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January 20, 2010

J U N K U 佐々木敦さん×小説家 連続トークセッション 佐々木敦×東浩紀 「文学、そして帰還」

ジュンク堂新宿店で行われた佐々木敦さんと東浩紀さんのトークセッションに参加してきました。内容は全編「クォンタム・ファミリーズ」(QF)についてです。「ニッポンの思想」の話はしません!と佐々木さんが宣言してました。後、楽屋では愛について語り合っていたそうです(笑)

ちなみに、客層がなーんか謎でした。結構みんなカジュアルなんですよね。背広の人少なかったー

さて、セッションのメモです。途中で東さんが「いや、こういうことを言ってそこだけだと誤解されるんだけど・・・」と何度も何度も言ってましたが、私みたいなのがネットにこういう事書くからイカンのでしょうなあ。でも行けなかったら見たかっただろうから書きます(笑)

嘘は書いてないけど、曖昧な記憶と貧弱な知識と陳腐な筆力で書いてますので、あしからず。

きっかけ

批評家 東浩紀が小説を書いた、そのそもそものきっかけは?という問いに

  • 直接にはギートステイトが頓挫したこと。「いいよ、なら俺が書くよ!」みたいな
  • クリエイターの人といろいろ付き合いが出来て、彼らに敬意は払いながらも、モノを作っているというだけで特別扱いな感じに「クリエイターってそんなにエライの?」みたいなのはあった
  • もっと遡れば小松左京が大好きで、SF作家になりたかった。けど、なれないだろうなーとか?
  • 後は、QFの内容にも現れてるけど、リセット感?

まあ、いろいろあるんですと。そこに佐々木さんが「いや、でもそういうモロモロでこれだけコストさいて書けないでしょう。パッションがないと」と。それに対しては、今の批評界を形作って盛り上げていく役割の東浩紀と、でもそこに自分が本当に書きたいものがのっからない(だから「思想地図」に東さんの原稿は載ってないのだと)というねじれのような複雑な思いがあって、「ま、サラリーマンが小説書きましたみたいなのが、近いかな」とか。

構成について

どのぐらい元々考えてた通りに書けたんですか?という問いに

  • 骨格は決まってた
  • 設定とか物凄く作ってた(テロのあたりとか、並行世界で世の中がどうなっているかとか)けど、全然入らなかった。評論でも書こうと思ってることがいつも全然枚数に入らないから・・・まあ、これが持ち味?(笑)
  • ただ、世界設定を書こうとしてもその世界を透明に描写できない。これは社会批評を書けないのと同じ理由なんだと思う。どうしてもセカイ系に・・・
  • 構造が複雑なのも、ノベルゲームなどの分岐していく立体的なストーリーをまた一本の筋へパタンと畳み込んだような形になっているからそう見えるんだけど、僕がそう物事・・・というか人生をそう捉えてるので必然
  • 単行本化の時に、文章の美しさを追及するという意味で修正すると共に、批評家としての僕が読みやすく手を入れた。こうすれば「セカイ系VSバトルロワイヤル」に読めるとか、抜き出しやすいキーワードを仕込むとか。そういうのは、染みついているから10秒で出来た

プロットと共に並行世界の図とか書いたんですか?という問いには

  • 封筒の裏とかに。あまりにちゃんとしたモノを書いてないから、みんな驚くだろうなというほどのもの。構造自体は基本、頭の中にある
  • ただ、日付とか、アリゾナとの時差とか、誕生日とか・・・そういうのはヤバい。ギリギリまで間違ってたのがあって・・・このシーンで見える月の月齢がとか、一応計算してるんだよ?ネットに転がってるソフトとかで。

