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プランク・ダイブ/グレッグ・イーガン

昨年発売された21世紀最高のSF作家グレッグ・イーガンの短編集です。

今回の短編集はかなりハードです。というか、相変わらずハードもハード、こんなので読書が本当についてくるのかわからないほどのカチカチのハードSFなんですが、この人が当代随一のSF作家として認知されているんだからSFファンというのは難儀です。

今回の短編では、特に仮想空間ものが多い印象を受けます。人類が肉体を捨てて意識を仮想空間上に移して永遠の人生を生きていることが前提となっている作品がかなりあり、SFを読み慣れていない読者でそんな設定に慣れていないという読者はまず最初からつまずいてしまうかもしれません。

では、以下は自分の忘備録も兼ねて感想を書きます。ネタバレしますので注意してください。

クリスタルの夜

仮想空間上に生命を生み出させるプロジェクトの話なんですが、そこで生み出された生命体に対して我々は神としての責任を負うのかどうかという倫理的な問題を扱っています。われわれの世界が実はコンピューター上のシミュレーションであるという設定の話はいくつか見かけたことがあるのですが、その逆の設定というのは意外に見かけないかもしれません。さらにそこから一歩踏み込んでいる所がさすがイーガン。

エキストラ

人間の意識は私に本当にあるのかとかというお話。脳みそを別の人に移植してみたら、切り離した脳みそにも肉体にもその人のアイデンティティが分離されて残ってしまったと言うちょっとホラーなお話です。この後で仮想空間上に意識を移す話が多くでてきますが、その場合には自分のコピーがたくさんあることに違和感がないのですが、ウェットウエア上の意識が分離されてしまうと途端に猛烈な違和感がありますね。面白い視点です。

暗黒整数

ひとりっ子」に収録されている「ルミナス」の続編です。ルミナスでは計算機上で終わってしまった別の数学を持つ世界との関わりですが、今度は実際にその間の戦いが起きたら世界はどうなってしまうのかが書かれています。前作とまとめた話として読めたほうがよかったですね。

グローリー

最初の数ページは一体何が起きちゃったのかと思うんですが、実は意外に普通なファーストコンタクトものです。結末で知ったことを本星へ送るかどうかの選択があるのですが、結果は意外でした

ワンの絨毯

大好きな「ディアスポラ」に組み込まれた話。「読んだことあるな-」と思いながらも、さっぱり絨毯の正体が思い出せなかった自分が悲しいです

プランク・ダイブ

これも肉体は失って意識だけがバーチャルに残った人類の話。そんな人達がブラックホールへ突入して、その特殊な状況であるチャレンジをする話・・・なんですが、もうね、あまりに概念が難しくて突入の様子や考察はさっぱりわかりません。この話の勘所はそこじゃなくて、自分自身のある時点のスナップショットを送り込んでいるので、ある意味決死の挑戦でありながら、決死になるのはスナップショットで複製された自分自身の意識の1バージョンだけで、そして、ブラックホールの性質上、そのスナップショットが得た知識は外へ持ち出せないので、要するに何もしていないのと何にも変わらないんですが(笑)、それでも人は行くのかとか、そんな話なわけです。うはー。

伝播

やっていることはグローリーと同じですが、もっとチャレンジに溢れた話。冒頭のセレモニーのシーンの緊張感がステキ

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Comments

ブラックホールは
古典:光さえ脱出できない
量子(初期):ホーキング放射でエネルギーを失うがランダムな熱雑音のようなもので情報は失われる
量子(現在):ホーキング放射に情報が含まれている
なので、量子情報理論が進歩すれば内部での物理現象を推測できるようになるかもって期待してます。

Posted by: | May 10, 2015 at 02:37 AM

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