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January 27, 2015

F1スーパーライセンス発給条件について

FIA、スーパーライセンスの発給要件強化を正式発表

世界各国の代表的な11のカテゴリーのレースでのドライバーズ・ランキングに応じてポイントを付与しし、ポイントが「3年以内に40ポイント以上獲得すること」を要件とした

スーパーライセンス発給条件の明確化自体は良いことじゃないかと思いますね。今だとスポンサーさえついていれば誰でも上がれることになってしまいますし、そうなると下位カテゴリーの存在意義が無くなってしまいます。

GP2のチャンピオンが3年連続で上がれないにもかかわらず、マックス・フェルスタッペンがろくな実績もないまま上がってくるのでは、GP2がかわいそうです。

ただ、この獲得ポイントがちょっと厳しい気がします。

私がF1を見始めた頃のスーパーライセンス発給条件はおおむね以下のような感じだったと思います。記憶だけですが・・・

  • F2相当カテゴリー(当時だと、F3000)での優勝
  • 各国F3チャンピオン
  • 上記に準じる成績

てな感じだったと思います。で、だいたいすぐにF3チャンピオンを取ってF1に入ってくる(セナとかがそう)のは大物、F3000で経験を積んでくるドライバーはなかなか大成しないなんて言われてました。

で、今回の制度では3年の累積ポイントが40ポイント必要だということになっているんですが、各シリーズのチャンピオンがもらえるポイントが

  • 60ポイント
    • FIA F2
  • 50ポイント
    • GP2
  • 40ポイント
    • ユーロF3
    • WEC(LMP1)
    • INDY CAR
  • 30ポイント
    • GP3
    • Formula Renault 3.5
  • 20ポイント
    • Super Formula
  • 10ポイント
    • FIA F4
    • National F3

・・・正直、うーんって感じです。

年間チャンピオンを獲得すれば条件を満たすのが、GP2、ユーロF3、INDY CARだけではちょっと厳しすぎます。ちなみにFIA F2ってのは「将来作るよ」と言っているだけでできるかどうかもわからないクラスです。WECはそもそもF1で実績を上げたドライバーが走っているクラスで育成カテゴリーではありません。

現実的なラインとして、GP2でちゃんと1勝を上げられるレベルのドライバーならF1で十分に活躍できるはずです。GP2といえど、チャンピオンになるためにはどうしてもドライビング以外の力が必要になります。それを求めるのはどうかと思います。

というわけで、私の修正案。

ポイントが3年での累積になっていますが、累積にする必要なんてないです。過去3年のどれかの年で条件を満たせばよいことにして、条件は各国F3のチャンピオンが得られる10ポイントに引き下げるぐらいで良いんじゃないでしょうか。各カテゴリーで10ポイント稼ぐためには先の表でいえば、シリーズ順位が

  • 6位以上   
    • FIA F2
  • 5位以上
    • GP2
  • 4位以上
    • ユーロF3
    • WEC(LMP1)
    • INDY CAR
    • GP3
    • Formula Renault 3.5
  • 3位以上
    • Super Formula
  • チャンピオン
    • FIA F4
    • National F3

こうしてみると、もともとの表も悪くない感じです。日本人としては、SFの地位がもっと上がって欲しい気もしますが、上の条件のもとで「過去3年のシリーズ順位3位以上」のスーパーライセンス有資格者リストを作ってみれば

  • ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ
  • アンドレ・ロッテラー
  • ロイック・デュバル
  • 山本尚貴
  • 中嶋一貴
  • 塚越広大
  • 伊沢拓也

の7名。まあ、妥当なラインじゃないでしょうか。このメンツと争えないようならどうせF1に上がっても大した成績は残せないでしょう。

そして、各カテゴリーのレベルを調製して、機能していないカテゴリーを抜くと

  • 5位以上
    • GP2
    • INDY CAR
  • 4位以上
    • Auto GP
    • Formula Renault 3.5
    • Super Formula
  • 3位以上
    • ユーロF3
    • GP3
  • チャンピオン
    • National F3
うん、現行とあんまり変わりませんね(笑)。要するに、特認条件撤廃すればいいってことですな。