じゃあ、結構ちゃんとしてるんですね・・・と思ったら

  • 思い出してきた。最初の段階で渚いなかったわ(笑)。でも、風子と汐子って名前を出した時にCLANNAD的には渚の登場は必然だったんですよ。自分が気がつかなかっただけで(笑)
  • 35歳問題とか村上春樹とか、モチーフとなるようなことをつっこんでおくと未来の自分がどうにかしてくれるというか・・・「お前なら出来るハズ!」「マヂで?」みたいな?
  • モチーフを結んでいくためにキャラクターが要請されるというような、ちょっと変な作り方なんですよ。というか、ちょっと変なんですよ、僕。次回はちゃんとします(笑)

文体について

佐々木さんが文体について質問。透明な文体(あまり情緒に溢れまくってたりしないという意味?)ですよねーという問いかけに

  • それについては単行本にするときに頑張った。
  • ハッタリのない文章を書きたい

佐々木さんが「連載の第1回で、アリゾナの辺りで文学的にぐっと来た表現があったんだけど、単行本でなくなってたんですよね」というと東さんが「それはいい話だなー(笑)」と受けて、

  • ただ、独自の文体を作り出すことにはそれほど興味はない
  • 「小説家にとって文体が命」なんてのは怠惰だと思う。それは、著者にも、批評家にも、読者にも。だって「内容はよくわからないけど、この文章はぐっとくる」とか言ってればいいんでしょう?
  • やっぱり僕は構造が見える人間だし、構造にしか興味がないのかも。

この後、ゼロ年代の批評に社会論ばかりしかなく、テキストが薄いことは自覚しているし、それに対して、デリダを自分のキャリアの出発点にしてきた自分が、こういう流れになっていくのは自然だとか、そういう「いい話」になった・・・らしいんですが、正直自分はニュアンスを掴みきれませんでした。

というところでおよそ1時間。休憩が入りました

SF読書体験について

後半は東さんの読書歴や、QFで扱われる作家などについて。まずは小松左京について。

  • 小学3年生ぐらいから読んでいるとのこと。家にあるものは大抵なんでも読んでいたので、西村京太郎とかも読んではいた。ただ、なにせ小3なのでセックスに関わる描写が意味不明。そういう意味で西村京太郎はよくわからないなーと思っていた。
  • 「復活の日」の映画のポスターを見て興味を持ったのが最初。

その他、作品名がいろいろと出たんですが、私は全然小松左京を読んでいないので判らないのでした。いや、星新一も筒井康隆も読んでませんが・・・同時代をフォローするので精一杯です。私も子供の頃はミステリーをよく読んでましたね。内田康夫とか、海外モノではクリスティーとか。新本格がくる前の頃・・・て私の話はどうでもいいです。

  • 小松左京を読み尽くして、新井素子に出会った。
  • 人は第二次性徴を迎えるとバカになるよね。それまでバリバリのSFでシュバルツシルト半径が・・・とか行ってたのが、「このキャラかわええ」とかになっちゃったんだから。
  • 小松左京の後に新井素子が並んでる本棚を見直して、「俺、このままじゃバカになるやばい」と思って新潮の世界文学全集を片っ端から読むことを高校生の時に企画した。読書記録もつけた。

ちなみに、「シュバルツバルト半径」と言ってましたがシュバルツバルトは黒い森で、正しくは「シュバルツシルト半径」です

海外のSFは?という問いかけに、

  • クラークは全部読んだよ。「2001年」の映画がすごい好きだから。アレは神
  • もちろんディックは重要な作家だけど、でも出会ったのは大学生ぐらい。

自著への影響について

そのような読書体験はどの程度QFへ影響しているのでしょう?QFは一種の時間SFですが・・・

  • いや、むしろノベルゲームで時間ものに慣れちゃってるから、そちらの影響が。僕が書くならループとかしないとどーすんのと思ってた。
  • ループものとかも、源流はそのあたりのSFになるんだろうけど、直接の影響は押井さんの「ビューティフル・ドリーマー」だから

