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立派な人しか生き残れない?

オリンピックエンブレムの話です。

個人的な見解を述べておくと、今回の撤回はとんでもないことです。撤回するとかあり得ない。この場合の私の判断の尺度は、「得か損か」です。「いやいや、金の話じゃねえだろう」とおっしゃいますか?あの、この話でいったい全体何億円の金が無駄になるか想像出来てます?何億どころじゃないかも。何百億かもしれませんよ?

まず、法律的な問題から言えば、どうやらこれは問題がなさそうです。訴えてるベルギーとかいう出来てから大して年月の経っていないような国の、リエージュとかいう聞いたこともないような一都市の美術館のマークと似ていたからといって問題にされてもねぇ。あ、ベルギーのビールとムール貝と芋は最高です。

あっちこっちの記事や、TBSラジオ「セッション21」の特集を聞いたところですが、こういうことみたい。まず、この美術館のマークが商標登録されていたとしたら、それはちとまずい。その場合は、まあ、大変だろうとは思うけど検索すればわかるっちゃーわかるわけで、採用する側も避けられる話です。しかし、今回はそうではない。

となると、著作権での争いになりますが、その場合

  • 争っている対象が著作物であること
  • 似ていること
  • 模倣したこと
の3点が成立することが必要ですが、実際のところ、これが成立するかどうかは全部が微妙。フォントは著作物にならないことは確定ですが、じゃあ、文字をかたどったロゴマークはといわれると微妙なラインだそうです。似ているかどうか・・・も、そりゃ似てることは間違いないですが、こういう単純な図柄での「似ている」の範囲はかなり狭く取られるだろうと。で、最後はまあ言わずもがな。「見たこともない」は悪魔の証明だからね。

かつ、訴えた側は別に盗用されて何か不利益を被っているわけではなく、むしろ有名になってよかったねぐらいのはずなので(この裁判に負けると大変な賠償金がくる可能性は否定できませんけど・・・)、裁判の決着はかなり大変のはず。差し止めの仮処分も止めないとどんどん不利益が拡大するってわけじゃないから無理筋でしょう。

ということは、2020年まで争っとけばいいわけですよ、ぶっちゃけ(笑)

ところが、法的な問題が発生したわけでもないのにこのエンブレムの使用について、デザイナーから辞退の申し入れがあったと。で、ですよ、法的に問題があったとしたら、このデザイナーに対して損害賠償を起こせるかもしれないけど、今回はそれはないわけです。「いや、よかれと思ってやったことで、こんなに叩かれてちょびっとの賞金と名誉ぐらいじゃ割に合わん」と言われてるわけですよね?

私が大会運営側なら、「んなお前の事情の知らん。このエンブレムの権利はすでにうちのモノだから、構わずに使う」と言いますね。だって、この選考にかかったお金、誰が負担するの?もう動き出してる諸々、どうするの?この先のスケジュールに間に合わなかったら、誰が責任とるの?コスト意識と危機感なさすぎでしょう。「ケチがついたエンブレム、観るのも嫌」だと?バカ言ってんじゃない。仕事でやってんだぞ。

さらに言えば、この先、かわりのデザイン、誰が作るんですか。そもそも、代わりって作れますかね?私がデザイナーだったら、この後のコンペなんて絶対に出しません。だって、そもそもあのエンブレムのデザイン、良く出来てますからね。開催地選考時の花のエンブレムの方がよかった?いや、そうは思いません。

色数もミニマムながら、あまりない色を使っていて、かつ、五輪の5色を除けば金銀はオリンピックをイメージさせる色だし、黒に金は日本的な色彩でもあります。図形の大きさの組み合わせは幾何学的に美しく、かつ単純ではないにも関わらず印象に残って、イメージだけなら不正確かもしれないけどすぐに手で描ける。そして、パラリンピックもまったく同じデザインの色違いだけで成立させる。これ、パクったとしてもなかなかの仕事でしょう。元のデザインより何倍も深みのある仕事がしてあります。

この先、代わりのデザインが出てくると必ずこのような観点での優劣の比較がされます。しかも、似てるデザインが過去にないか、ネット民に一斉にあら探しされること間違いなし。それも、当のオリンピックエンブレムだけじゃなく、過去の全仕事がです。あのね、そんなものに耐えられる人いないです。というか、耐えられる不燃性の精神力を持ったある種のバカしか出てこないです。あるいは、まったく無名の人ね。普通の人はそんなリスク取れないですよ。

全体として、すごい損したなーと。誰がか?日本がですよ。だってかかったお金、ほとんど税金だもん。誰のためにかかったお金?取り下げたのは「世間が許さない」だから、私を含めた全国の愚民の皆様のためです。おい、信じられるか?

