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今この世界を生きているあなたのためのサイエンス/リチャード・ムラー

サンデル本が売れた流れでこの本もかなり売れました。原題は"Physics for future presidents: the science behind the headlines"。つまり、政治的判断をするのに必要な物理学ということ。

で、軍事、環境問題そして宇宙政策に関わる話題と並んで、外せない話題として「原子力」が取り上げられています。

この本を読んだのは去年ですが、まさか、この本が日本人必読の書となってしまう日がくるとは。この本に書いてあるレベルを理解して初めて、福島で何が起こっていて、それは心配するべきことなのかどうなのか、我々は個人としてだけでなく日本人としてどうすべきかを語る資格があるのです。この程度の勉強もしないで、水を買い占めたり、はっきりと人体に対する影響について発言できない政治家を責めたり、原発なんてイラネェという輩は、現代には要らない人間です。

とりあえず、日本人全員これを読め。Iだけでいいから読めよってことなんですが、あえてここに書いてあることを繰り返して書いておきます。とりあえず、今の状況でこれだけは覚えておいてください。

放射性物質は、人体に対して、毒ではなく発がん性物質として振る舞う

ということ。はい、よくわからないよーという顔をしている人がいますね。要するに、致死量みたいなものがちゃんと定義できないってことです。

世の中で一番臨床例もたくさんあって研究もされている発がん性物質がタバコであることは間違いがないと思いますが、どれだけタバコを吸うと肺がんになるか、はっきりとした値はありません。ただし、たばこを吸う人が吸わない人よりがんになるリスクが高いことははっきりしています。このリスクは評価可能です。

つまり、言えるのは、たばこを吸うとガンになる確率が何%か上がるということだけで、どれだけたばこを吸うとガンになるかは誰にもわからないということです。たばこは1日1本なら安全で、1箱だと危険とか誰も言えないわけですし、まったく吸わなくてもがんになる人はたくさんいるのです。

あ、まあ、もちろんたばこを煮出して飲めばニコチン中毒で死ぬので、そういう意味では致死量はあるわけですが、それはニコチン中毒で死んだんであって、肺がんで死んだ訳じゃないですからね。放射線もいっぱい被曝すれば、中毒症状で髪が抜けたり、ぽっくり死んだりしますが、バケツでウランを硝酸に溶かしたり、炉心内で作業でもしない限りはそんなことにはなりません。

だから、「人体に直ちに影響はない」ってのはまさにそういうことです。放射能汚染された水を飲んでも、直ちにはなんともありません。将来、がんになる確率が数%増えるだけです。

大丈夫、あなたは生きていれば、たぶん、がんになります。日本人でがんで死なない人は他の要因で死んだのです。もしかしたら、この事故で日本人の平均寿命がちょっぴり縮まるかもしれません。が、それを統計的にとらえることはできても、個々人がこの事故が原因で早死にしたかを知ることはできません。

だから、そりゃ人体に影響があるかないかといわれたら間違いなくあるんです。あるんだけど、例えば病院で寝たきりの人を避難させるほどかと言われたら疑問です。特に高齢の方はなおさらです。あなた、80歳の寝たきりのおじいちゃんがたばこを吸っているのをみて「将来、肺がんになるリスクが高いから、やめなさい」って言いますか?私は言いません。リスクを考えて、適切な行動を各々が取るべきで、見苦しいからテレビに向かってぴーちくぱーちく文句を言うのはおやめなさい。

もちろん、原発の事故は予断を許さない状況でしたから初期的に緊急避難が実施されるのはやむを得ないと思います。思いますが、状況が落ち着いたら放射線レベルが戻らなくてもいったんみんな戻って、1ヶ月ぐらいかけてゆっくり準備して移住していいんですよ。そういうものです。この先、長い期間生きる子供だけ先に疎開させるのもあり得る選択肢です。とにかく、「危険か、危険じゃないか」ではなくて、リスクを評価する。そういうことが必要なのです。


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