ループとそれを止めるもの

ディック話からちょっと難しい話へ・・・

  • 自分の中に、「可愛い不気味なモノ」がループを止めるという理解がある。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」にあって、「ブレードランナー」から抜け落ちてるのがそれだと思う。砂漠的な何か。物語外2に繋がる話ね
  • 最後の小さい風子はストーリー的には要らないんだけど、たぶん、あれは生け贄になりループを止める存在として必要なんだろう。でも、それは今の自分では書けなかった。
  • 理樹ももう少しできるはず。理樹は実は存在しなかった・・・とか。彼は必ず乗り移った姿でしか登場していないから。「わかっているんなら書けば」って?でも、批評家としてそれがわかるというのと、小説としてそれが表現できるかってのは別なんだって。

村上春樹について

ディックと並んで、作中で取り上げられている作家が村上春樹。

  • 重要性は疑いないよね。好きか嫌いか?「ノルウェーの森」は普通に読んで泣きましたよ(笑)

佐々木さんが(「聞きたいのはそれじゃない(笑)」と。初期三部作とかはどうなの?という問いかけに

  • 重要性で言えば「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」でしょう。
  • 村上春樹は日本人的な引きこもり、それもあの人は学生運動の挫折からだから日本の精神構造みたいなものを代表していて、かつ「世界の終わり」でどう相対するかというのを提示したわけで、85年の段階でそれをやっているというのはすごい。
  • そして、日本人的な精神というようなものを表現し続けていて、ちょっとそこに中二的なものが入っちゃうけど、そのテーマで世界で今、唯一評価を受けている作家・・・となれば、そりゃ評価に疑いはないよね。

35歳問題について

村上春樹の話は、35歳問題と絡んで出てきます

  • 夏目漱石が「文学論」を書いたのは35歳の時。で、柄谷行人が自らが35歳の時に「日本近代文学の起源」のあとがきでそれに触れている。じゃあ、東浩紀は35歳で何を書くのか。
  • 「ゲーム的リアリズムの誕生」はそれを意識して書いた。あれは僕の「文学論」。
  • しかし、純文学の人にはまったく無視された。それには大変に失望した。

文学、そして帰還

でも、文芸誌にこうやって小説書いたのは、文学への戻って来たってことなのか

  • いや、なんで「新潮」に書いたのかといえば、載せてくれたからだけど(笑)
  • もちろん、「存在論的、郵便的」の続編であるという認識もあるし、「キャラクターズ」の続編っぽく見えるようにもしようと。主人公が東浩紀を反映にしたキャラクターになっているのは、これが私小説だからというよりはそういう意味で必然だと。
  • だから1回目とかにはちょっと「キャラクターズ」っぽい雰囲気が入ってる。芥川賞の話とか。でも、途中で「俺、そんなことしてる場合か?」と思ってやめた
  • 今の文学の光景に小説家としての東浩紀のポジションはないよね。批評家としてないのと同じく。だから、「思想地図」を作ったように、小説でも読者を作っていくしかない。
  • 文芸誌読む人が読者だとは思えないでしょう。半分ぐらいは理工系の人で、ミステリーのような少しパズル的なものを楽しんで読むような人が読者になるんじゃないか
  • ミステリーは書くか?いやー、プロットを作らないで無意識に期待って作り方だから、最初に密室を用意してどういうトリックになるのかと思ったら「やっぱ無理でした!」とかになって、そのままSFに雪崩れ込んじゃうような・・・。それか、メタ・ミステリーになっちゃっうか。
  • 同時代で近いことをやっていると思う人?舞城王太郎がそうかも?
  • 「帰還」ってトークセッションのタイトルになってるけど、帰ってきたわけじゃない。「僕は勝手に文学をやることにした」ということです

最後に、小説家 東浩紀の今後は?という問いに

  • とりあえず、大森望さんの「NOVA2」に書きます。7月ぐらいには出るはず?
  • 火星モノ。火星の砂漠に萌えキャラが立ちます(笑)。連作短編になる・・・といいなあ。

というところでお時間でした。その後はサイン会。「存在論的、郵便的」にサインをもらって帰ってきました。ありがとうございました!


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