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クォンタム・ファミリーズ/東 浩紀

「キャラクターズ」は読むには読んだんですがちょっと把握しきれなかったので、感想は書きませんでした。「東浩紀」が実名で出てきて3つに分裂するとか、無理です(笑)。いや、面白かったんですけどね。さすがに思想家東浩紀が文芸の世界で表現するといった形式で、その形式すらメタに取り込んでエンターテイメントにする才能は素晴らしいと思ったんですが、まあ、これが小説かといわれれば、うにゅーんって感じ。

今作は、やはり主人公の大学教員で文芸家の主人公は東さん自身の東映だと思うんですが、遙かに普通の小説です。そして、量子コンピューターを元にした並行世界もので、かつ、タイムパラドクスをそこに含むというバリバリのSF。この設定はなんとなく、ソウヤーの「ホミニッド-原人」を含むネアンデルタール三部作を思い起こしました。ソウヤーの方も、量子コンピューターの実験で並行世界と繋がるという話で、繋がる先はクロマニョン人ではなくネアンデルタール人が反映した世界でした。ネアンデルタールが文明化した社会を創りそれを我々の世界と比較することで、我々の世界に対して懐疑を起こさせるのが物語の構造です。

この仕組み自体は「クォンタム・ファミリーズ」(QF)も同じだと思いますが、QFでの並行世界がこの世界とどう違うのか、また、その世界の異なり方と主人公の周囲の環境はまたねじれていて、そして最後にはこの世界までもが・・・と、構造自体も抜群に面白いです。そして、イデオロギーの問題も、父と娘の問題(父と娘がいっぱい出てくるんですよね)も、ゆがんだ性愛の問題も、ゲーム的リアリズムも、ネットワーク世界の行く末も、仮想人格の暗躍も、村上春樹も(笑)、まあ、ありったけ詰め込んであります。

まあ、東さんを新人作家と呼んでいいのかどうかは大いに疑問ですが、それでも形はこれだけばりばりのハードSFですから、作家なら誰でもかけるというものではないのも確か。この種類のこんな大仕掛けをぶんと振るえるのは、日本のSF界でもそうは居ないでしょう・・・というか、ほとんどいないかも知れません。宇宙モノはいますわね、タイムトラベルはみんな好きで得意ですわね、数式ぶんぶか振り回すのは円城さんがやりますわね。でも、ここまでのサイバーなものを設定に振り回されないで使い切る人はちょっと日本にはいなかった気がします。

いやー、これは面白かった。SF大賞でも全然不思議じゃないと思います。思想家・哲学家の東さんのファンよりは、こゆいSFが読みたい人にお勧めです。


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■しばらくエッセーを書いていないのは東浩紀氏の初の単行本『存在論的、郵便的〜ジャック・デリダについて〜』を読んでいるからなのです。しばらく京都経済新聞のコラムなど放電状態が続いたので、ここらで充電しとかなきゃと思って。それにしてもむっちゃ面白い!僕より一つ下で教養学科の「後輩」にあたるんですが、かなりキレますね。この年齢で新潮社からバリバリの論文集を出版するなんて大したもんだ。それにひきかえ毎日会...... [Read More]

Tracked on January 21, 2010 at 12:35 AM

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