これ、まったく同じことをここ数年、何度も感じてます。なんでトータルしたら損であることを正義の名の下に選んじゃうのか。それで誰が得したのか。

ぱっと思いつくところでは、まず、猪瀬都知事ね。おいくらかもらっちゃったんですってね。いいですよ、安い給料で無理目の仕事してんだから。もうやんないでねってことですよ。あるいは、任期を終えたら刑務所にちょっと入ってもらってもいいかもしれない。でも、仕事に問題ないんだったら仕事してもらった方がいい。あのね、交際禁止のアイドル選んでるわけじゃないの。実務出来る人が必要なの。桝添さん?悪くないですよ、別に。猪瀬さんのクビとって喜んでた人に聞きます。選び直す選挙に何億の税金かかると思う?バカなの?死ぬの?

あとは、サッカーのアギーレさんね。せっかく契約した有名な監督だったのにね。まあ、裁判になってスペインと行ったり来たりになると実務上ヤバい・・・って話はわからんでもないけども、可能な限りはやってもらった方が絶対に得でしたよね。はぁ・・・と、シンガポール戦を観てみんな思いましたよね。カンボジアには勝ってよかったけど、まあ、誰が監督やっても勝つよな、あれは。

ホントに、みんな普段どんな聖人君子と仕事してるのか知らないですけど、少なくとも私の周りはわりとロクでもない感じですよ?いい仕事するけど、しゃべらせたらメタメタな奴、いくらでもいますよ。あのデザイナーさんは広告代理店出身だからちょっと違うのかもしれないけど、デザイナーですからね。デザイナーが会見でうまく炎上を避けられなかったからといって、別にデザインが良ければいいわけで。大会運営組織の方は、そのあたりをうまくやるってことが職務のうちだと思うので、あの人達がめろめろでネットに燃料ぶちまけているのはかなりどうかな・・・ですけどね。

いい加減、世の中に立派な人なんていないってとっとと幻滅して、その上でダメな人たちでなんとかやっていくんだという感じで世の中回さないと。私だってそうとうダメな人ですからね。やってらんないですよ。「仕事ができて、人格も立派」なんて人にしか仕事させられない世の中にしたら、みんなが損するのにね。

やれやれ。

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NHK「漫勉」、次回は藤田和日郎編!。

すっかりアニメ以外のテレビはNHKしか見なくなりました。

レコーダーの全録対象チャンネルをNHK4CHだけにして、毎日その4CHの番組表だけ観て気になったモノを観ています。その他の地上波は別の全録機で全部録画してるんですが、なにかあったときにニュースを確認するだけになってますね。最近、それもあんまりないですなあ。

というわけで、これもまたNHKしか作れないだろうなあ、あるいは民放で作ったらひな壇の芸人がすごーいだの、えーっだの言って台無しにするんだろうなあという素晴らしい番組、「浦沢直樹の漫勉」。

漫画家の浦沢直樹さんが、漫画の執筆現場の密着映像をその被写体である作家さんと共に観ながら、漫画談義をするというもので、プレシーズンとして、「天才柳和佐教授の生活」の山下和美さん、「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじさんがゲストのバージョンが去年放送され、ついに、先週からシーズン1の放送が開始。1回目は「海月姫」の東村アキコさんでした。

なんていうか、浦沢さんはマンガも素晴らしいけど、でも、あのマンガの素晴らしさは、このホスピタリティから来てるのかも。なんてサービス精神の旺盛な人。そのサービス精神からくる探究心によって、浦沢漫画の凄みが出てるんだろうなというのが3人のゲスト分を観て、よーくわかりました。誰にでもできる番組じゃないですよ、これ。

そして、次回、9/11の放送は、あの富士鷹ジュビロ、もとい、藤田和日郎さん。否応なく盛り上がること間違いなし。

藤田さんは自身の漫画の後書きや、お弟子さん(藤田さんは「アシスタントはみんな漫画家として独立していって欲しい」という方針の人)の言動で、漫画に対する熱い思いがあることは伝わってきます。さらには、椎名高志さんや島本和彦さんがわざわざ藤田さんをモデルにしたキャラを自作に出すほど濃い人物であることはファンはみんな察していたわけですが、さすがに週刊連載を持っている漫画家さんがそんなメディアに出てくることはないわけで、限られた機会(NHK「れんまん」の島本VS藤田編や、「うしおととら」のTVアニメ化に伴う監督との対談動画など)でしか、「動く藤田」を目にできなかったわけです。

いやあ、全藤田ファン注目ですよ。お見逃しなく。

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Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-

