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February 23, 2011

番狂わせ 警視庁警備部特殊車輌二課/押井守

この小説が出ると聞いたときは、なんでいまさら押井守がパトレイバーの外伝の小説を書くんだと思ったんですが、読んでみて納得。単に押井さんはサッカーの話が作りたかっただけですね(笑)

でも、そんなサッカー蘊蓄アニメを作らせてくれるところはない(そんなものは宮本武蔵ひとつで十分です)し、小説で書くにしても普通じゃ企画が通らない。天下の押井守ですらそうでしょうし、あの押井守ですからなおさらそうでしょう(爆)。で、パトレイバーの外伝として書くのなら企画が通ったんですね、たぶん。まあ、こんな企画をわざわざ押井さんのところに持ってくる人もいないと思うので、そういうことなんだと思います。パトレイバーの外伝小説が出したかったとしても、普通は伊藤さんとか横手さんのところへいきますわ。

しかし、特車二課第二小隊のあのメンツをだそうとしたら2000年前後の話にする必要があります。しかし、押井さんが蘊蓄垂れ流したいのは最近のサッカー話。特に南アワールドカップを見据えたというあたりをネタにしたいらしい。となると、二課のメンツもあれから10年。いい加減、野明も遊馬も中年ですし、そもそもP2で二課のメンバーは入れ替わっています。しかし、まったく新しいキャラで書くんなら、パトレイバーである必要はない。どうしましょう。

しかし、押井さんはそんなこと気にもとめず、あっさりと禁じ手を返します。「あの第二小隊のあのキャラ達を彷彿とさせる3代目の隊員を出す」。さすがです。

で、Amazonのレビューを見たら怒ってる人も結構いるわけです。まあ、そりゃあパトレイバーに愛着がある人が、自分が好きなパトレイバーをおちょくられた、コケにされたと思ったとしても判らなくもないです。パトレイバーは初期OVAと映画版は押井作品ですが、TV版が好きだという人もいる(というか、それしか見てない人も多いだろうなあ)だろうし、ゆうきまさみさんのファンでマンガのパトレイバーが大好きでそのアニメ版としてTV版や劇場版を捉えている人も多いと思います。パトレイバーが好きな人が誰しも押井守が好きではない。そりゃそうだし、パトレイバーは誰のものかといえば、すくなくとも押井さんだけのものではない。ヘッドギア名義ですしね。怒る気持ちはわかります。

しかしまあ、押井さんが自分の名義の小説でこれをやるのに異議を唱えてもしょうがないし、押井守にその資格がないわきゃない。押井さんも文句を言う人がいるのはわかってるでしょうが、そんなこと気にするわけもない。諦めましょう。

そして、ながーい前置きをおいてここからが本題なんですが、この小説は間違いなく押井ファンには面白いし、なにより充分にパトレイバーなんですよ。パトレイバーの世界観を壊すようなことはしていない(2010年にあの世界でレイバーがどういう扱いになっているか、ちゃんと書いている)し、なによりキャラの動きがパトレイバーです。わざとカリカチュアライズ(キャラをカリカチュアライズするってのも変だけど)されてますが、後藤は後藤らしく、遊馬は遊馬らしく、太田も香貫花もバカバカしく動きます。

そして、なんと大サービス。レイバーも動きます(笑)。TV版の上海亭出前事件(第29話「特車二課、壊滅す」)などが押井さんのパトレイバーを象徴していますが、その押井さんがやる以上、レイバーなんてキャリアに載っかってればいい方で動くかどうかなんて全然期待してませんもの(爆)

というわけで、あのP1の雰囲気で弱体しきった特車二課を用いて暗躍する後藤隊長と振り回される遊馬(遊馬はラグビー部だったって設定なので、サッカーやってもあんまり違和感がないんだよね)が、最後に危機一髪でテロを阻止する話です。パトファンなら読む価値あり。押井ファンなら必見という奴です。心広めに読みましょうね!

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February 14, 2011

ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦

森見登美彦の新刊・・・だった時に買ったんですが、長らく放置。子供が主人公のなんだかいい話っぽかったので読もう読もうと思いつつも後回しになってました。

ところが、これが日本SF大賞を受賞したと聞いてびっくり。え?そういう話なの?

というわけで読んでみました。

えーっとですね、簡単に雰囲気を言えば森見登美彦版「海辺のカフカ」です。もしかしたら森見さんも意識してるのかもしれない(「海辺のカフェ」という喫茶店がでてきたりするので)。SF的不思議現象もでてくるのですが、海辺のカフカのあんな感じです。ちょっとSF大賞がふさわしいとは思わない。

また、「海辺のカフカ」が村上春樹の作品の中でも異質でファンの評価も分かれるように、この作品も森見ファンの間で評価が分かれるんじゃないでしょうか。

しかし、私は割と好ましく読みました。小学生を主人公にしてもやっぱり森見さんは森見さんですしね。あと、こんなに「おっぱい」という言葉がたくさんでてくるお話も珍しいと思います(笑)