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January 21, 2015

ベイマックス

ベイマックスを観てきました。

きっかけは「楽園追放」を観たときの予告編が、抜群に面白そうだったからです。ディズニーもピクサーもほとんど観たことないんですが、なんだか観てみたいと思わせました。「少年とロボットの心の交流」なんてもう陳腐もいいところですが、よい陳腐が観られそうだなと(笑)。

ところが、噂によればこの予告編は「騙し」であるらしい。そもそも、「ベイマックス」はオリジナルが「BIG HERO 6」というアメコミ作品で、日本が舞台、日本人の登場人物が超能力バトルするものらしいです。えっ?

調べてみると、今回のディズニー版「ベイマックス」は、その枠組みや登場人物の名前なんかは原作から借りているものの、設定はまったく変えてしまっています。が、変身ヒーローものであることは変わりません。そもそも、ラストで主人公が「まったく、ぼくらがスーパーヒーローになっちゃうなんて、シンジらんないよ」みたいなことを言いますが、観客の大多数にとってみれば

「まさか、戦隊ものを見に来てたなんて信じられないよ」

戦隊ものなのにキービジュアルとして、変身(といっても、戦隊ものなので、スーツを着込んだ姿なんですが)後の姿がまったく出てないって、よく考えたらすごくないですか?アメリカでは「BIG HERO 6」のタイトルのままなのでこの宣伝戦略は不可能ですが、日本でまったく知名度のない原作で、タイトルを「ベイマックス」に変更できるという条件でこそ成り立つサプライズ。これは見事でした。

さて、これを戦隊ヒーローものとして観ると・・・ほんとに素晴らしい出来。2時間の映画に、必要なものは全部きっちり収まっています。未熟だけど愛すべき主人公、戦う動機、不気味な敵、テクノロジーの暴走、愛と復讐。笑わせてくれて、ホロリとさせてくれて、ハッピーエンドで。別に何か新しいものがあるわけではありませんが、これだけ詰め込んで破綻無くきっちりと納めてくれているのは凄い。

いや、破綻がないわけじゃないですね。ツッコミどころはそれなりにあります。そもそも、敵と戦っているんですが、敵がこちらに差し向けてくる最終兵器が、そもそも主人公が作ったもので、「なんだそのマッチポンプ」と思うわけです。この少年ヤバいぞ(笑)。でも、その兄が作ったロボットの力を借りて、自分が作って奪われたロボットを倒すという構図が、大きくは「お兄ちゃんがグレている弟の能力を認めながら優しく強く諭す」というストーリーに沿ったものになってます。テーマのためならある程度のストーリーの破綻は認める、いや、むしろちょっぴり破綻しているぐらいが心地良い。見事なものです。

また、世界観も素晴らしい。地理的にはサンフランシスコなんだけど街並みは東京という「San Fransokyo」は、日本人にとって非常に愉快な空間です。近代的だけど、路地裏やガード下はまさしく日本の風景で、すごく居心地がよさそう。「餃子専門店」なんて看板があったり、ビルの影にちらっと東京タワーが見切れたり、凄く楽しい。

また、風力発電用のタービンが空に浮かんでいて、それに鯉のぼりを模したペイントがしてあるなど、ただ東京の風景を切って貼りましたというのではなく、ちゃんと自分のものとして日本風な未来空間が作られているのも素晴らしい。丁寧な仕事です。ここまでやるから、伝わってくるものがあるんですね。

ともかく、「楽園追放」と同じく、よくできたエンターテイメントで、すかっとして帰ってこられます。楽しかった!