なかなか評判のゲーム、「Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-」を遊んでみました。

えっと、ですね。これ、ゲームと呼んで良いのかは微妙です。定義の難しい言葉ですが、いわゆるゲーム性は皆無です。分類すればアドベンチャーゲームなんですが、ゲーム性のなさはビジュアルノベル以下です。言ってしまえば、読書です。この作品はSF読みにこそ薦めたい。

「ほほぅ」と思った人は、公式サイトにいって、PVを見て下さい。「ああ、好きな雰囲気かも」と思ったら、とりあえずプレイすればよろし。PS4があるなら、2000円ぽっち払ってダウンロードすれば、すぐに出来るんだし。ボリュームとしてはSFの短編1話分ぐらい。プレイ時間はSFのぶ厚めの文庫本1冊読むぐらいで、クリアに50時間とかバカな要求はしてきません。安心してどうぞ。

え?なんだかよくわからないものに2000円も払えない?

ばいばい、貧乏人。すぐにここを去れ。

趣味で2000円ぽっちの失敗した買い物ができないような人に用はありません。

というわけで、良識あるオトナの皆様におかれましては、もうプレイしていただいたか、「残念だけどやる時間的余裕はないので楽しんだお前の話を聞いて代償行為にするよ」という判断になったか、「趣味じゃないからやらないわ」という判断になったかのいずれかだと思うので、ここから下はネタバレモードも含めて書きます。ご注意を。でも、読んでもこのゲームの良さはあまり失われないと思いますよ。

PVを観て想像するのはいわゆるバイオハザードものだと思いますけど、そっちじゃないです。序盤ですぐに「そうかな?」と気づくので書いちゃいますが、ファーストコンタクトものの方です。宇宙からなんかがやってきてあれやこれや・・・という話なんですが、これももう書いちゃいますけど、最後まで結局何がやってきて何が起きたのかは明かされません。

で、あれやこれや・・・の方もあんまり書かれません。描かれるのはイギリスの片田舎の人間模様だけ。だから、ストーリーもSF的な観点ではあんまり魅力的じゃないです。

じゃあ、何が魅力的なのかというと、この形式そのもの。広大なフィールド。それを迷わずに散策させるための工夫が凄い。道や建物の配置や、ポイントポイントに置かれた地図は考え抜かれているのに、「ゲームのため」だとまったく思わせない。地図はあちらこちらにあるんだけど、観光地という設定なのでいっぱいあっても不自然じゃないです。逆にマップ画面なんて無粋なモノはなし。

そして、自由に散策もできるんですけど、ストーリーはちゃんと目印があって(この目印がすごく不思議なモノで、設定を深読みしたくなるし、何より美しい!)、まったくストレスなく話を読み進めていけます。移動速度の遅さに文句を言っている人が多いですが、それも無粋。むしろ、心地の良い移動速度だと感じました。そりゃ、複数回プレイやトロフィー集めのための網羅的なプレイをするときには堪らないと思うので走れるモードは必要なんですけど、最初のプレイではむしろ走ったら台無しでしょう。

登場人物は、全部シルエットしか出ない(ようするに、技法としては「かまいたち」なワケだ)んだけど、このシルエットの表現もすごくセンスが良い。あ、顔や姿はまったくわからないので、字幕はONを薦めます。登場人物名が表示されます。でも、最初のうちはまったく人間関係もわからないけど、エピソードの断片を観ていくと繋がっていくのも魅力です。

さらに、本編は物語の中心となる人物が切り替わっていく章立ての構成になっているんですが、その章の切り替わりの演出が素敵。2章の終わりはもう、鳥肌が立ちました。でも、よく考えるとストーリー的には全然盛り上がってなかった(笑)。演出だけで見せます。凄いよ。

操作している対象である「私」は何者なのか(人間なのかもわからない)。村に何が起きたのか。村のあちらこちらに残された「痕跡」は何なのか。牛と鳥の死体はあるのに人間は・・・。なーんにも明かされませんが、裏に設定はあって推測は出来る。

足に障害のある女性が遭った事故とは何だったのか。神父が犯した罪とはなんだったのか。母と叔父はなぜ仲違いをしたのか。駅員はなぜ靴を失ったのか。夫は最後に何を観たのか。妻は最後に何を知ったのか。これまた、なーんにも明かされませんが、いくらでも深読み出来る。

連想したのは、飛 浩隆 「グランヴァカンス」の終末感。あの話をこのシステムとビジュアルでやってくれたら凄いだろうなあ。

というわけで、不思議な読了感(というのも変だけど、まさにそんな感じ)のこのゲーム。よく他の人は「さっぱりわからない」と貶しているような本が好き・・・なんて難儀なホンスキー型宇宙人の皆様にお勧めです。

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