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October 06, 2010

勝手にふるえてろ/綿矢 りさ

綿矢りささんは「インストール」以来のファンです。ルックスも好みなんですが(笑)、独特の才走りまくった文体とそこに漂う砂漠のような荒廃した寂寥感が素晴らしい。

ただ、この人って若くして賞を取って注目された高校生の時からそうでしたが、まだ作家になってないか、なる気がないんじゃないかと思わされます。学生のうちは「学生が本分ってことなのかな?」と思ってましたが、職業作家になったらしい今でも印象が全然変わりません。今回も久しぶりの新作なんですが、実はデビュー以来、ずっと3年おきのペースなんですね。村上春樹じゃないんだから、その執筆ペースでは食べていけないでしょう。週刊ブックレビューのゲストに呼ばれた時に、この作品とは別に難産な作品があって、そっちが完成しないのでこれを半年ぐらいで書いたと応えてましたが、ファンとしては半年でこれが書けるんなら、もっとたくさん読みたいよというのが本音です。

さて、「勝手にふるえてろ」ですが、これまた自意識系の固まりみたいな主人公です。主人公が男性だと割にラノベとかで無くもない読む人を嫌な気持ちにさせるネタですが、女性主人公では難しい・・・というか、商業的に成立しませんな。この主人公は少女時代の美しい恋に閉じこもって・・・というと聞こえはいいですが、見事に単なる自意識過剰のダメな人(笑)。人によっては、もうこの主人公のことがイライラして読んでいられないと思います。間違いなく恋愛小説じゃないです。綿矢さん自身が「蹴りたい背中」を「黄ばんだ青春もの」と呼んでましたが、これは女性にとっての「青春の終わり」の話で、それもかなーりしょぼくれた青春です。

なんせずーっと子供の頃好きだったイチという冴えない男の子のことを引きずってるんですが、その彼との一番の思い出が、運動会で整列して座っているときに話しかけてくれた・・・なんて、悲しいほどになんでもない出来事なんです。でも、じゃあお前の輝かしい青春の思い出ってなんだよって言われたら、ここまで酷くないにしてもそんな少女マンガのネタになるような美しい思い出があるわけではないですし、「中高生時代に美しい恋の思い出なんてないぞー」なんて暗黒の学生時代を自慢げに話すような輩は実はこの程度の記憶を大事に持っていたりするものなんじゃないでしょうか。

通学電車の中で気になる女の子がいて乗る電車をあわせてたとか、ファストフードのバイトの女の子と何気ない会話で笑わせることに成功したとか、そんな思い出だってみんな心の片隅にひっしと隠し持っているものですよね。あまりの主人公のなんでもなさぶりにそんなことまで思い出してしまいます。

で、こんなしょぼくれた主人公が全然タイプじゃない男性から口説かれて、流されて、流されまいとして、青春を終わらせて、くっつくというのが全体のあらすじ。途中、何の事件も起きません。でも、気になる描写はどんどん出てきます。そもそも、初恋の子のあだながイチだからといって、口説いてくる男をニと呼ぶ主人公の嫌な奴っぷりが素敵すぎる(笑)。表題の「勝手にふるえてろ」と主人公が感じる感じ方もなんとも言えないし、ラストの持って生き方も本当になんでもない、ありきたりの場面なのにニを受け入れる瞬間に二と呼ぶのを止めて名前を呼ぶ(これが、本の中ではじめて二の本名が出てくる場面で、そしてその瞬間この話終わるんです。ヤナカンジ^^;)というのもセンスに溢れていて、やはり、綿矢りさはすごいです・・・が。

それにしても

あまりにも読者に対するサービス精神がなさ過ぎますよ!「インストール」の構成の巧みさからいって、この人は面白いストーリーを組み立てることができないわけではないと思います。もちろん、「インストール」は応募作だったので、「女子高生が小学生と組んでエロチャットのバイト」というセンセーショナルな状況を作る必要があり、否応なくそうしたんだと思いますが、その後、「蹴りたい背中」「夢をあたえる」とどんどんストーリーがしょーもなくなっていって、今回、これ以上は無理だろうというぐらいにつるつるてんになってます。綿矢りさの文体と描写力は十二分に楽しめますが、さすがにもうちょっとエンターテイメントでもバチは当たらないだろうと思いますよ?まるで、絵とコマ割りはピカイチだけどストーリーが作れないマンガ家さんみたいです。誰かが原作を担当してあげればいいのかなあ?

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