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January 14, 2015

火星の人/アンディ・ウィアー

あまり本が読めなかった2014年ですけど、一番面白かったのはコレ。

NASAの有人火星探査がすでに行われている今よりほんのちょっと未来で、主人公は第3次計画のメンバー。しかし、この「アレス3」ミッションは火星での6日目に想定以上の猛烈な嵐のために中止になります。予定を大幅に繰り上げての帰還命令に従って打ち上げロケットまで向かう途中、マーク・ワトニーは嵐で飛ばされてきたアンテナが体に突き刺さり、飛ばされていきます。宇宙服の生命反応は途絶え、他のクルーは辛くも火星を脱出、地球への長い旅に入ります。

ところが、どっこい生きてたよワトニー。丈夫な人。しかし状況は絶望的です。体には穴が空いてるし、食料はミッションに必要な分があって数ヶ月は問題ないもののアレス4が到着する数年先までは望むべくもない。体に突き刺さったぐらいですから、アンテナは吹っ飛ばされて地球と連絡する方法はない。そもそも、みんな自分が生きているとは思ってもみないだろう。わかったところで、救助には数年かかるのでそれまでには餓死するしかない。

物語は、そんな悲惨なワトニーのミッションログの形で綴られます。彼がどう絶望して、自らの死と対面するのか。そんな悲痛で心に刺さる物語が・・・展開しません。

ワトニーは宇宙飛行士で、宇宙飛行士というのは絶望からもっとも遠い人種です。「うん、まあ、絶望的だけど、死ぬのは今日じゃないし。食料はまだ300日は食べられるほどたっぷりあるし、EVAスーツも予備が沢山ある。ローバーも動く。問題は1つずつ解決していこうか」とさっくりと立ち直ります。ユーモアに溢れたミッションログを読んでいると、ゲラゲラ笑ってしまいます。とにかくめげない。当然、何度も死ぬような目に遭うし、そのたびに「もうダメだー」と言うんだけど、次のログでは「事態は見た目ほどひどくはなさそうだ」・・・って立ち直り早っ!。宇宙飛行士ってすげえな。

そして、何とかワトニーを救おうとする人々、特に飛行士以外のNASAの面々も懸命に活躍します。この作者は完全に宇宙オタクで、架空のミッションを妄想して楽しむのが大好物。ミッションの構成やNASAの各セクションについてもよく知っています。さて、ワトニー救出作戦はいったいどんなプランで行われるのか。そもそも、アレスミッションの全貌からして興味深いんですが、この絶望的な状況からどんなアクロバットな手段を見つけ出してくれるのか。

早くも映画化決定らしいですが、たぶん本でしか楽しめない種類のネタが沢山ありますからとっとと読んで、映画は「ほう、この場面はこんなビジュアルになるのか」と観るのがよろしかろ。おすすめです。

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January 13, 2015

2015年冬アニメ1話感想 そのいち

今期も仕事が山場だし、相撲は面白いしでなかなか・・・。ちなみに前期もあまり感想が書けなかったんですが、最終的には「甘ブリ」が面白かったかな。話は大したことがないんだけど、京アニが作るとちゃんとテンポよくて笑える気持ちいいアニメになるから、すごいなあと思いました。うむ

[ユリ熊嵐]

今期一番の注目作はコレ。幾原監督の最新作。アバンとOPを見ただけで、「ああ、視聴者を置いてけぼるつもり満々だなあ」とニンマリ。

「ピングドラム」も凄かったけど、今回はあそこまでキツい話をするつもりはなさそうかな。イジメ・・・というか、女の子同士の人間関係の話なのかな。そういう意味では、「オオカミ少女と黒王子」と同じだ。・・・違うか。

[幸腹グラフティ]

芳文社の日常系4コマが原作。とりたてて何も言うべきことはない原作で、アニメも特別に何かやっているわけではないんですが、今期のシャフトがコレ。

そういう意味では絵のきれいさや演出、OPなんかはかなり非凡。でも、こういってはなんですけど、新房監督が総監督、岡田麿里さんのシリーズ構成、音楽がコトリンゴ、OPがラスマス・フェイバー作曲で坂本真綾さんが歌うなんてのは、なんだか贅沢過ぎるような・・・

