正統な後継者なのです。

とはいえ、です。

繰り返しますが、Wiiがヒットしたからといってその後継機がヒットするかどうかは別の問題です。Wiiが発売された2006年と2017年では、人々の娯楽に対する考え方や流行る遊びは当然違うでしょう。しかし、ゲーム業界としてみれば、あれだけWiiがヒットしたにもかかわらず、Wiiの後継となる遊びはまったくないと言っても過言ではありません。Kinectによるプレイヤーの動作の認識によって技術的には当時より高度なことはできるようになりましたが、ではそこからヒットゲームは生まれたのかというとさにあらず。Kinectを使って任天堂にゲームを作って欲しいと思っているゲームファン、実は多いのでは無いですか?

任天堂のゲームへの様々な提案の全てがヒットしているわけではありませんが(というか、ほとんどが失敗だと思いますが)、なんせ「遊びの提案」ですからヒットするかどうかは誰にもわかりません。どんどん新しい挑戦をしていくべきです。PSVRはその挑戦のひとつですが、これがヒットするかは誰にもわかりません。同じようにWiiでトライされたモーションコントローラーによる体全体を使った操作の提案もまだまだ突き詰められたわけではありません。ゲームファンとしては、任天堂がPlaystationとは全く違う方向性の挑戦へ活路を求めていることは多様性の観点から、そして、それをやってくれて、過去に多くの成功を成し遂げていることが(新しいマリオを作ってくれることでは無く)まさに私たちの任天堂に対する期待であり、Nintendo Switchは「まだまだ進化したWiiでやれることを手放すつもりは無いんだよ」という任天堂の回答であるのですから、これを歓迎しないわけはないのです。ただ、これがヒットするのかといえば、それは今後の任天堂の頑張りと、ユーザーの嗜好の変化によるのでなんともいえません。

まとめます。

ここまで見たように、Nintendo Switchは「あるべきだったWii U」であり、2017年型のWiiです。頑ななまでのキープコンセプトですが、Wiiリモコンは乾電池が不要になり、手のひらにすっぽり収まるほどに小型化されました。Wii U GamePadはCPUとGPUが内蔵されたにも関わらず、画面の大きさそのままにぐっとコンパクトになり、友達の家でも使えます。この10年の間の技術的向上は随所に見られます。

さらに苦手だったネットワークサービスですが、やっとアカウントの統合ができ、Windows LiveやPlaystation Networkに見合うだけのものができるようです。まあ、コレに関してはまだこれから産みの苦しみが何度かあるでしょうが(失敗しないと学ばないものです・・・)、良くなっている兆候はあります。

従って、Nintendo Switchは「任天堂は諦めてないし、自分たちのやっていることを理解している」と評価されるべきなのです。

Nintendo Switchを批判するのであれば、まずこのコンセプトに対して批判するのか、コンセプトの具現化に対して批判するのかはっきりさせる必要があります。例えば、「PS4と値段が同じなのに性能が段違いに低い」という批判がありますが、見当違いであることがわかります。この批判はつまりPS4とNintendo Switchが同じコンセプト(PS4のコンセプトは、「コンソールに許される範囲の最先端のグラフィックスによるゲーム体験の向上」で、これも初代PSからの頑ななコンセプトだと思います)にあると過程していないと意味がありませんが、両者の道はもう10年も前に分かれたきりなのです。

当然、どちらに対しても批判はあり得ます。「まだWiiの成功体験を引きずってるんですか?」はコンセプトに対する批判。「Wii/Wii Uに加えるべき新しいインターフェースがあり得たのでは?」「Wiiのコンセプトの発展としてソフト側に新しい遊びの提案が薄いのでは?」は具現化に対する批判かな。そのあたりは私も気になります。開発がハードウェアの完成までで、ソフトウェアの煮詰めまでいってないんじゃ無いかしらん。

そして、WiiやWii Uにはあった毎日電源を入れてもらうための提案(チャンネルとかMiiverseとか)が今回はなーんにも聞こえてこないのも気になるところではあります。これまでもあんまり成功していないし、「どうせ流行らないからやめた!」っていうのでも別にいいですけど、Miitomoのようなサービスは懲りずに挑戦してますからNintendo Switchには何にも無いって言うのも、違和感はありますね。うーん、やっぱ間に合ってないんだろうなあ。

さて、もうひとつ残った論点は、Nintendo 3DSです。これは、体験会に行ってきたという元同僚のはくおうくんと(アストルティアで)議論したんですが、彼は「3DSの後継機は出ない。Nitendo Switchが据置機と携帯機を統合する」という意見でした。私はまったくそれは思ってもいなかったので驚きました。が、彼は「それを狙っていかない手はないし、そうできないならこのアーキテクチャの意味は無い」と言います。うーむ。確かにそれができればそれに越したことはありません。せっかくスマホ用のAPUを使うのだからそれはあり得ます。

ただし、3DSの良いところは家庭に1台ではなく、子供に1台買い与えられることが期待出来る点です。逆に言えば、3人兄弟のお母さんが1台3万円もするNintendo Switchを3人分ねだられたら溜まったものじゃないので、このままでは携帯機のポジションを代替することはできません。

しかしながら、アーキテクチャを共有した性能の落ちるAPUを使って、ドックを廃し画面が小さく1つのJoy-Conとしか繋がらないような簡易版Switchを1万円代で提供することは考えられるかもしれません。少なくとも、そこにNintendo Switchと何のつながりもない様なものを作ってしまってはまったくダメなので、内部ではいろいろと考えていることでしょう。どんなものが出てくるか、楽しみです。

ともあれ、Wii Uを買ったときにも同じことを書きましたが、任天堂からサイコーのゲームがでることが約束されているNintendo Switchは、最高のおもちゃです。今回ももちろん買わない理由はありません。ちと、ローンチソフトは寂しいラインナップ過ぎるし、奪い合ってまで欲しいわけでもないので発売日にはどうしても欲しい人に譲りますが、間違いなくスプラトゥーン2の発売までにはゲットします。というか、今回はヒット間違いなしタイトルなんだから同梱版スペシャルカラーとかも作ってください。それを待ちますよー。まあ、それが2台目でもいいけど(笑)。

はてさて、Nintendo Switchが作る世界はどんなものか。その全容がわかるのは発売日の3月3日を過ぎて、おそらくはまだもうちょっとかかるのでは無いかと思いますが、それなりにいろいろと考えているはずです。楽しみに待っていようじゃありませんか。

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