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February 06, 2011

Ceelo Greenの"F**k You"のビデオが格好いい

曲もすごくいいんですが、このビデオのセンスが、特に日本語のチョイスのセンスが素敵

タイトルがタイトルなので再生するのにyoutubeから認証を求められちゃったりしますが、曲の内容はナイーブでナンパなので微笑ましいです。


英語はこっち。ログインして18歳以上ボタンを押さないと見られませんが・・・

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February 02, 2011

古語の謎/白石 良夫

「古語の謎」というタイトルですが、テーマは国学です。昨年、松坂にすき焼きを食べに言ったとき、本居宣長が松坂の人だと初めて知りましたが、その本居宣長だけでなく、契沖、荷田春満、賀茂真淵といった人々の話がメインです。

私たちはついつい「古文」というと現代語との対比で考えてしまい、昔の人はみんな古文が読めたような錯覚を覚えてしまいますが、例えば、江戸時代の人はもちろん、平安時代の人からしても万葉集は古文書で普通に読めるものではないわけです。

万葉集はもちろん全部漢字(万葉仮名)で書いてあるわけで、しかも、万葉集以外に同時代の文献はほとんどありません。記紀はちょっと後ですしね。室町時代に万葉集の注釈本が出されて、それがどんどん伝わって何の改訂もされないままだったりします。

で、江戸時代の国学者は、このような後の文献に捕らわれることなく、現代に通じる文献主義と本文批評のやり方で古典解読をしていくのですが、それに関する様々な話題が詰まった本です。まとまりはないのですが、新書というのはそういうモノでいいと思うので、新書らしい新書を読んだなとそんな感じです。

例えば、冒頭の話題は万葉集の柿本人麻呂の

ひんがしの のにかぎろいの たつみえて かえりみすれば つきかたぶきぬ

という歌は本当にこう読まれた歌なのかという話です。なんと、この歌は江戸時代までは

あづまのの けぶりのたてる ところみて かへりみすれば つきかたぶきぬ

と読まれていたんだそうです。平安時代にこう読み仮名を打った本があって、みんなそれに習ったんですね。で、この読みに疑問を表明したのが契沖、「ひんがしの~」に読み替えたのが賀茂真淵だそうです。大胆ですな。

そもそも、柿本人麻呂(か、人麻呂の歌を書き留めた人)はこの歌を

東野炎立所見而反見為者月西渡

と書いただけなわけで、ホントのところはよーわからんわけです。現代にいたるもそうで、「イマイチ釈然とせんところもあるが、こっちの方が正しいとする根拠のある読み方もないので真淵に従うか」ということなんだそうです。

理系出身で古典になんの知識もない私としては「ひんがしの」と「あづまのの」より、「月西渡」を「つきかたぶきぬ」と読んでる方がびっくりなんですが。契沖は「ひんがしの」説を採るときに、句のなかで東と西を対比させてるんだから「ひむがしの」「つきにしわたる」がよいのではといっているそうですが、素人目にはそれが素直で良さそうに見えますよ?

と、そんな話題などいろいろ詰まった本。まあ、すごい面白いわけではないですが、興味深いですよ。

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February 01, 2011

きことわ/朝吹 真理子

芥川賞の発表前に「ゴールデンラジオ」の大森望さんが「今回はこれで決まりでしょ。いいとこのお嬢さんで美人で、かつ、出来もこれがピカイチ」と評されていた朝吹真理子さんの「きことわ」です。

大森さんの予想通りに受賞したわけですが、同時に西村賢太さんも取って、記者会見では西村さんのダメ人間っぷりの方がネットで大人気。「きことわ」を買ってきて、「芥川賞受賞」の帯を付けたまま読んでると、同僚に声をかけられるほどです。

「あー、それ、ニートの人の方?」

-いや、ニートじゃない方の人です

「サラブレッドの方かー」

話題になるのはいいことですね。「苦役列車」ともども売れているらしいですし。「苦役列車」は読みませんけどね。

お話は、縁あって休日を共に過ごした高校生と小学生の女の子二人が、大人になって再会し、思い出を語り合うという、ただそれだけで、ストーリーに面白味がある作品ではありません。

ではこの作品の魅力はどこにあるかというと、年の離れた姉妹のような二人の関係性であったり、幼き日のみずみずしい世界であったり、過ぎし夏の日へのノスタルジーであったり、そういうところ。

絢爛豪華なフルコースでも、極上の素材からなる一品でも無いですが、お上品な和菓子をいただく様な感じで召し上がってください。私はそれなりに好きです。

あとは、この位置からどこへ立脚するか。村上春樹でいうなら、これが「風の歌を聴け」であれば、「羊をめぐる冒険」や「ノルウェーの森」はどういう形になるのか、何を書くのかというところが問題になるのかなと思います。技と感性は十分だとして、ここから何をぶつけて書くのか、あるいはエンターテイメントへ行くならばどんな芸を見せるのかが作家として問われるのかと思います。長編も読んでみたいですね。

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