[暗殺教室]

今期の田中公平祭りその1。今期は公平先生が作るOPが2曲あります。こっちは畑亜貴さん作詞の電波っぽい作り。でもやたら歌うのは難しそう。そして、その2はジョジョの第3部2期なんですが、そっちは1分30秒ひとかたまりで流れる、構造すらつかませない難しい曲。どっちも格好いいから、早くフルコーラス聞きたいです。

で、アニメの中身の方は・・・うーん。こういう破天荒な設定の学校ものって、学校の中で起きていることをカリカチュアライズして書きたいって場合(「ユリ熊嵐」はたぶんこっち)と、世の中で起きていることを教室内のことにデフォルメして書きたいという場合(「バトルロワイヤル」はたぶんこっち)があると思うんですがいい加減使い古されてきて、これだと「破天荒な設定の学校もの自体」をやろうとしているように見えるんですね。

外側に何もないような感じ。つまり、理不尽の象徴としての宇宙人の先生だったり、この教室での出来事が世界の破滅に繋がるよという典型的なセカイ系設定だったり、登場人物たち手っ取り早く問題を抱えさえるための落ちこぼれ学級という設定だったりが、「こうしておけば、物語がなんか動くよね」という意図のもとで作られているように見えるんですよ。

イマドキのダメなラノベはだいたいそんな感じですけど。

[聖剣使いの禁呪詠唱]

ラノベ原作・・・なの?読んでませんが。上で言った「ダメなラノベ」の見本みたいな感じ。設定もつまらなければ、キャラもつまらなければ、演出もつまらないという・・・。

勝算無しに勝負をつっかけて案の定やられる主人公。主人公ラブという設定に振り回されて言動が完全にキチガイのヒロイン。学生のくせに、お前、これでどうやって世間を渡ってきたんだよと思うほど性格が破綻した敵役。どれも酷い。そして、1話の最後でイヤ・ボーンする・・・と。ここまでダメだと、かえって清々しいです。

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January 07, 2015

マイクロソフトのエルゴノミックキーボードを買ってみた

お正月休みは、あいもかわらずただひたすらにアストルティアで過ごしていたわけですが、1/2の朝・・・というか昼、寝坊助のMilueがログインを試みたところWii Uにつけて使っていたキーボードが反応しません。PCに差し替えても動かない。壊れちゃったみたいです。

さすがにキーボードなしのプレイは辛いです。それまで使っていたのは有線のキーボードでしたが、コントローラーは無線なのですから、せっかくだからキーボードも無線にしたいところ。Wii UではコントローラーはBluetoothで接続されていますが、Bluetoothキーボードの接続はサポートされていません。USBのBluetoothアダプタを付ければ動くという話もありますが、自分でペアリングすることが前提のBluetoothよりは、独自形式のワイヤレス規格のもののほうが安心です。

Wii Uでも有名なところでは、ロジクールのUnityingや、バッファローの2.4GHzのワイヤレスキーボードは何の問題もなく繋がることは知られてます。実際、私はロジクールのK230を愛用しています。が、Milueはソファーで膝の上に置いてプレイしてますから、テンキーのあるキーボードは横長すぎてバランスが悪いでしょう。

というわけで、

  • BluetoothじゃないUSBレシーバー付きのワイヤレスキーボード
  • テンキーレス
  • キーピッチはコンパクトではない

あたりを条件に探してみました。その中では、MicrosoftのArc Keyboardが良さそう。うーん、考えてみるとMicrosoftのキーボードを買うのは初めてかも。このアーチ型、タイピングもしやすそうです。お値段もAmazonで3000円ちょっとと安過ぎないのが逆に好印象。これだな。

ポチッとワンクリックしましたが、同じMicrosoftのキーボードで気になるモノも。これです。Sculpt Ergonomic Keyboard。一見してMicrosoftのNaturalキーボードの流れを汲むものとわかります。当時はあこがれだったなー。エルゴノミックキーボードには興味はあるんですが、でかくて高いんでなかなか手が出ません。

しかし、これは5000円そこそこで変えて、かつテンキーが別なので(エルゴノミックキーボードにしては)かなりコンパクト。キータッチには不安はありますが、そこは腐ってもMicrosoftですからめちゃめちゃってことはない・・・よね。というわけで、どこで使うかも考えずにとりあえず一緒にワンクリック。え?当日配送?

というわけで、お昼過ぎに注文して、6時前に届いた。1月2日に。もうなんだか困っちゃいますね。

Arc Keyboardは期待を裏切らない感じ。Wii U ゲームパッドとほぼ同じ大きさで、ドラクエにぴったりです。タイプ感覚もしっかりしていて、十分に文章打ちにも使える感じでした

Sculpt Ergonomic Keyboardの方は新年からさっそく仕事場へ担いでいって使ってます。凄く良いとまでは言いませんが、やはり手首にかかる負担は小さいです。もう少しキーピッチは狭い方が好みですが、意外なほど違和感はありません。ただ、自分はBを右手で打つ癖があって、「タンバリン」が「タンナリン」になります(笑)。でも1日打ってたら直ってきましたね。

これまでもう20年近く使っているHappy Hacking Liteを愛用していたわけですが、ファンクションキーはある方がいい。やっとお休みさせてあげられそうです。

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January 06, 2015

親指はなぜ太いのか/島 泰三

タイトルは、なんとなく「さおだけ」風でまた中身の薄い新書の様に見えます。が、この本は久しぶりに知的興奮をがんがん刺激する快作です。

いや、「さおだけ屋~」は難しい話を身近な話い引きつけて紹介するという意味でとても良い本だと思いますけど、この本はもっともっと硬派です。

著者は在野ながらサル学の専門家。マダガスカルでのフィールドワークでは多くの実績をのこしているとのこと。ちゃんとアカデミックなフィールドの人であることは、文章から伝わってきます。それと同時に、なるほどアカデミックの世界だけに縛られない自由な人であることも文体から伝わってきます。例えば、以下のような文章はあまり大学の先生は書かないかもしれません。以下、引用するのは、知人の協力を得てチンパンジーのフィールドワークのためにアフリカへ行ったときの一節です。

マハレまでの旅路は、ナイロビからチャーターした双発のプロペラ飛行機が、前後上下左右、完全に真っ白のホワイトアウトのなかを高度計と無線機だけを頼りに、湖畔の待ちキゴマまで3時間も飛び、キゴマから西田さん差し回しの船で出発したとたんに、タンザニア海軍の魚雷艇から機関砲を突きつけられて停船命令を受け、揺れ回る丸木船では小用も足せず、10時間以上の水日出しの航海の末に湖水に飛び込んで悩みを解消しようとする人が出たり、その鼻先にウォーターコブラが現れたり、闇夜のなかを進む船が燃料不足で止まってしまうなど、取り立てて問題になるようなこともなかったので(これがアフリカ!)、湖畔に迎えてくれた西田さんの姿が実に懐かしかった。翌朝、私たちはチンパンジーの群れのなかにいた。

難しいサルの分類の話があったり、何の断りもなく歯式が示されたり、観察結果はちゃんと数字で語られたりと堅い感じではあるものの、門外漢にも読みやすく進められるのは、このようなユーモアの感覚が文章からにじみまくっているからです。まあ、嫌がらずに読んでみて。

というわけで、基本的にはおサルさんの話がずっと続くわけですが、冒頭からこの本の筋道はきっちりと示されています。そこが明快なので、いろいろな話が出てきても読者が不安な気持ちになることはありません。そこがこの本の素晴らしいところですが、まあ、何よりもそこで示されている内容がエキサイティングなのですよ。こういうことです。

  1. ある程度の大きさの動物が種として存続するためには、他の動物が利用しない(できない)主食を開発する必要がある。それがニッチである。ニッチとは空間的な「棲み分け」ではなく、「食べ分け」のことである。
  2. サルにおいて、主たる食べ物がなにかということが、口(歯)と手の形態を決める。これを「口と手連合仮説」と呼ぶ。
  3. 人類は、他のサルとまったく違う口と手を持つ。ならば、同時期のサルと違う主食を得たハズである。では、それは何だったのか。

面白いですね。本の前半は、1と2を実証するために紹介されるいろんなサルの話です。この部分ももちろん面白いですし、このリアルな研究に関する部分がなければ後半はまったくの絵空事に聞こえてしまうと思いますが、それでもラストは非常に面白い。私だってこれまで初期人類に関する本は何冊も読んだことがありますが、まさか、こうくるとは。

3の答えを書いちゃうとネタバレになって、この記事を見て読もうと思った人の興を殺ぐことになるかなと思いましたが、まあ、学術書の類ですからいいでしょう。書いちゃいます。

まず、一般に思われているけど、よく考えるとそれを主食と考えるのはムリがあるというものが上げられています。

森のサル、ゴリラ・チンパンジー・オラウータンなどは草食や、果実食です。しかし、人類はそもそも乾燥化によって新たに生まれたアフリカのサバンナに適用した種です。果実はふんだんにはないでしょうし、草を食べるには人間の盲腸は極端に退化してます。

今の人類の主食は、小麦・米・芋などの穀類です。しかし、今、我々が小麦を大量に収獲することができるのは、品種改良により実っても穂に種子がとどまる種類を作り出してからです。自制していた小麦を選択による品種改良し、農耕種を作り出したのと人類が産まれたのはまったくタイムスケールが違います。そもそも、小麦や米が主食なら、人間の手はもっと小さいものをつまむのに最適化されているでしょうし、デンプンをそのまま消化出来るハズです。

人類は早い段階で肉食を可能にしたのではないかという説もあります。最初は大型肉食獣の食べ残しから初めて、ついには自ら狩りをするようになったと。しかし、肉食がメインであれば、人間の前歯と犬歯が平坦に一直線に並ぶ歯は不自然です。肉を切り裂く犬歯が存在するべき。この短くなった犬歯は平坦になることによって、上あごと下あごが水平にすりあわされる動きを可能にしています。あごの関節の動きも、他の類人猿ではすりあわせる動きはできないそうです。つまり、人間は何かをすりつぶして食べていたと考えられます。

しかし、同じようにすりつぶして食べる草食動物の臼歯と人間の臼歯もだいぶことなります。非常にエナメル質の分厚い臼歯を持つ人間は、かなり堅い食べ物をすりつぶして食べていたはずです。

サバンナに豊富にあり、人間の大きな体を指させられるだけ高カロリーで、堅くすりつぶして食べる必要のあるもの。そして、人類以外がそれを主な食用とするのは難しいもの。

それは、骨です。ええーっ?

骨の髄は非常に高い栄養を持ち、また、食べ残し肉食仮説で検討済みのように、サバンナには大型動物の死体は豊富にありました。食べ残しの肉もボーナスとして食べていたかもしれませんが、肉は早く腐ってしまいますし、豊富にあるとは言えません。人類は、その特徴である他の指に対抗する太い親指でしっかりと石を握り混み、骨にたたきつけて割ることで大きく栄養のある骨を口に入れられるようにし、すりつぶして食べられる様になったのです。そのことが、二足歩行して空いた手で石と骨を握って持ち運べるようになった人類を生み出したと、著者はそう考えています。

・・・とはいえ、ホンマかいなとは思います。そんなに人類が骨食に適用しているのなら、今でもおいしく頂いている人達がいても不思議ではないですよね。著者は中で「食べてみた。うまい」と書いているんだけど、いやいやいや、そんなことはないでしょう(笑)

まあ、事の真偽はどうあれ、非常に面白い論の展開であることは間違いなく、わくわくして読むことが出来ますよ。

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